[01] 孤独と光 あたしの記憶は、光の世界から始まる。 だったような気がする…。 絵本に描いてあるような、素敵な家庭だったような…そんな気がするの…。 ただ言えるのは、今の孤独で、真っ暗闇のような世界よりは、少なからず、ずっとずっと、まぶしいくらいの世界だった。 だって、ここはあまりにも冷たすぎるから…。 なんとなく、頭で座り込むイメージだけを考えるけど、やっぱり、何にも感じなかった…。 何にも聞こえない。 パパやママといた、あの光の世界は、本当はどんな世界だったんだろう…。 もう、どんな世界だったか、あんまり覚えていない…。 こんな…風に………… 「ブルー!!!ブルー!!」 誰かが…呼ぶ声が聞こえる…。 「ブルー!!しっかりしろ!!ブルー!!」 聞き覚えの…ある声…。 さっきまで何も聞こえない…何も考えられないくらい…闇に…孤独に…支配されていたはずなのに…。 誰かが呼ぶ声が、あたしの闇に、光を照らす…。 この声は… 「…グ…リーン……?」 ここは… 「…ブルー!!…っ…大丈夫か?」 「…あたし…」 どうしていたのだろう…。 いまだ支配されていた思考が、ぼんやりとしか状況を把握できない。 「…おまえ、いきなり倒れるからびっくりしたぞ。…それに、すごくうなされていた…」 「…大丈夫か?」 そうか、体が動かなくなったのも、体が冷たくなったのも、思考が薄れて感覚がなくなっていったのも、その性だったのかな…。 そういえばここに来る前に、昔見ていた絵本を見つけたんだっけ。 それでかな…。 「…ブルー?」 あなたの存在が、あたしの全てになる…。 「…俺は、何もしてないぞ?」 目をつむっても、そこにあるのは闇ではない…。 温かいあの人の声に導かれて、あたしは今、光の世界へと、歩んでいく。 2006年10月25日 Fin
姉さん視点。ある意味孤独を一番悪いものとして考えてるのは彼女で、自分はほんとに孤独だったと思いこんでるのも彼女だと思ったので。そして何より、光を求めていたのも彼女だったんじゃないかなぁーって。まぁそこから孤独と光っていうお題になったわけですが、そんな意味を込めて書いたつもりです。孤独を経験してるから光を求め、光を知ってるからこそなくなったことにおびえている。
絵本の中のような、幸せな家庭。
料理が上手で、優しくて、温かいママ。
お休みには、必ず遊んでくれた、優しくて、温かいパパ。
きっと…
たぶん……。
そんな…気がするの…。
それだけは言える…。
と、思う……。
真っ暗で、すぐ先の何かまでも見えはしない。
行けども行けども、そこに広がるのは闇ばかりで…。
いや、進んでるのかさえも、分からない。
あまりの冷たさに、体中の感覚がなくなったみたいで…。
声を出したくても、体にすらその声は響かない。
感覚全てが、闇に支配されていくようで、恐怖を感じるはずなのに、その感覚すら飲み込まれて行くようで…。
あたしのうっすらと残る思考が、そう思い浮かべてみようとする。
たしかこんな風に、すごく温かくて、優しい感じがして………
聞き覚えのある声が、あたしの孤独を、消していく…。
自分の声が、骨を伝わって感じていく…。
視界に、光を感じ取れる…。
肌に、ぬくもりを感じられる…。
あたしがグリーンと呼んだ彼は、心底心配したようにあたしを見つめた。
彼は安心したように息を吐く。
「…倒れた…?」
そう言えば、体がなんだかすごく冷たくてだるい…。
支えてくれている彼の手が、異様に温かく、いや熱く感じるのはその性なのだろうか…。
あんな夢が重なったのは…。
彼は再度心配そうに声をかけてくる。
「…ありがとう…」
力の入らない手で、彼の首に腕を回す。
「っ!?…な…え?」
彼は訳が分からないというように慌ててる。
「…あなたの声が、あたしを救ってくれた……。あなたの存在が、あたしをここに、留まらせてくれているの…」
彼は、苦笑してあたしを見る。
「…ううん、たくさんのものを、ありがとう…。大好きよ…。ずっと、ずっと…大好きよ…」
安心したように再度目を閉じた。
見えるのは、一筋の…淡い…光…。
あとがき
姉さんが兄さんを愛せたことが、兄さんが姉さんを愛してくれたことが、姉さんを救うきっかけになればいいと思う…。
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