答え
 

 

答え

 

「…ねぇ…グリーンはさ、あたしが嫌いだって言ったら、どうする?」
「は?」

いきなり家に押しかけてきたかと思えば、とくに何をするでもなく、会話もしないまま、数分が経ったときだった。
彼女が、突拍子もない質問を投げかけてきたのは。

「…あたしがグリーンを嫌いだって言ったら、どうする?」
「……なんだよいきなり」
「ねぇ、どうする?」

彼女のいきなりな質問に、理由を聞こうと試みる。
だが、彼女は俺の言葉を軽くスルーし、逆に質問の答えを急かされた。

「…はぁ」
思わずため息が出る。

なんなんだ、いきなり。

これは本気の質問なのか、それともただの冗談か。
そう思いながら、彼女の顔色を伺う。

「…」
彼女は、俺がため息を吐いたことに怯えたながらも、真剣な目で、俺を見上げていた。
「…」

本気…なのだろうか…。

「…ねぇ」
「…まぁ、傷つくかな」
彼女に、再度答えを急かされる前に、彼女の言葉を遮るように、当たり障りのない答えを返す。
さすがに、嫌いだと面と向かって言われれば、誰であろうといくら俺でも傷つく。
「まぁって何さ。っていうかそれだけ?」
「それだけって」

当たり障りのない言葉を選んだつもりだが…。
この答えで十分ではないのか?
傷つくだけじゃ済まさないとでも言いたいのだろうか…。

「…他にはないの?」
傷つく以外?
「他ってなんだよ…」
例えば?
「例えば…死んじゃう……とか」
少し言いづらそうに言葉を吐き、彼女が俯く。

あぁ、そこまで重く感じて欲しいわけか。

「……じゃあ死ぬ」
「じゃあって何!!」
そういう答えを欲しがったから、そう返したまでだが、それで満足しないんじゃ、俺はどうしたらいい?
「というか、なんなんだいきなり。なんでそんなことを聞く?」
はぁと再度ため息をつく。

理由も分からないのに、下手に曖昧な言葉は返せない。
まして、本当に本気でこういう質問をしているならなおさらだ。
理由も分からないまま返せるのは、当たり障りのない答えと、望まれた答えだけだ。

「…っ…だって」
彼女は、さっきよりも顔を、悲しそうに歪める。
「…なんなんだよ」
俺は優しく、彼女の頭を撫で、髪の毛を梳く。
そんな、思いつめさせるようなことを、しただろうか…。

「…嫌いだって言ったとき、死んじゃうほどの衝撃を感じてくれたら、それだけあたしのこと、好きになってくれてるのかなって…思えると…思ったから…」
彼女の泣きそうな声で、どんどん小さくなる答えを、必死に耳に感じていく。
「…」
あぁ、そういうことか…。
「じゃあ、俺におまえが好きかを聞けばいいだろう」
ようはそう言うことだろう?
なんでそんな遠まわしな聞き方をするんだろうか…。
「だって、嫌いだって言われたら立ち直れないもんっ」
泣きそうな顔で俺を見上げてくる。
「嫌いだと言われて、なんとも思わないって言われる方は平気なのか?」
「…その方が直接嫌いだって言われるよりは、まだ、好きでいられるもん…」
「っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺に、それらしい思いがなくても、おまえは俺を、好きでい続けてくれるんだな…。

じゃあ、答える答えは、これ一つだ。

 

「…まぁぶっちゃければ、嫌いだって言われたときの、俺の本当の答えは、『べつになんとも思わない』だな…」
「…っ」
彼女はびくっと怯え、そのまま顔を俯かせる。
「俺がおまえを好きなんだ。おまえが俺を、嫌いになるはずがない」
「っ!?」
彼女がばっと、顔をあげた。

そっけない態度をとろうが、嫌わずに俺を好きでい続けるといったお前が、俺を嫌いになるなんて、誰が思うかよ。

「…嫌いになんか、させるかよ」
そう言って、彼女の口を、自分の口でふさぐ。
彼女の答えを、遮るように。

「…っ!?……っ…好き」
安心したように、それで少し困ったような、嬉しそうな、そんな複雑そうな表情を浮かべた彼女は、俺に愛の答えを囁く。
「……好きだ」
俺はそれに、満足げに答えを、返した。

 

2007年10月27日&28日 Fin


あとがき

漫画を読んだ後、昼飯食い途中に脳内で繰り広げられた話です。食い途中にも関わらず、2階からノーパソを持ち出し、食いながら書いたのは内緒な話(内緒じゃない)しかし、書きながら肝心の兄さんの最後のかっこいいと思われる台詞を忘れてしまうという、大失態をやらかしました。先にメモっておこうかなぁっと思ったんですが、平気だべと思ってる間に、実際その場面になったらすっこりと忘れてしまいました。ちっくしょぉおおお。2番煎じな感じがして居た堪れません。ぐすん。まぁこんなような台詞だったのは確かなんですけどね。ちきしょう。
しかしあたしにしてはものすごくグリブル小説です。姉さんがいささか弱い気もしなくはありませんが。せっかくの攻め気質兄さんに、おかしさを感じなかったので、グリブル小説でと念押しされたキリバン小説として献上したいと思います。こんなんで良かったでしょうか?本当遅くなってしまって申し訳ありませんでした。
いつか、これの姉さん視点も書いてみたい気もしますが、しないでしょうね(ええ)まぁ兄さん視点だからこそ、姉さんの嬉しさや幸せさはみなさん女性読者が想像して幸せを感じてくださいという方向で。姉さん視点で読めばさぞかし兄さんがかっこよく思えるだろうな…。そのはず。困ったような嬉しそうな顔をさせるってのは結構好きだと思いました。このまま兄さん、攻めに目覚めればいいよ!!(ええ)でもこれだけ攻めさせておいて、違和感感じなくなったのは進歩だと思います。目指せグリブルサイト!!

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