渋沢さんドリーム「メール 前編」
 

 

メール 前編

 

 

 

「はぁ〜」
一人ため息をつくのは19歳。
「なんであんなこと、言っちゃったんだろう…」
いまさら後悔しても、遅いか…。

ため息と後悔の原因は1ヶ月前にあった。

 

 

 

 

 

一ヶ月前…
。」
「も〜遅いよ?!克朗!」
遅れてきたのは渋沢克朗。の彼氏である。
今日は10:00に待ち合わせてデートするはずだったのに、
克朗が来たのは11:30。
「一時間半も遅刻じゃない!」

「すまない…。」
この後の台詞まで、には判った。
いつも、同じ原因だから。
「写真を撮ってくれと言われた」
「写真を撮ってくれと言われた」
同時に言うと、すごくビックリしていた克朗。
もう、判らないわけ無いじゃない。
「いっつも同じ理由じゃない!だったらどうして外で待ち合わせするの!?」
「…それは…。」
言いにくいなら、言ってあげるよ。
「ど〜せ、私の家とか?克朗の家とか行って、撮られたらスキャンダルだからでしょ?
 外であってるだけなら、同級生と仲が良くて、遊んでいただけ!って言えるもんね。
 実際そう答えてるものね!」
その度にどれだけつらい思いをしているか、あなたは知っていますか?知りませんよね?
あなたがそう答えると、質問した記者の人達は、そうでしたか。って納得するの。
似合わないものね。そんなの、わかってる。

やっぱりワタシハ、アナタニ、フタンヲカケルダケだったね。

もう限界に近かった私に追い討ちをかけるように、
克朗に一人のかわいい女の子が近寄ってきた。
「あの〜日本の守護神渋沢克朗さんですか?」
「え…ま、まぁ。」
「キャ〜写真撮ってください!」
「えっと…。」

克朗は私に向かって意味深な視線を投げかけるけど、私は無視。
コレがラストチャンス。

「撮ってくださいよ〜。1枚でいいですから!」
「いや…その…。」
「撮ってください〜!!お願いします。」
深々と頭を下げるその子。
「…一枚だけな。」

 

 

 

 

 

 

はきびすを返して、自分の家に向かう。
押しが弱いあなたも好きだったけど、あなたは押しに弱すぎる。
私の前で、写真撮ってあげるの了解するんだもの。

「お、おい!?!」

聞こえない。聞きたくないの!
は走って家まで向かう。
扉はすぐそこ。
「っわっ?!」
すぐそこだったのに、腕を掴まれて中に入れない。
「なっ?!何よ!」
振り返るとそこには息を切らせた克朗。
「それはこっちの台詞だ。急に走り出してどうしたんだ?」
どうもしていない。
もう、無理な、だけ。

「なんでもないわよ!それよりココは私の家よ!」
「大丈夫だ。」

何が大丈夫なの?
中に入って無いから?
だから、大丈夫なのね?
は涙を流しながら、力いっぱい克朗を突き飛ばす。
「ぇっ?ぅわっ?!」
ちょっとよろめく。
そのすきに急いで鍵を開けて、家の中に入る。
「ぇ。ちょ!!!?」
急いで鍵をかけてチェーンを閉める。
ドンドンと扉を叩く音が聞こえる。
!」
そう呼ぶ声も。
それを無視しては泣きながら、ベッドに横たわってメールを打つ。

―ごめんなさい。
 もうあなたとは付き合っていけません。
 別れます。
 私の事なんかはやく忘れて
 別の人と、幸せな人生を歩んでください。
 さようなら。―

そして、急いで携帯のメールアドレスを、変更した。
_l_k.s@~~(_love_katsuro.shibusawaの短縮)だったのを、
pleasure_treasure_@~~(pleasure_treasure_の短縮)に変えた。
pleasureとtreasureはの好きな言葉。
彼と、まったく関係のないコトバで思い付くのが、それだけだった。

!どういうことなんだ!おい!!!」

似合わないことを実感して
押しが弱いあなたを実感して
私の事なんてどうでも良いように感じたの。
もう、限界です。

あなたを愛している。
この思いはずっと心にしまいます。

そしては人生でたった一回しか言わないだろう言葉を叫んだ。
「渋沢くんなんて、大っ嫌い!!」

渋沢君なんて、どれくらいぶりだろ?
大っきらいなんて、もう二度と言わない。
言いたくない。

さよなら。
一時でも、私を好きだと言ってくれた、my treasure...

世界で一番、大好きでした。

 

 

後編に続く


続きます(笑)感想は後編で。