何度も逢って、その度に私を夢中にさせていく人 弱くて儚くて繊細で、強い人 少し見栄っ張りでカッコ付けな人 そして誰よりも不屈な精神を持つ人 私の想い人 ゆっくりゆっくり二人で成長しあえたら幸せ あなたの傍に居られたら幸せ あなたも私も周り皆も幸せな恋愛を二人でしよう?
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驚いた。なんてものじゃなかった。 三上はいつもフィールドでボールを追いかけるのと同じ必死さで私の腕を掴み、「好きだ」と言ってくれた。 うれしいと思う反面、夢かもしれないと思う自分がいる。
私は三上の想いを確かめるべく、そして返事をするためにグラウンドへと向かった。
いつものように部外者を阻むように建っているフェンス越しに恋しい人を探した。
「あれ?先輩じゃないっスか?」 フェンスの中から武蔵野森のエースストライカーが声を掛けてきた。 「藤代君。いいの?こんなところでサボってて」 ちょっとびっくりしてしまった。 「違うっスよ。さぼりじゃないッス」 「冗談はいいから、早く戻りなさい。桐原監督や渋沢が怒るわよ」 桐原監督はとても厳しい人だし、渋沢も普段はとても優しいけれどサッカーのことになるととても真剣になる人だった。 「先輩。お久しぶりです」 困っているところに現れたのは、武蔵野森のディフェンダー。 「笠井君、久しぶりね。練習はいいの?」 「もう終わったんです。今日は監督もコーチもいないので、紅白戦をしただけなんですよ」 「そうなの。ならよかったわ。藤代君がサボってるんじゃないかって気が気じゃなかったの」 安心して微笑むと、藤代君が頬を膨らませた。 「さっきから何度も俺、言ったじゃないスか。なんで俺のことは信じてくれなかったのに竹巳のことは信じるんすか」 二人が言い合いというより、漫才をしているところを見てるとなんだか心が和んできた。
「?どうした?」
せっかくの決心が鈍りそうになるその寸前で、渋沢の声が聞こえてきた。
「もう練習は終わったのよね?三上と話したいんだけど、いい? 少し声を震わせながら言うと、渋沢は優しく笑ってくれた。
「全然構わないよ。…‥三上っ。ちょっと来てくれ」
さりげなく私を三上から見えないように隠して、手招きをする渋沢。
「っんだよ、渋沢。俺様は忙しーんだよ」 近くまで歩いてきた三上は渋沢の後ろに私がいることに気づいて、固まった。
「ゆ……き」
私は息を吸い込み、口を開いた。
「三上に言いたいことがあって…。すぐに終わるわ。少し時間をくれない?」
「…ああ…」
三上は少し怯えたように私の続きの言葉を待っていた。
「私は好きな人がいるの」
この言葉に三上は痛みをこらえるように眉を顰めた。
「一目ぼれだった。入学式の日にその人と出会ってから、私はずっとその人のことを想ってた。
言い終えて三上を見つめると、彼はぽかんと私を見ていた。
「それってつまり俺ってことだよな?
呆気にとられていた顔が徐々に嬉しそうな顔に変わっていった。
「。お前が好きだ。俺が疲れたとき、落ち込んだとき、誰よりも俺の傍にいてくれ。
言わなければ。
「私も三上が好きだわ。誰よりもあなたの傍にいたい。あなたが傷つき、迷っているとき、それを癒すのは私で在りたい」
そうして私たちは二人で笑いあった。
「よかったな、。想いが伝わって」
渋沢のその言葉に敏感に反応したのは三上だった。
「てめえ、渋沢。もしかしての気持ち知ってやがったのか?」
そう言って笑いながら逃げる渋沢を追いかけ、三上が走っていった。
「やれやれ。あの二人も子供だなぁ」
そう言いながら、藤代君も笠井君も二人を追いかけ、走っていった。
これから多分いろんなことがあると思う。 これからまた私は三上に恋をするでしょう。 ゆっくりゆっくり、恋愛しよう?
霽月蓮 離流 拝
俊宇 光 |