my dear
「」
サッカー部のマネージャーである小佐々由岐が呼ぶと、は振り返った。
由岐はきっと今日もがいると予想していたので、忙しく、仕事もたまっているが、の基にやってきた。
由岐はサッカー部の人気者。三上亮とつき合っている。告白をしたのは由岐のほう。
ふられたらどうしよう。とか、いろいろな不安があって、好きだと気づいてから告白するまではかなりの日数がかかった。
だが由岐はから勇気をもらったので告白することが出来て、うまくいった。
だからこそ、見ていられないのだ。
の想い人は守護神でもあり、キャプテンでもある渋沢克朗。もちろん人気はとても高い。
は告白もせず、毎日毎日サッカー部の練習を見に来ていた。由岐の後輩の沙耶は、今日は雨だし、いないろうって言っていたけど、由岐は絶対に来ていると思ったのだった。
案の定は雨にもかかわらず、そこにいた。
話しかけることもせず、黄色い声援をとばすこともなく、ただじっと渋沢克朗を見ていた。
「由岐…。」
はとてもびっくりした。練習はまだ続いているから、マネージャーである由岐がここにいるなんて、ありえない。(マネージャーもとっても少ないらしい。まぁ、募集をかけたら、数十人くらいは来そうだけど。)
だから、驚きを含んだ声を発した。
「どうしたの?てかなんで私がここにいるって?」
「わかるわよ。」
最後まで言っていないのに、由岐はそう答えた。
「なんで?」
「雨だとか、晴れだとか、関係ない。サッカー部が練習している日に、は必ずここにいるもの。」
は苦笑した。そこまで言われる=毎日見られていた。ということ。
「ねぇ、そのことを渋沢くんは…」
「知らないと思う。でも直接聞いた訳じゃないから、わからない。」
「そっか」
はそういって、またグラウンドに目を戻した。
守護神でもある。
キャプテンでもある。
どっちの時も、すごく重いものを日々背負っている。
なのに、いつも優しい目でみんなのこと見てる。
練習の時は叱咤激励の表情で、練習している。
なんでも出来るってみんな言ってる。
料理も作れるし、なんでも…。
だけど人間努力なしに、そこまで出来ない。
そう。渋沢克朗という人は、人一倍の努力家…。
は尊敬した。尊敬してたら、かっこいいと思った。
そして、、好きになった。
話しかけることも出来ないけど、見ていられたらいいと思った。
−由岐と沙耶ちゃんは告白してうまくいった。2人は可愛いし、当たり前。だけど、私は…。−
由岐は、毎日練習を見に来ているを見ていて最初は、何もいわないで、が告白するのをまとうと思った。だけど、気づいた。は今のままじゃ、何もいわないで、高等部へ行く。
だから、今日決心した。
「。いい加減、告白しなさい!」
「え」
は目を丸くした。だけど、言い出したら止まらないのが、私。と思い、由岐は続けた。
「告白しなさい!」
「…。だめだよ由岐…。私は…。」
由岐は、叱咤激励をしようと思ってここに来た。だけどもう我慢できない。
「じゃあこうしよう。今日は何日?」
急に話題を変えた由岐にとまどいつつも、は携帯を見る。
「2月3日。」
「バレンタインは?」
「…。2月14日。」
は毎年バレンタインには何も渡せずに、過ごしてきた。
「バレンタインに、渋沢くんにチョコをあげる。」
-はい?-
由岐は急にそのようなことをいった。
-今なんとおっしゃいました?え?チョコをあげる?え…-
「えっ!」
びっくりした声をあげただったが、その後由岐はとんでもないことを付け足した。
「んで、卒業式の日に、告白する。場所とかは任して。渋沢君を呼ぶのも、私がしてあげるから。」
はもう頭が着いていけてなかった。
すると由岐は、由岐の彼氏の三上くんが良くやるように、文字通りのデビスマを浮かべて「従わなかった場合は、どうなるかわかるよね?じゃ。」
といって、去っていった。
は文字通り立ちつくした。
由岐が怒ると怖いのは誰でも知っている。だから、さからったらどうなるか、分からない。
はどうしよう…と思いながら、今度は複雑な気分で渋沢克朗を見つめた。
二日後
やると決めたなら、しっかりやる。これがのモットーみたいなものだった。
は渋沢君に食べてもらうんだから、まともなものを作ろう!ということで、沙耶ちゃんや由岐に協力してもらって、チョコのお菓子作りに取り組んでいた。
作ったのはマドレーヌ。気持ちを込めて何度も作っているうちに、結構おいしく出来るようになった。
と、いいつつ、結構作ると、結構な量になる(あたりまえ。)
が困っていると、由岐と沙耶ちゃんがどこかへ持っていった。は疑問を抱えていたが、そんなことを気にしている余裕はなかった。
サッカー部練習終了後
「お疲れ!はい。マドレーヌの差し入れ。」
沙耶はそう言って、大量のマドレーヌをサッカー部に配った。
「あ。竹巳のはこっち。」
「おぉ、ありがとう。」
ちなみに、もうわかっていると思うが、サッカー部に配ったのはの手作り&由岐の手作り。
「あ!だめ!」
由岐はある人物をとめた。
「え」
そう言って疑問の表情を浮かべたのはもちろん渋沢克朗。
「渋沢君は、食べちゃ駄目だよ。絶対駄目!」
「え??」
「とりあえず駄目!藤代!あんた渋沢くんの分も食べなさい!」
「やりぃ。いただきます!」
「…。」
2月14日。
バレンタインデ〜。
は気が気じゃなかった。
授業もまともに聞けないし、御飯を食べるのもゆっくりで、心ここにあらずって感じ。
だけど、勇気がなくて放課後になってしまった。
幸運なことに今日は2回も渋沢君を見たが、とてもじゃないが、緊張して渡せなかった。
「!」
「由岐…。」
「渡した?」
由岐のその言葉には首を横にふった。
「も〜〜。今日見てたけど、2回もあったじゃない?なんで渡さないのよ!」
「だってぇ…。」
由岐はおもいっきりため息をついていた。
「ねぇ、大変そうだし、やめない?」
は思い切っていってみた。
「なんでよ?」
「だって…。」
今日は確かに2回あった。だけど、二回とも、チョコをもらっていた。もちろん、教室をのぞいたときに見えた机の中にもチョコは満杯。
処理するのはどんなに大変だろう…。
それでも彼はもらう。
由岐はの後ろにある人を見た。そしてにっこりと笑い、一瞬で考えた行動を実行した。
「い〜い?。いくらもらうったって、社交辞令みたいなものよ?お返しなんて渡さないし、感想だって言わないじゃない?」
「そりゃ、そうだけどさ、たくさんもらったら、やっぱり処理が大変だし、私のなんて…。」
「くれるのか?」
「え」
は恐る恐る振り返る。するとそこには、なななんと、渋沢君が…。
かっこいぃ〜。
ってことじゃなくて、はめられた!
「由岐!……。」
振り返って由岐を怒ろうとしたら、すでに廊下を曲がってしまったらしく、どこにもいなかった。
「?」
「はい!」
はとても緊張しつつも、渋沢君のほうを振り返る。
「それで、さっきの話を聞いてしまったんだが…。」
「あ、はい!あの…処理…大変じゃないですか?」
の言葉に渋沢くんは少し苦笑した。
「同い年なんだから、敬語はやめないか?」
−あ−
「あ、うん。で、処理…」
「大丈夫だ。バレンタインデーは練習終了後に、サッカー部全員で、チョコを食べるから。」
「あ、そっか…。」
はその言葉に”しゅん”となった。
一生懸命作ったのに、食べてくれないんだ…。
「あ、でも!必ず一口は食べるから…。」
そう渋沢君はの心情を理解したかのような言葉をくれた。
「じゃあ…はい。」
は恐る恐る渋沢君に手渡した。
渡すときに少し指が触れて、は緊張の嵐に襲われていた。
「ありがとう。」
「私も!もらってくれて、ありがとう。これから部活だよね?」
「ああ。…。いつも、見てるよな?」
-はい?-
「…え!」
渋沢君は苦笑しつつ、続ける。は頭の中パニック中…。
「いつもいつも見てるよな?雨の日も、晴れの日もさ。ってサッカー好きだったんだな。」
の思考回路はやっとおいついた。
-好きなのはあなたです。-
と、人知れずツッコミをしてみたり
…ってそんな場合じゃない!
「ななな・なんで私が見てるの知って…。」
「小佐々さんとか、結城さんが見てて、なんだろ?って思ったら、がいた。」
「あ、そっか…。」
「ああ」
そう言って渋沢君はまた微笑した。
「それじゃあ俺。」
「あ、うん!」
「今日は、来ないのか?」
「え…あ。行く。けど、もうちょっとやることやってから行く。」
「そうか。じゃあ。」
「うん。」
渋沢君は去っていった。
そしては教室に戻った。
誰もいない教室で一人壁に寄りかかった。
-あれ…。-
渡せて嬉しいはずなのに、は涙をこぼした。
理解してしまったのだ。
渋沢君に、絶対に想いが通じないだろうと言うことに。
好きになってなんかもらえないってことに。
そして再度思ってしまった。
告白してふられたらどうしようと。
そんなことになってしまったら、とてもつらく、とても悲しいということに。
はしばらく泣いた後、サッカー部にはいかないで帰宅した。
卒業式。
バレンタインの後、渋沢君はおいしかったと言ってくれた。
はとりあえず渋沢君の口にあってよかったと思った。
まぁ、それはいいとして、今日は約束の告白の日。
は由岐にめちゃめちゃ怒られたとしても、告白は出来ないと思った。
だけど、由岐に見つかったら絶対に告白しなきゃいけなくなる。
幸せなことなのか、不幸せなことなのかはわからないが、渋沢君は告白されまくっていて、由岐が話しかける暇もない。
そして私は由岐に黙って屋上に行った。
高いところから外をじっと眺めた。
「も〜。ったらどこに行ったのよ?」
由岐はいつの間にか荷物をまとめて教室を出たを探し回っていた。
-あとは屋上か。って高いとこ好きだもんね。-
由岐が屋上へ向かおうとしたときだった。
「あ、小佐々さん?」
「ぇ?あ。渋沢君。」
ここにがいれば…と悔しがったが、とりあえず渋沢克朗が自分を呼び止めた理由が知りたい。
「なに?」
「…知らないか?」
「?私も探してるの。」
「そっか。ありがとう。」
そのとき由岐は、ふと感じた素朴な疑問を渋沢克朗に聞いてみたくなった。
「あ。ねぇ渋沢君。ずっと前からさ、ちょっと疑問に思ってたんだけど、なんでは。で、私達は小佐々さん。なの?」
渋沢克朗は少し動揺したような顔をした。
「いや、別になんとなく。」
それをキャプテンスマイルでごまかそうとしたらしいが、由岐には通用しない。
なぜか?三上亮というだ〜い好きな彼氏がいるから。
てなことはどうでもいいとして、
「に用があるんでしょ?なら、多分屋上よ?あと行ってないの、あそこだけだから。」
由岐はまたもや彼氏のようにデビスマを浮かべた。
渋沢克朗は苦笑しつつも、例を言って屋上へ向かった。
屋上
「!」
「え」
は突然呼ばれて振り返る。するとそこには…
「渋沢…くん?」
「やっと見つけた。」
渋沢君は、少しだけ息を切らしての前にやってきた。
「どうしたの?」
は渋沢君に探されるような理由が思い当たらないので、たずねる。
「ああ、3つばかしあるんだが…」
「急いでないから、どうぞ…。」
は奇跡的にマイペースで返した。
「バレンタインの日、どうしてこなかったんだ?」
「え…。」
まさか聞かれる、というか、気づかれるはずがないと思っていたのでの驚きは頂点。
どんなに混乱しつつも、とりあえず、回答せねば…とは思い、適当に理由を考えて答える。
「あ、行こうかな?と思ったんだけど、やらなきゃいけないことが、ちょっと時間かかかって、やっと終わったと思ったら、用を思い出して…。」
ちょっと苦しいいいわけだが、あなたを好きになってしまったことをつらいことだと思いなおし、泣いていて、いけませんでした。とはいえない。
納得してくれ!と思ったら納得してくれて、ほっとした。
「で、次…その…。これ。」
「え?」
の目の前に箱が差し出される。
「なにこれ?」
「お返し…。」
「え!」
はとうとうパニックになった。
-え?渋沢君からお返し?マジで?え?もらっていいの?え?え?え?-
「いらないなら、いいんだが…。」
「えっ?いる。いります!」
は手を差し出し、箱を受け取った。
「わぁ…ありがとう☆」
は満面の笑顔で渋沢君にお礼を言った。
満面の笑顔にならずにはいられない!!
はニコニコと箱を見つめた。
「よろこんでもらえたみたいで、よかったよ。」
「え?ぁうん。すっごく嬉しい♪ありがとう!」
は笑顔で返す。渋沢君も微笑んでくれた。
「あ、えっと、あとひとつだよね?なに?」
はまたもや奇跡的に返した。
「が、嫌じゃなければ、なんだが…、」
「??」
「その箱、…。」
「この箱?」
はさっきもらった箱をさす。
「ああ、それを、バッグの中にとりあえず置いてくれないか?」
「え…………‥?????ぅん。」
はわけがわからないなりに、バッグの中に丁寧にしまう。
はしゃがんだまま渋沢くんを見つめて、これでいい?と聞いた。
「ああ。はい。」
渋沢君は手を差し伸べてくれた。
「あ、ありがとう。」
はドキドキしまくりながらも、手を取った。
ぐいっ!
「わ?」
渋沢君は力いっぱい?引っ張った。
気づくと私は渋沢君に包まれていた。
「え」
「好きだ。」
-ぇ-
「が好きだ。」
は何を言っているのかさっぱり理解できなかった。
「どういう…こと?」
「が好きだってことだ。俺はが好きだから、にそばにいてほしい。俺は常にを感じていたい。いつも、誰よりも近くにいてほしいんだ。」
-好き?だれを?-
-わたし?-
の目からは涙があふれる。
「俺の一方的な気持ちだから、断ってくれてもかまわないんだ‥ただ、言いたかったんだ。」
そして渋沢君は私を離した。
は涙を流し続けていた。
「ごめん。」
-あやまらないでよ…-
-だって…私も…あなたのことが…だけど…-
「私…なんかで、いいの?」
渋沢君は私の言葉に少しだけ微笑した。
「じゃなきゃ駄目なんだ。ほかの子じゃ…だめなんだ。」
は涙を流しつつも、返答した。
「わ…たしも……渋沢君のことが…好きです…。」
それだけ言うのが精一杯だった。は涙を流し続けた。
渋沢君は、そんなを再度抱きしめ、ありがとうと言ってくれた。
やっと涙がおさまりかけた。だが、涙はもう少しとまりそうにない。
「ご、めんね?」
「いいよ。?」
「何?」
は目を軽くふいて上を向く。
-え-
「涙、とまったな?」
「なっなっなっなっ」
は動転。今度こそ本当にパニック。
確かにとまりましたが…。
「、君が好きだ。」
渋沢君はそう言って、さっきと同じように
にキスをくれた。
すごくすごく緊張して、すごくすごくドキドキしたけど、は幸せを噛み締めながら、目を閉じた。
二人で家路についているとき、渋沢君は「マネージャーになってくれないか?」といい、は笑顔で了承した。
その後、由岐達は、二人が甘甘すぎて『見てるこっちが恥ずかしいよ。』といっていたらしい。(笑)
作成者:胡事把枝
胡事把枝様にいただいてしまいました!!!わぁーわぁーわぁー!!!!すげーすげー(おいおい)いやーずっとこのカップリングにはまってくださっってるって話は聞いてはいたんですが、まさか書いてくださるなんて思ってもいなかったので、書いてもらったときはもうどきどきどきどき(おちつけ)いやーもう本当にどうもありがとうございました。
自分話が想像出来たりするタイプだったりするんですが、彼女の話は想像していなかったような展開がおりまざっていてもう読んでてどきどきでしたよ。何回ベットに打ちひしがれたことか。もうどきどきでした。かなり萌え萌えでしたし。もしかすると、マネージャシリーズの光さんは、こうやって、渋沢さんとうまくいったのかもしれないですね〜(何を勝手に)まぁそう考えると素敵ステッキ〜じゃないですか!!ね?うふふ。
そういえば渋沢さんの名前を勝手に変えちゃったことお許しください。「郎」ではなく「朗」なんでね。あはは。
本当に本当にどうもありがとうございました。
俊宇 光
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