4 護り、護られるべき人
 

 

4 護り、護られるべき人

 

「…ねぇねぇ、ここのお店がさ、すっごく安いんだけど」
「ほんとですか?」
「可愛いですね」

嬉しそうに話す姉さんを、よく見るようになった…。

「えぇ、それまじで?」
「まじですまじです!これってすっごいおもしろいんですよ?」

楽しそうに笑う姉さんを、よく見るようになった…。

「…ねぇグリーン、明日これ買いたいなんだけど、一緒に行かない?」
「…」
「あ、そんな露骨にいやな顔しないでよぉ」
「…べつに」
「じゃあいい?」
「……はぁ」
「やった!」

 

 

 

 

幸せそうな表情をする姉さんを、よく見るようになった…。

 

 

『大丈夫よ、シルバー。あなたはあたしが、守ってあげるからね…』

夢うつつに、よく聞いた言葉だ。
今になって、それは優しくて、それでいて、自分を奮い立たせるような、そんな…言葉に聞こえたような気がした…。

あのころは幼くて、何も分からないままだった…。
そばにいる、姉さんだけが頼りで…。
ずっと、ずっと、護られてるだけだった…。

でも…

「…姉さん」
「…なぁに?シルバー」

昔とはまた違う、優しい表情で振り向いてくれる。
そんな表情を、想いを、声を、すべてを…俺が…護っていきたいんだ…。

「…俺…頑張るから…」

あのころよりも、体も、心も成長したつもりだ。
何も分からない子供じゃない。
一人で生きていけないほど子供じゃない。
護られるだけの、男の子じゃない。

「え?」
「もっと、もっと姉さんは護られていいんだ!大事にされてもいいんだよっ…」
俺が…俺が護るから…。
ずっと…ずっと護るから…。
「…どうしたのよシルバー…」
姉さんが、困った表情を浮かべていた。
「…だから…だから俺、俺もっと、頑張るからっ」
姉さんには、まだまだ頼りない弟でしかないけれど、でも護れるくらい、頑張るから。

俺が、幸せにできなくても、俺が、姉さんが幸せだと感じれる環境を…護っていけるように、頑張るから…。

「守られるのって、性に合わないけれど、でも、あたし、すごくシルバーに、大事にされてるって、そう感じてるよ…。本当に…ありがとね…」
「…っ」
昔とは違う、心から笑ってる、心から幸せだと感じている、姉さんの笑顔。

ずるいや…。
俺はいつでも、その笑顔にたくさんの幸せをもらってしまう。
また、返し損ねてしまった気分だ…。

本当に護られるべき人は、大事にされるべき人は、姉さんなのに…。

 

 

 

ごめん…でも…ありがとう…。

 

「おーいシルバー!行くぞ!」
「ブルー置いてくぞ」
「あぁ待ってよ!」
姉さんが後を追おうと、彼らに答える。
「…シルバー…行こう?」
振り返り、俺に手を差し伸べてくれる。

必ず、護りとおしてみせるから…。

差し伸べてくれた手を握り返した力が、ほんの少しだけ強かった気がした…。

 

2005年10月8日 Fin


あとがき

唯一のシルブル話です。唯一になるんじゃないかなぁ。あえて書こうとは思いません。でも書くことに抵抗はありません。イラストも。自分はグリブル前提だ!ってわかりきって書いてるので抵抗ないんですよね。でも人様のはシルブル!って思いっきり前面に出てしまうので、見るのは駄目です。
まぁ護るってどうしてもシルブル以外考えられなくて。姉さんが兄さんを護るのもぴんとこないし、兄さんに護られる姉さんなんて姉さんじゃないし。わけで、護る=大切として、シルバーを出しました。もっともっとたくさんの人に大切にされていいくらい、じつは優しい人なんだよって精一杯姉さんのいいところをかげながら護っていこうとするシルバーのけなげさにきゅんきゅんしてください。自分じゃ幸せにできないけど、幸せだと思う場所を護れるだけの強さを手に入れて。
今までのお礼をしたいのに、気づけば自分が幸せに感じちゃったりとかして。から回ってるような気がして。でもちゃんと、「ありがとう」って帰ってくるくらい伝わっていて。そんな些細なことに自分は幸せにされてしまって。「あ?!」みたいな。俺じゃなくて姉さんを幸せにしたいんだい!!って頑張って悪戦苦闘してるシルバーを見て「かわいいぃ(悦)」みたいに思ってくれると、私の思いは伝わったって感じします。

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