9 過去に失ったもの、今此処に在るもの 「お母さん!!あれ買ってぇ!」 「グリーン?どうしたの?」 「おーいそっち行ったぞ!」 「…グリーン?」 「…今日のグリーン、なんか変よ?」 「…よく見てるな」 「まぁさておき、で、どうしたのよ」 話すまで引く気はなし…か…。 「はぁ」 「子供を見て、思ったんだ」 子供時代は、ずっと道場に引きこもっていた気がする。 「どうして修行に行ったの?」 「後悔してるの?」 子供らしいことは何一つしてこなかったし、子供だからできたことも、何もしてこなかった。 「いや…全然」 2005年10月9日 Fin
10にもつながるような話だったりはしますけどね。きっとこれをきっかっけに、その悩みに転進したのではないかと思わなかったり思ったり(どっち)
「だーめ。また今度ね」
子供が、親におかしをねだっていた。
こいつの買い物に付き合った帰りに見た、光景だった…。
「いや」
「パスパスよこせ!」
「いっけーそのままゴールだ!!」
子供たちが、広場でサッカーをしていた。
帰り道に見た、光景だった…。
「…なんでもない」
コーヒーを渡されながら、そんなことを言われる。
「…そうか?」
普通に受け取り、一口口に運んだ。
「なんか、ずっと子供たちを目線で追ってる。グリーンって実は、ロリータ趣味?」
「怒るぞ?」
そこはさすがに睨みつける。
「冗談よぉ」
おまえが言うと冗談に聞こえないんだ。
「で、どうしたの?」
じっと、俺を見つめてくる。
俺が何を見てるかなんて。
「そりゃあ、好きな人のことですから?」
「っ!?」
笑顔でそんなことを言わないでくれ。コーヒーを吹き出すところだったじゃないか…。
「わーい、素敵な反応ありがと」
「おまえなぁ」
ほんとに怒るぞ。
真剣な表情にぱっと戻す。
「…」
どうしておまえはそう、百面相なんだろうか…。
どっと疲れた気がした。
「グリーン?」
じっと見つめてくる。
仕方ない…。
「何を?」
優しい口調を、返される。
「…俺は、あーいう、子供らしいことなんか、なんもしなかったなぁって」
コーヒーカップを置き、目を瞑る。
「あぁ、グリーンってすぐ修行に、行ってたんだっけ?」
「あぁ」
ただひたすらに、修行を続けていた。
「…おじいちゃんの孫だからとか、俺自身じゃなくて、おじいちゃんというフィルターを通して見られるのが嫌だったからな…」
だから、俺自身が強くなれば、俺として見てもらえると思ったんだ…。
「へぇ、今じゃ超おじいちゃん子なのにね」
意外、という顔をされた。
「うるさい」
「まぁで、それで貴重な子供時代を、ただひたすらに修行に明け暮れたわけだ」
「あぁ」
まぁ、そういうことになる。
「実際、修行に行く前も、友達なんていなかったでしょ」
「…なんで分かる」
なんでそう、おまえはなんでも分かるんだ。
「だってグリーンだしね」
「どういう意味だ…」
くすくす笑う彼女に、顔をしかめた。
「うふふ。で、今日子供見て羨ましいとでも思ったわけ?」
首をかしげて、俺を見てくる。
「…別に、羨ましいなんて思ったことはない。ただ、自分はあーいうことはしてこなかったなぁと思っただけさ」
コーヒーを再度、口に運んだ。
そっと、頬に触れられる。
でも、だからこそ得たものもある。
見つけられたこともある。
もし、違った人生を歩んでいたならば、今もなかったわけだから。
「…?」
じっと彼女を見つめると、彼女は不思議そうに、首をかしげた。
あとがき
まぁ兄さんはあまりそれが悪かったとかよかったとかいう判断で物を見てるわけじゃありません。ただ、自分にはそういうことがなかったけどなぁみたいな過去の思い出話になってる感じです。そういう生活を送ってみるのもおもしろかったかもな、程度。まぁそれだけ過去に満足してるんだと思います。オーキド博士の孫っていう肩書きに負けないくらいの自分を作り出していくっていう作業は途方もないけど、でもきっと、兄さんにとってかけがえのない時間で、とても楽しかった時間だったんだと思います。いろんなことはあったけど、きっと後悔って言葉なんかあったとしてもないくらいすばらしい時間をすごせていたんじゃないかと思います。何より、そんな過去があったから、今もあるわけだし。過去を悔やんじゃったら、姉さんといれる今も悔やんでることになっちゃうから。今も幸せだから、過去は決して悪かったものじゃない、と思うわけなのでした。結局兄さん姉さんが大好きなんじゃないかぁああああ(笑)
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