ルサ小説「その一言で…」
 

 

「相変わらず着飾らない人だねぇ」
会って速攻言われた言葉…。
「女の子なら少しは着飾るという言葉を知らないのかい?」
二言目に言われた言葉…。
「全くどこも着飾ってないというのにどうして遅刻をしてくるんだ。君は時間にもルーズなのかい?」

 

三言目の言葉の後の記憶はなか。

 

その一言で…

 

「全く、これ以上言ったらもう絶対あんたとは外行かんからね!」
ひとしきり気が済んだ後、そんなことを言いながら街を歩いた。
「僕は真実を言ったまでだよ?」
「まだ言うん!」
「…はいはい」

 

「君、それ以上の服を持っていないのかい?」
事の始まりはこの言葉からやった。
自分が持っとる服と言われる物なんか、こいつがくれた物だけだ。
それ以上の服なんか持っとらん。
洗濯してしまえば、またツタと葉っぱに戻る。
それを見かねたあいつが、服を買いに行こうというので、渋々付いていくことになったのだ。
別にいらんのに…。

「僕が作るにしても、限度があるからね」
それでも構わないけれどとか、ぶつぶつ言っとった。
そんな、あいつが勝手に喋っとるのを聞き流しながら、店が横目に流れていく。
そんな時、
「あぁ、これなんかどうかな?」
と、店のガラスケースの中にある可愛らしいと証される服を指さされた。
「そんな服着れるか!動きにくくてしょうがないやろ!」
こんな女の子らしい服なんか、自分に似合うわけない。
「君に少し、落ち着きという物を身につけてもらうには丁度いいんじゃないか?」
「なんて?」
こいつもう1発殴ろうか。
「まぁ、機能性を考えるなら…」
そう言いながら別の店へと足を運ぶ。
「あぁ、これならまだいいかも」
そう言って自分が足を止めた店は、男性物の服がある店。
「こらこら、こっちのがいいに決まってるだろ…」
そしたら腕を引っ張られて女物の店へと引っ張られた。

そんな感じに、今日一日中そこら中を連れ回された。
いろんなものを着せ替えられては、遊ばれとる気分しかせんかった。

「もういい加減にせろ!!」
最終的には女の子が着るような服を買わされそうになり、さすがの自分も切れる。
「何がだい?」
しかしこいつは分かっとらんようで…。
「今日1日中付き合ってやったんやから、もういいやろう?!あんたの好みを私に押しつけんといて!」

元からあんたの好みと、あたしの好みは違いすぎるんや。
そんなあんたの好みなんか押しつけられても困る。
「………」
そしたら、あいつは急に黙り込んだ。
「…」
しまった、さすがに言い過ぎたやろうか…。
「……まぁ、確かに君の意見も聞かずに、自分の好みばかりを少し押しつけすぎたかもね…」
「?」
珍しくこいつがあたしの意見を聞き入れた…。
「…でもね、僕は君に似合うと思ったものしか薦めてないよ?」
「っ!?」
反則だ。
そんな風に言われたら、絶対着るものかと思った、何着か買わされた女物の服を、着てもいいかと思ってしまったやないか…。
「ん?顔が真っ赤だけど、大丈夫かい?」
あいつが、自分の顔をのぞき込む。
「なんでもなか!!」
慌てて、自分が持っとった荷物で、あいつの顔を叩いた。
「いった!?何をするんだ!」
「急に顔を目の前に出してきたからや!」
「様子が変だと思ったから心配しただけだろう?!」
「余計なお世話!」
「あのぉ」
「何?!」「何ね?!」
この言い争いを止めるためなのか、どこからか女の人の声が聞こえて、そっちを見た。
「……お買い求めですか?そうでないならお外へどうぞ?」
そこにいたのは、にっこりと怒りオーラを全開にしてそびえ立つ、店員やった…。

そうだった、ここはお店の中だ…。

「………これください」
「ありがとうございます」
お店の人が服を袋に詰めていく。
「ちょっと!!」
何勝手に決めとんの!?
「これもきっと、君に似合うと思ったから」
「っ!?」

その一言で、こんなにも気持ちが左右されていく…。
悔しい。
絶対遊ばれとるんだ…。

でも、ホントに嬉しそうに選んでくれるあんたの気持ちは、しょうがないから駆ってやる。
しょうがないからやからね?
別に、言う通りにしたら、嬉しそうに微笑んでくれるからやないんやから。
絶対しょうがないからなんやから……。

そんな一言なんかで、絶対、気持ちが左右されたりやなんて、しないんやから…。

「馬鹿…」
「なんか言った?」
「なんでもなか!!」

 

2005年8月24日 Fin


あとがき

結局左右されてるって話です。拍手用のためとはいえ、ルサなんて書けねぇとか思った今日この頃。死ぬかと思った。九州弁は九州にいる友人に方言を直してもらったので大丈夫かと思われます。でもルサっぽくないよぉ(泣)

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