[02] 強さと弱さ 「…グリーン?」 冷たい、感触。 「…グリーン…」 聞き覚えのある、甲高い声…。 「…平気?」 額に感じるぬくもり…。 「…っ!?」 寝ていた? 「…っ」 そうか、この体のだるさは血の流しすぎか…。 なんだかもう、記憶が曖昧だ…。 「…ジム戦、やりすぎじゃない?そんなバトルばっかりして…。倒れるまでやらなくたっていいじゃない…」 強くならなきゃ… 「グリーンは、どうして強くなりたいの?なんで強くなりたいの?」 どうして? なんで? そんなの… そのためだけ… 「…その“あいつ”に勝てたら、その強さはどうするの?」 あいつに勝った、その後…? 「…強くなるのは、それだけ弱いから強くなろうとするの…。あなたはそんな、がむしゃらに強さを求めるほど、弱くはないはずよ?」 俺は弱くなんかないっ…。 なら、なんで強くなろうとするんだ…。 「…あなたが強くなりたいのは、バトルじゃないのでしょう?」 俺が、強く…なりたいのは……… 「…っ」 不本意だ…。 「もっと…もっと…強く…」 俺の求める強さはなんなのか…。 でもそれを素直に認めるのが、すごく悔しくて、もっと、もっと強くなろうと、心に誓った。 2006年10月27日 Fin
今度は兄さん視点。お題はでも、姉さんのイメージで考えてました。でも姉さんの強さや弱さの話は、緑青部屋での小説で書いていたので、同じような内容になりそうでやめました。でもなんか1のお題と内容がかぶってる感が否めないですが、そこはスルーで(死)
「あ、よかった。起きた」
彼女はくすくすと笑う。
「おまっ!?…今っ」
俺は慌てて彼女から離れた。
「…うふふ、王子は素敵な王女様のキスで目を覚ましましたとさ。めでたしめでたし」
「めでたくない!!!」
俺は恥ずかしさを隠すように怒鳴る。
「うふふ。グリーン顔真っ赤よ?」
「…うるさいっ」
俺は彼女から視線を反らした。
「でもよかった」
「何がだ!!」
俺はいらついているのか、言葉一つ一つに乱暴に返していく。
「顔色…真っ青だったから。びっくりしたよ?邪魔しにきたら、珍しく寝てるし。顔色見たら真っ青だったんだもん。あげく怪我して血が出てるのに放置してあるし。どうしたの?…何かあった?」
彼女は心配するように俺を見て、そっと頬に触れた。
少し視界がゆがむ。
吐き気が襲う。
そういや、そこら中包帯だらけだ。
こいつが手当をしてくれたのか?
さっきの冷たい感触は、こいつの手だったのか。
頬に触れられた手が、すごく冷たい。
「…これでも足りないくらいだ。もっと、もっとバトルをして、強く…強く…」
「…あいつに…勝つためだっ」
「…それだけ?」
「…それだけって…」
「そのためだけに、あなたは強さを求めるの?」
「…」
「っ」
弱くない…。
弱いから、強くなろうとする。
そう、思いたい。
俺は、何が強くなりたかったんだ…。
俺は…。
そっと抱きしめられる。
「…っ!?…ぐ、グリーン?」
俺は力強く、彼女を抱きしめる。
「…ごめん…」
「え?」
「……」
こいつに気づかされるなんて…。
「…無理はしちゃだめ」
「わかってるよ…」
彼女のぬくもりに、答えを見つけられた気がした。
俺の弱さがなんなのか…。
あとがき
この話で言いたいのは、強さと弱さは表裏一体であるということ。強さは弱さがあってこそあって、弱さがあるから強さができる。だから意味のない強さは形を失い、自分の身を滅ぼしかねなくなるのだと。兄さんにとって必要なのは、バトルの強さではなく、心の強さなんじゃないかなって思います。絶対に負けないという芯の(心の)強さが、勝敗を分けるんじゃないかなって。強さに意味を持って、極めて行ってほしいなぁと思います。ファイオー兄さん!!!
ブラウザのバックでお戻りください。