バースデー
7月1日、は1人の人物を凝視していた。
凝視するのは初めてじゃなくて…毎日、かな?
見てるとすごく幸せになれるけど、ちょっと不都合なことがある。
それは、周りに誰か来ても、気づかないって事。
「また見てる。」
「え」
見上げるとそこには沙耶ちゃんがいた。
沙耶ちゃんはの友達。
いつもなら気づくのに、今日は気づかなかった。
「いつからいたの?」
「さっきからずっと。それより、また見てたね。」
―まさか…見られてた?―
―もしかして、毎回?―
「な、なんのこと?」
ちょっとごまかしてみるけど、沙耶ちゃんは、にこっと笑ってに言う。
「ごまかそうとしても、無駄よ?いつも、渋沢くん見てるよね。」
ドキッ
「いい加減告白すれば?」
「なっ!」
「しぃ‥」
沙耶ちゃんはマイペースで口の前に一本指を立ててそう言う
―悔しい…。―
そう思ったの心を見透かしたように沙耶ちゃんは続ける
「悔しかったら、告白しよう!」
「でっ出来ないよ。」
「なんで?」
すごく不思議そうに聞いてくる沙耶ちゃんがちょっぴし、にくたらしかった。
「だって…すごい人気だよ?告白だってされまくってるし、チョコだって、たくさんもらってる…。私なんて…ただのクラスメイト。話したことだって、ほとんどない。渋沢くんは、きっと私がいることすら、わかんないと思う。」
は自分で言ってて、情けなくなってきた。
それと同時に切なくなってきた。
再度気づいてしまったかなわない想い…。
再度気づいてしまった届かない想い…。
その事に気づけば気づくほど、なんで恋なんてしてるんだろうって思う。
好きになるのをやめられたらいいのにって何度も思ったけど、
やめること、出来なかった。
「」
「だめだよ…沙耶ちゃん。私…。」
「でも、頑張ってほしい。」
「沙耶ちゃん…。ありがとう。」
はその後、いつもどおりに授業をして、寮に戻った。
はいつもと同じように日々をすごし、夏休みに突入した。
そんなある日のことだった。
トゥルル
「もしもし。」
「あ、?」
「うん。どうしたの?」
7月28日。沙耶ちゃんから電話がかかってきた。
「うん。あのね、明日暇?」
「明日?暇だけど…?」
突然予定を聞かれて戸惑ったけど、明日は特に予定がない。
何の日だろう?と、思って机の上のカレンダーを見ようとして、気づく。
7月29日。それは渋沢君の誕生日。
いつも何か用意するけど、渡せずに自分で使ってしまっている。
今回も渡せないプレゼントを用意した。そしてそれはカレンダーの側に置いてある。
けど、沙耶ちゃんからの電話とは関係ないだろうと思って何があるのか聞いてみた。
「それで?明日何かあるの?」
「明日ね、試合があるんだ。その後、渋沢くんの誕生日パーティーをするんだ。」
「えっっなんで、私を呼ぶの??おかしいよ。絶対。」
沙耶ちゃんは
マネージャー。
だけど、は、
ただのクラスメイト。
「とりあえず、来て!場所はうちの学校だから。プレゼントもちゃんともって来るんだよ?わかったね。じゃ!」
「ちょ!」
言いたいことがあったけど、沙耶は切ってしまった。
7月29日
とうとうやってきてしまったこの日。
はベンチに座ってグラウンドを見下ろしている。
渋沢君へのプレゼントはカバンの中。
きっと渡せないだろうけど、そばにおいておきたかったから。
試合は1−0で勝った。
途中相手に点を取られそうになったけど、渋沢君が守って勝った。
守護神が。
キャプテンが
守った。
はサッカー部が部室に戻っても、
マネージャーがグラウンドから姿を消しても、
ずっと観客席にいた。
なぜかはわからない。
ただ、の目からは涙があふれていた。
は顔を覆うこともせずに、誰もいなくなったグラウンドを見つめていた。
「。」
はその声に振り向くと、そこには…
「しぶさわ…くん」
「、なんで泣いて…」
は手で顔を覆う。
―なんで…渋沢君がここにいるの?ってかなんで私泣いてんの?―
が泣きながら考えに集中しているときだった。
「え」
は何かに包まれた気がした。
涙目のまま顔を上げると、そこには服が。
―服?―
がちんぷんかんぷんでいると、次には耳の近くから声がした。
「ごめん。でも、ほっとけなくて…。俺には何もできないけど…。でも。」
―なんで声がするの?え??待って?―
―ちょっと待って?もしかしてこれ服?ってことは、これ人?ってことは何?私って誰かに
抱きしめられてるの?ちょっと待って?―
―待って?さっきの声って…渋沢君?????????????―
…
…
…
…。
「ええ!」
「え??」
「しっしっ渋沢君?なっなっなんで?なんで?え?」
は驚きを抑えられなかった。
―現在混乱中―
「えっとつまり、、え?」
とりあえず、一通り混乱したせいか、涙はとまっていた。
「だから、に用があって、のところに来てみたら、泣いているから、何もできないけど、抱きしめたってこと。」
「…。ええええええ!」
はその事実に顔を真っ赤にした。
―ウソウソウソウソ?まじで?ほんとに?やったぁい、
ってことじゃなくて、ー
「ごめん!でもなんで泣いていたのかわかんない。」
「そっか。大丈夫ならいいんだ。」
―あれ?渋沢君と普通に話してる。やったvしかも、私の名前覚えててくれたって事は、
眼中の中に入ってたんだ〜。幸せ…vv―
「で、えっと、私に用事があったんだっけ?何?」
「あ、その…だな。」
「??うん。」
「これから何を言っても、Yesと、答えてくれ。」
「え?…あ。そういえば、そういうゲームあったね。」
「ああ。」
「Yesってことは、はい、ってことだよね?わかった。」
急になんで思い立ったのかはわからないけど、は了承した。
「じゃあ行くぞ?」
「はい。」
渋沢君は苦笑して、始めた。
「サッカー部は強い」
「はい。」
「サッカー部は3群まである」
「はい。」
「マネージャーは不足している。」
「はい。」
「キャプテンの名前は渋沢だ。」
「はい。」
「白と黒があったら黒がすき。」
「はい。」
「三上と小佐々さんは付き合っている。」
「はい。」
「笠井と結城さんは付き合っている。」
「はい。」
「告白したのは三上だ。」
「はい。」
「俺と付き合ってください」
「はい。」
「告白したのは笠井だ。」
「はい。」
「以上」
「はい」
‥あれ?なんか途中に入った…?
え?え?え?
たしか、告白したのは三上くんと告白したのは笠井君の間…
「俺と付き合ってください」
「はい?」
「あ、もういいぞ?」
「いや、そうじゃなくて、渋沢君?」
渋沢君は珍しく顔を赤くしている。
「途中の、ちゃんと聞こえたか?」
「え?うん。多分。」
「そっか。じゃあいい。」
「はい。」
―って違うでしょ!―
「え?渋沢君?」
「ん?」
「さっき…。」
「本気。」
「え?」
「言い直す。復唱してくれ。」
「はい。」
「俺は、」
「渋沢君は、」
「 が」
「私が。」
「好きです。」
「好きです‥え。」
……‥。
「ウソだぁ!」
「本当だよ。が好きだ。今日誕生日だから、言いたかったんだ。返事が“はい”じゃなくて、“いいえ”だってわかっているから、安心してくれ。
じゃあ、俺の誕生日会場で、また。」
そう言って渋沢君はマイペースでのところを去っていこうとした。
は思考が追いつき、呼び止める。
「渋沢君!」
誤解されたままじゃ、あんまりだから。
「?何?」
は渋沢君の側に行って、恐る恐るバッグの中の包みを取り出して差し出しながら言う。
「私も、好きです。私こそ、お付き合い、してください。」
は言いたかったことを伝えた。
「それって…本気?」
「もちろんです。」
は真っ赤になりながら、そう言う。
「?」
「え?」
は顔をさっきよりも真っ赤にした。
「…。」
「プレゼントを二つももらえて嬉しいよ。じゃあ、行こうか。。」
「…。」
は立ったまま、停止していた。
「?」
渋沢君は
そんなに
再度
キスをした。
「なっ!」
「やっと動いてくれたな。さあ行こうか。」
「あ、待って。」
「なに?」
「私…なんかで、良いのですか?」
渋沢君は、一度瞬時的に驚いてから、
「もちろんです。」
と言ってにっこりとわらってくれた。
私なんかじゃ駄目って思っていたけど、
渋沢君は、
私じゃなきゃだめだって言ってくれた。
最高の幸せを手にいれた
愛しい人の
バースデーv
作成者:胡事把枝
胡事把枝様にまた頂きました!!まさかまたいただけるとは思いませんで、すっごく嬉しかったです。本当にありがとうございました。今回は私の誕生日に引き続き、彼の誕生日で書いていただけて本当に嬉しかったです。もうすぐあの人の誕生日が来る。そうしたら同い年じゃなくなるな〜。あははは。沙耶ちゃんがいい感じにお話にかかわってて素敵っすね。うふ。しかしはいを言わせるって話は素晴らしかったです。もう、告白の話をしたときは爆笑でした。そういう話がえきるのは素晴らしいですわね。いいな〜。そういう話かける人はすばらしいです。本当に楽しかったです。またよろしくお願いします(おい)
本当に本当にどうもありがとうございました。
俊宇 光
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