6 過去に犯した過ち 過去は決して、消えることはない…。 「ブルー?どうした?」 あたしは一人、オーキド博士の研究所の広場に座り込んでいた。 彼のおじいちゃんの庭だ。 「どうした?こんなところで」 「…広いよね…ここ」 右も左も上も、すべてが広くて、あたしなんて、なんてちっぽけなんだろうって、思った。 「自分の過去なんて、消えてしまえばいいのに」 「消してどうするんだ?」 過去が消えるってことは、今も消えるってこと。 「…」 「…よかったな…。おまえは気づけて……」 「…うん」 過去は、変えられはしない。 だからこそ、今がある…。 ともに生きているから、同じ過ちを繰り返さないように、今を変えることができる…。 「……大好き…」 今を変える勇気を、与えてくれる人がいる…。 過去の犯した過ちは、今を変える、力になる…。 2005年10月8日 Fin
姉さんが一度はぶつかる壁なんじゃないかなぁって思います。絶対。絶対過去を振り返って、こんなことしてこなきゃよかったとか、こんなことなければこうはならなかったとか、とにかく後悔したら数え切れないくらいの過ちを繰り返してきたなぁって嫌になると思う日が必ず来るんだと思います。安心して、今という安心できる空間を手にすることができたから。自分を振り返れる日が、姉さんにはやってきたわけで。そうなったら、絶対過去を悔やむだろうなって。で、まぁ兄さんってそういう細かいことはあほらしいとか思う人だから、あまり気にしないように諭すわけで。まぁでもそんな中で、どうあがいたって過去は変えられないし、してきたことは消えないわけで。そんなのは私たちだって分かってるわけですよ。だから後悔って言葉があるわけですし。最初に悔やむことはできません。やってしまって初めて悔やむことができるんです。だから後悔なんです。でも後悔して、それで前に進めればいいんだと思います。同じ後悔をしないように、私たちは一歩、後悔と共に大きく大人になっていくんです。過去だって自分の一部です。その過去があるから今の自分があるんです。過去を否定したり、なくしてしまったら、今までの自分を否定することになります。今までの自分がなかったことになります。今の自分が、存在しなくなってしまいます。どんなに悔やんでも、今を生きてるってことは、好きなからずその過去を背負って一緒に生きてきた証なんです。忌み嫌い、心の奥底に隠すくらいなら、それをうまく活用して、明日に生かしていくこと考えた方が、絶対心のスペース無駄にならなくてすむと思いませんか?約100年しかない心のスペース、有効利用いたしましょう!みたいな希望の話だったわけではなくて、ただ、過去は今の自分を作る過程であり、過ちは、これからその過ちを繰り返さないために、今を変えていける力になる。そういう姉さんの強さを出したかった話なのでした。最後の言葉は結構好きです。
過去に犯した過ちは、決して、正せるものでも、なかったことにも、できるものじゃない…。
一生、その過去を背負って、生きていかなきゃ、いけないんだ…。
「…グリーン?」
あたしは、驚いたように顔を上げた。
月が照らす、広い草原の上に…ただ一人で…。
孫である彼がここにいたって、なんらおかしくはないはずなのに、このときのあたしは、誰かがあたしなんかに関わろうとするはずがないと、思い込んでいたんだ。
こんな、何もない草原で、一人ひざを抱えて座り込んでいれば、誰でも気になるか…。
なんら脈略のない言葉が、口から飛び出る。
「…まぁ、いちおポケモンを放し飼いにするための場所だからな」
その脈略のない言葉に、返事が返ってきた。
「こんなに広い中に自分ひとりだとさ、なんか自分って、すっごいちっぽけだなぁって思って…」
立ち上がって、空に大きく手を伸ばす。
このまま…
広い世界にまじって、なかったことになればいいのに。
小さすぎて、わからなくなってしまえばいいのに…。
「え?」
声は、風に乗って消えていく。
「消して、それでどうするんだ?」
「……」
消して、そしたら…どうなるの?
「過去は自分を創ってきた過程だ。それがなくなったら、今のお前もなくなるんだぞ?」
過去があるから、今がある。
過去の自分がいるから、今の自分がいる。
今の自分も…消えてしまう?
「…過去は消えない。過去は変えられない。でも、今を変えることはできる」
まっすぐ、彼の緑の目が、あたしを捕らえる。
「…今を…変える?」
「過去を忘れずに、それを踏まえて、同じ間違いを繰り返さないように…」
「…」
同じ過ちを…繰り返さないために…。
「…人って、馬鹿なんだよ…。間違わなきゃ、その間違いに気づけないんだ…」
「…」
間違わなきゃ…間違いに…気づけない…
「…それが、間違いだって分からないやつもいる…」
ざぁっと、風が草原を揺らしていく。
風が…声を伝えていく…。
あたしはぎゅっと、背中に抱きついた…。
「それと…」
「え?」
「俺は、今のおまえがここにいてくれて、よかったって思ってるよ…」
過去は、消えたりはしない。
だからこそ、今のあたしがいる…。
あとがき
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