…………… 君は…何が嬉しい?
プレゼント
「何がいいんだ?」
オレの呟いた言葉は他に人のいない松葉寮の部屋に響いた。
何がいい? これはオレの彼女…に向けた言葉。 明後日はの誕生日。 去年の夏から付き合いだしたから… 二人で初めて迎えるの誕生日。
だから困るんだ。 こんなに近くなってからでは本人に直接聞くのは駄目だ。 ならば、自分で考えるしかない。 幸いな事に明日は憲法記念日で休みだ。 商品を直接見に行く…が、 ある程度の目星をつけないことには店を決めれない。 …ホントにどうすればいいんだ。
ふっと自嘲気味な声が漏れる。 最初はここまで彼女にはまるとは思ってなかった。 だけど…自分の誕生日、中体連、クリスマス、正月、バレンタインにホワイトデー。 それに毎日の会話に彼女の笑顔。 少しずつ…だけど着実に彼女への思いは広がっていった。
極め付きは最初はかなり長かった彼女が自分の髪を切った時。 驚いた。 綺麗だった。 別に前が綺麗じゃなかったと言う訳ではない。 単純にもっと綺麗になっていたんだ。
…‥関係のないかもしれない思考が繰り広げられてしまったな。
それにしても…オレはホントにこういうことは駄目だな。 三上や…藤代に笠井。 簡単に気の利いた物を考え付くだろうが… オレは駄目だ。
もう聞くしかないか? 彼女や…三上はまず却下だな。 本人に聞くわけにもいかないし、三上は笑う。 藤代や笠井もか… 奴らはGWだから自宅に帰っている。 残るは…2年の坂本か。 と言っても先輩とは呼ぶが敬語は使わない後輩。 でも、と仲がいいから思いつくよな? 明日の午前の自由参加練習にでも聞くか… には隠密にしないと…
「坂本」
「___何?」
彼女はスコアブックを手に持ち振り返った。
「ちょっといいか?」
「今回だけよ」
ため息をつきながら言う。 ホントと全然違うタイプだな。 と、また関係ない思考が動く。
少し失礼して…静かな場所に着いた。
「ちゃんの誕生日プレゼントでしょ?」
オレは驚いた。 そこまで彼女は勘がいいのか? 確かに良かった気がする。
「そうだが…」
オレは驚いたままで言う。
「アクセサリー」
「え?」
「聞いといてあげたわ」
あっさりと言いのける彼女。 相変わらず飄々としていう女だ。
「ネックレスがいいんじゃない? リングはまだ早いし」
あっさりといいつつ結構な優しさが見え隠れする。 さすが…としかいいようがない。 三上と同じタイプだな。
「そうか…ありがとう」
「別に」
そう言ってそっぽ向く彼女。 そういえば杉原が言っていたな。 そっぽ向くのは照れたか、気まずい時だけだと。 彼女は礼に弱いと。 その時の様子を思い出すとふと笑みが零れる。 喜々として語る杉原が微笑ましかった。
「お前も…」
「?」
「杉原と仲良くな」
「なっ///渋沢先輩!!!」
いつもはクールな彼女がこんなになるなんて、 ホントに二人は愛し合ってるのだな、と苦笑しながら走って逃げた。 彼女は足は遅いが…(失礼) 追いつかれると特技の拳法でやられる。
朝練も終って彼女へのプレゼントを探しに街へと出る。 しかし…問題はこの容姿でアクセサリーショップに入ることだ。 椎名とかなら平然と入れる…がな…。 別の意味で水野も三上も入れるな。 決死の思いで中に入る。
「いらっしゃいませー」
店員の声が少し気まずい。 しかし案外男もいて助かった。 そこまでは浮いていない。 予算も考えた上でネックレスコーナーを覗く。 マジカルストーンとか言う所にある品を眺めると、 淡いピンクの石に天使の羽がついてる、愛らしいネックレスをみつけた。 彼女はピンクが好きだったな、と思い説明を読む。 何やら RoseQuartz ローズクォーツ(紅水晶) ★★★ 愛の石。女性らしさを引き出し、恋愛成就の石といわれています。 ★★★
と書いてある。 が好きそうだなと思い値段を見てみる。 …少し予算より高い。 今月は文無しだなと思いつつもネックレスを片手にレジへと向った。
時は流れ今は5月4日国民の休日、午前10時3分。 との約束は15分。 早く来すぎたな、と苦笑する。 は直ぐに来た。 …いつもと違って怒って。
「おはよう」
「…おはよ」
…どうかしたのか? そうとしか思えない。 いつもは『おっはよ〜v』って感じで挨拶するのに… 何かオレはしたか?
「どうかしたのか?」
「別に…」
そう言ってそっぽ向く。 本気で…怒っているな。
「オレは…何かしたか?」
そういうとは『したじゃん』と呟いた。
「何を?」
「私の事なんてもう好きじゃないんでしょ?!」
急に声を荒げる。 どうして…?
「どうしてそう思うんだ?」
オレはできるだけ落ち着きをはらって言う。 本当はものすごく驚いて…焦っているのにな。 普段から変に気を張っているのが当たり前になっているから… 人にいつもいつも気を使っているから… 感情を隠すのが上手くなって… 己をさらけ出すのがヘタになっているな。 …でもといる時だけは違う。 そんなつもりなのに…今は気を使ってしまっているな。
「だって…明翔里が好きなんでしょ?!」
の口から出た言葉は予想もつかなかったセリフ。 どうして坂本? もしかして朝の… …そんなことよりもにそう思われてしまったのだな。 信用が無くなってしまっても… オレはが好きだ。
「そんな事はない」
オレのそのコエには言葉を詰まらせる。 が俯いてる隙に…オレは後ろに回った。
「えっ?」
が驚いた時には彼女の胸元にピンクの石が光っていた。
「これ…?」
彼女は自分の首のネックレスを見て困惑している。 さすがに突拍子過ぎたか?
「…誕生日おめでとう」
そう言うと彼女ははっとした表情をして真っ赤になった。
「ありがとっ///」
頬を朱に染めた彼女は綺麗と言うよりは可愛かった。
「どういたしまして」
そう言ってオレが微笑むと彼女はさらに赤くなった。
「これって…ローズクォーツ?」
彼女はネックレスを手で弄びながら言った。 きょとんとした表情で。
「そうらしいな。に似合うと思って」
言葉が嬉しかったらしい。 彼女はオレに抱きついてきた。 オレの胸に顔を埋めたまま彼女は言った。
「克朗はこの石の意味知ってる?」
オレはしばし考え…
「愛の石。女性らしさを引き出し、恋愛成就の石といわれているんだろ?」
と返した。 説明を暗記していたらしい。 それは彼女も嬉しい内容らしく…
「ホント嬉しい! 勘違いしてゴメンネ?」
「構わないぞ?」
「うん! 克朗大好きだよ!」
「オレも…が好きだ」
プレゼント…
悩んだ結果は良かったらしい。
はわわわわ…;;; 私の分身出張りすぎっ! ちゃんあんまり出てない! ちゃんにベタ惚れの渋沢さん書きたかったんです! ホンマすんません!!
渋沢「全く…こんな物貰って嬉しい奴なんているのか?」 坂本「うぅ…;;」 渋沢「精進しろ」 坂本「うぅ…」
渋沢「光…誕生日おめでとう」
俊宇 光 |