1 甘えるのが怖いのは 「グリーン!!!」 抱きついてくる彼女は、まるで猫のようだと思った。 「どうしてそう、素直に甘えられるもんかねぇ」 甘えを許されない環境。 それら全てが、今の俺を創り出した。 「何それ。グリーンだって甘えてるでしょ?」 俺のどこが甘えてるんだ。 だいたいにして、今さら甘えたいなんて思ったことはない。 「馬鹿じゃないよぉ、グリーンだって、甘えてるから…」 「なにをそんなに、怖がってるの?甘えたって、誰も何も言わないよ?」 怖がる? 甘えるのが…怖い? 「馬鹿言うなって言ってるだろ!俺は甘えてもいないし、甘えたいとも思ってない!!」 甘えてなんかいない。 「…っ」 自分がしたいことを、人にすること? 「…グリーンは、あたしにしたくもないことを、してるの?」 好きだから好きだと伝えるし、抱きつきたいから抱きつく。キスをしたいからキスをして、会いたいから会いに行って。名前を呼びたいから呼び、ぬくもりが欲しいから手をつなぐ。愛したいから、愛す。 「あぁ…俺…」 好きだから好きだって言ってきた。 愛したいから…俺は… 「めちゃくそおまえに甘えてんじゃねーか」 甘えを許されない環境。 それら全てが、今までの俺を創り出してきた。 そりゃ、怖いはずだよ。 俺は今…甘えてもいいんだと、ブルーに教えられた気がした…。 「好きだ…」 2005年10月6日 Fin
こっちが3作目。なんのネタもなしにどれもこれも書いているので、即興で、その場で思いついたテーマから派出して話しを書いています。なので、最初のイメージと最後の出来が違ったりするのは今回かなりありました。これもそのひとつです。
今日も今日とて、変わらぬ一日だったんだ。
ジムの仕事中だというのに、こうしてこいつは、俺に平気で抱きついてくる。
俺の名を呼び、嬉しそうに微笑んで、俺の体温に自分のぬくもりを混ぜていく。
「…はぁ」
毎日の出来事に、慣れという言葉を学んだ。
「あ、グリーンってば、そんなあきれたような顔しないでよ!いつもみたいに真っ赤な顔して『離れろ!』とか言ってよぉ」
つまんなーいと、頬を膨らませる彼女も、此処最近じゃいつもどおりだ。
「うるさい女」
俺は頬杖をついて、視線をそらす。
「ひっどーい!あたしはグリーンが好きなだけよ!」
「…なんだそれは」
理由にも反論にもなってないあげくに、どうしてそういう言葉を平気で言えるかね、おまえって奴は。
「あ、グリーン顔赤いよ?」
彼女が嬉しそうに、再度抱きついてくる。
「…うるさい」
ごろごろと鳴きながら、へばりつく猫のようで…。
これを、甘えていると表現せずにどう表現すればいいだろう…。
思わず、自嘲的な笑みを浮かべた。
周りからの多大なる期待。
彼女がきょとんとした顔で、俺を見上げてくる。
「馬鹿言うな」
むしろ、甘える自分なんて反吐が出る。
「甘えてない!!なんで俺が甘えるんだ!!!」
俺のどこが甘えてる?
甘える自分なんて…
俺の頭を撫でながら、彼女は優しく微笑んだ。
俺が?
このいらつく感情が、怖いからだなんて名前をつけるな。
分からない気持ちに、我を見失いそうだ…。
俺が甘えてるだなんて、嘘でもそんなこと、言わないでくれ。
甘えていいものか。
甘えたりなんか…
「…っ!?な、なっ!?おまえっおまえなぁ!!!」
人が考え事をしてるときにどうしてそう平気で
「キスがしたかったからしただけ」
「っ!?」
顔がさっきよりも、真っ赤になる気がした。
「好きだから好きだって伝えるし、抱きつきたいから抱きつくの。キスをしたいからキスをして、会いたいから会いに行って。名前を呼びたいからグリーンって呼ぶし、ぬくもりが欲しいから手をつなぐ。愛したいから、あたしはあなたを愛してるの…」
ぎゅっと、俺よりも暖かい手が、俺の手を握る。
「…甘えるって、自分がしたいことを、人にすることなんじゃないかなぁって、あたしは思ってるよ?グリーンは、甘えたことって、ほんとにないって言い切れる?」
彼女の声が、泣きそうな気がした。
馬鹿らしくて、思わず笑えた。
抱きしめたいから抱きしめてきたし、キスをしたいからキスをした。
会いたいから会いに行って、名前を呼びたいからブルーと呼ぶ。
ぬくもりが欲しいから、彼女に触れる。
周りからの多大なる期待。
甘えるってことが、どんなことかも、わからなかったんだから…。
その日は、素直に言えた気がした。
あとがき
兄さんが甘えるなんて考えられなくて、でもきっと兄さんが甘えられないのは、甘えるってことを知らないからだと思ったので。まぁ私も甘える概念っていうのが間違ってたってのもありますけど。沙耶ちゃんに後から言ったら「違うだろそれ」って言われました。やっぱ違ったか。まぁなので、甘えるというのは、自分がしたいことを人にすることだと定義しました。自分でしたいことを自分でするのは自己満足。人にするのはわがまま。でもわがままは受け入れられれば甘えになるのではないかなぁってことで。受け入れられて、幸せを感じて。そういうのが、お互いがお互いに甘えられるって感じなんじゃないかなって思います。それを知れた兄さんのお話。
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