三上ドリーム「恋愛。」
 

 

何度も逢って、その度に私を夢中にさせていく人

 弱くて儚くて繊細で、強い人

 少し見栄っ張りでカッコ付けな人

 そして誰よりも不屈な精神を持つ人

 私の想い人

 ゆっくりゆっくり二人で成長しあえたら幸せ

 あなたの傍に居られたら幸せ

 あなたも私も周り皆も幸せな恋愛を二人でしよう?

 

          恋愛。

 

 驚いた。なんてものじゃなかった。

 三上はいつもフィールドでボールを追いかけるのと同じ必死さで私の腕を掴み、「好きだ」と言ってくれた。

 うれしいと思う反面、夢かもしれないと思う自分がいる。
 けれど私は三上がそんな冗談を言わないことを誰よりも知っていた。
 三上は自分が思っているほど、ひどい人ではないから。
 嘘も苦手で、いつも人と正面から向かい合う人。
 多分私のほうが嘘つきだろうし、汚いだろう。

 

 

 

 私は三上の想いを確かめるべく、そして返事をするためにグラウンドへと向かった。
 背中にクラス中から好奇、嫉妬、羨望、そんな視線を感じながら。

 

 

 

 

 いつものように部外者を阻むように建っているフェンス越しに恋しい人を探した。
 この時間はまだ部活があっているはずで。
 終わる時間にはまだまだあるが私は何時間でも待つつもりだった。
 今日中に言わなければ意味が無い。

 

 

 

 

「あれ?先輩じゃないっスか?」

 フェンスの中から武蔵野森のエースストライカーが声を掛けてきた。

「藤代君。いいの?こんなところでサボってて」

 ちょっとびっくりしてしまった。
 普段ならこの時間はサッカー部の誰もが外を見る暇も無く、無心にボールを追いかけているはずだから。

「違うっスよ。さぼりじゃないッス」

「冗談はいいから、早く戻りなさい。桐原監督や渋沢が怒るわよ」

 桐原監督はとても厳しい人だし、渋沢も普段はとても優しいけれどサッカーのことになるととても真剣になる人だった。
 私のために藤代君が怒られることになってはいけないと、戻るようにいうけれど藤代君はなかなかフィールドに戻ろうとはしない。

先輩。お久しぶりです」

 困っているところに現れたのは、武蔵野森のディフェンダー。
 藤代君のよき理解者であり、ストッパー役でもある。

「笠井君、久しぶりね。練習はいいの?」

「もう終わったんです。今日は監督もコーチもいないので、紅白戦をしただけなんですよ」

「そうなの。ならよかったわ。藤代君がサボってるんじゃないかって気が気じゃなかったの」

 安心して微笑むと、藤代君が頬を膨らませた。

「さっきから何度も俺、言ったじゃないスか。なんで俺のことは信じてくれなかったのに竹巳のことは信じるんすか」
 「人徳の差に決まってるだろ、誠二」

 二人が言い合いというより、漫才をしているところを見てるとなんだか心が和んできた。
 そうして初めて私は緊張していたことに気づいた。
 私が三上に伝える言葉で私たちの関係はぜんぜんちがうものになってしまうだろう。
 自分が今までの関係を変えてしまうかもしれないその可能性が私を恐怖に陥らせた。

 

 

?どうした?」

 

 

 

 

 せっかくの決心が鈍りそうになるその寸前で、渋沢の声が聞こえてきた。
 ここまで来て怖気づいてちゃだめ。
 三上が勇気を出してくれたなら、次は私の番だと思う。

 

 

「もう練習は終わったのよね?三上と話したいんだけど、いい?
邪魔になるようなら、待ってるけど…。」

 少し声を震わせながら言うと、渋沢は優しく笑ってくれた。

 

「全然構わないよ。…‥三上っ。ちょっと来てくれ」

 

 

 

 さりげなく私を三上から見えないように隠して、手招きをする渋沢。
 やっぱり敵わないと思う。
 渋沢には私が何をしに来たのか、お見通しなんだと思う。

 

 

「っんだよ、渋沢。俺様は忙しーんだよ」

 近くまで歩いてきた三上は渋沢の後ろに私がいることに気づいて、固まった。

 

 

 

 

 

「ゆ……き」

 

 

 私は息を吸い込み、口を開いた。

 

 

 

「三上に言いたいことがあって…。すぐに終わるわ。少し時間をくれない?」

 

 

 

 

「…ああ…」

 

 三上は少し怯えたように私の続きの言葉を待っていた。

 

 

「私は好きな人がいるの」

 

 

 

 

 

 この言葉に三上は痛みをこらえるように眉を顰めた。
 それでも決して私から目を逸らさずに、私の全てを受け止めようとするかのように、真摯に私を見つめ続けていた。
 そんな潔さと、強さと、誇り高さに私は目を奪われた。

 

「一目ぼれだった。入学式の日にその人と出会ってから、私はずっとその人のことを想ってた。
 とても優しいところや、努力家なところ。少しカッコつけなところに、弱いところ。そしてそれ以上に強い、不屈の精神。
 その人の新しい一面を見るたびに恋をし続けた。それは今も続いている。時が経つにつれて、私の中で想いが膨れ上がっているの。
 けれどこの想いは誰にも伝える気は無かった。ずーっとずーっと私の心の中で、大切にしまっておこうと思ってた。
 だけど今日、恋をし続けているその人に好きだと言われた。クラスのほとんどが残っている教室で。
 しかもその人は私の言葉を遮って、その場を去った。
 その人が私に言った言葉が真実なのか私にはわからないわ。
 もしかしたら私が見た都合のいい夢なのかもしれない。
 三上はどう思う?」

 

 

 言い終えて三上を見つめると、彼はぽかんと私を見ていた。
 三上のこんな顔は多分、滅多に見られるものじゃないだろう。

 

 

 

「それってつまり俺ってことだよな?
 の好きな奴って俺なのか?」

 

 

 呆気にとられていた顔が徐々に嬉しそうな顔に変わっていった。
 私が何も言わないでいると、真剣な顔になってもう一度私を見つめなおした。

 

 

。お前が好きだ。俺が疲れたとき、落ち込んだとき、誰よりも俺の傍にいてくれ。
 誰よりも一番に俺を想っていてくれ。俺もお前のことを一番に想っているから」

 

 

 

 言わなければ。
 たった一言。
 何よりも大切な言葉を。

 

 

「私も三上が好きだわ。誰よりもあなたの傍にいたい。あなたが傷つき、迷っているとき、それを癒すのは私で在りたい」

 

 

 

 

 

 そうして私たちは二人で笑いあった。

 

 

「よかったな、。想いが伝わって」

 

 

 

 渋沢のその言葉に敏感に反応したのは三上だった。

 

 

「てめえ、渋沢。もしかしての気持ち知ってやがったのか?」
「もちろんだ」
「ならなんで教えてくれなかった?俺が悩んでんの知ってたじゃねえか」
「聞かれなかったからな」

 

 そう言って笑いながら逃げる渋沢を追いかけ、三上が走っていった。

 

「やれやれ。あの二人も子供だなぁ」
「誠二に言われちゃおしまいだね」

 

 

 そう言いながら、藤代君も笠井君も二人を追いかけ、走っていった。

 

 

 

 これから多分いろんなことがあると思う。
 片想いのほうがよかったと思うこともあるかもしれない。
 だけど今日の幸せを思い出したら、きっと大丈夫だと思う。
 三上の傍でみかみの苦しみや、弱さを分かち合えるのだから。

 これからまた私は三上に恋をするでしょう。
 今まで知らなかった三上を知って、彼を好きにならずにはいられなくなるでしょう。
 でももうそれを辛いとは、苦しいとは思わない。
 それは幸せなこと。

 ゆっくりゆっくり、恋愛しよう?

  

 

 

 


遅くなってしまってすみません。
一応(一応?)完結です。
・・・本当に繋がっていたのかどうか作者である私が一番首をひねっています。

霽月蓮 離流 拝


霽月蓮 離流様にいただきました、ラスト4作目です。全作で散々続きが気になる!!と書いていたのが彼女に通じたのか、書いてくださいました!!!!しかもこんなこんなステキおちつきで!!!よかった。しっかり続きがあって。はぁ。もう俺は安心しましたよ。っていうかすごいな!!!本当にすごいな!!こんなにクオリティーの高い素晴らしい作品は久しぶりに見たもんだからもうもう萌えです!!すごいよ!!三上ん大好きだ!!(ええ)あははは。本当にどうもありがとうございました。4部作ということわざわざ書いてくださって。本当に感謝しています!!本当にどうもありがとうございました。また何か機会があったら書いてあげてください!!!っていうかグリブルお願いしちゃおうかしら(爆)あははは。本当にどうもありがとうございました。

俊宇 光