渋沢さんドリーム「それぞれの夏」
 

 

それぞれの夏

 

私の大切な人…
あなたがいてくれて、よかった。
愛してる…。

 

私も20才になっちゃったけど、
今まで、すごくたくさんの事があったね。
どれもこれもが、私の大切な宝物…。
だって…大切なアナタの事が、たくさん入った想い出だもの。
大切な宝物に、きまってる。

外では雨がたくさん降っているわ。
昔なら、センチメンタルな気分になってみたり、感傷的な気分になってみたりしてた。
特にこんなにたくさんの雨が降り注ぐ日は…。

 

…中学2年。夏―

 

雨が降り注ぐ。たくさんの…たくさんの雨が…。
傘はバッグに入ってる。
これだけ強いと、ささないと絶対に風邪をひく。
それくらいのことはわかっていた。
これだけ強いと、ささないと、親に怒られるかもしれない。
それくらいは考えられた。
だけどあえてどしゃ降りの中、私は傘をささずに、一人歩く。
雨が降るなんてしらなくて傘を忘れた人はたくさんいて
ビニール傘をコンビ二で買わなきゃいけないほどの雨だから、コンビ二が繁盛してるのを横目で見ながら
一人、歩いていた。

途中で一人の女の子に会う。
小さな、女の子。店の前で、たたずんでいた。
ところどころ、ぬれている。

「どうしたの?」
声をかけたのは、きっと偶然。
「…」
何も答えない。
「傘…ないの?」
「…」
ただうつむくその子。
「何も話してくれないんじゃ、わからないよ?」
わかればそれなりに、あなたを助れられる。

「あるいて、きたの。」
「うん。」
「そこのおみせに、ようがあって、」
「うん。」
「だけど、出てきたら」
「うん。」

なんとなく想像できる。
私はそれを、やられた事が…学校の中であるもの。
「私のカサが、なくなってたの。」
「全部探した?」

そんな事言ってみるけど、答えなんてわかりきってる。

「うん。何度も探した。だけどないの。お母さんのカサで…」

私も探しても探しても、探しても無かった。それは私の傘だったけど…
そして見つかったのは、次の次の日くらい。
泥まみれで…壊れてた。
親にはなくしたと、嘘をついた。
実際最初は嘘じゃなかったから。

この子の傘はきっと理不尽な、心の冷たくて狭い人に盗まれてしまったから、
何の罪も無いこの子を、
ほんの少しだけ自分と重ねたこの子を…
助けてあげたかった。

「普通のおっきいカサ?折りたたみ?」
「おりたたみ。」

家からなら、普通の傘なんじゃ無いの?
なんて冷静なつっこみをしてみたり。

「色は?」
「黄色っぽいんだけど、もうちょっと…さみしい感じの。」

まさかこんな色?

「こんな色?」
「うん。でも…」

あなたが取ったの?
その目はそう私に聞いている。
だから

「違うよ。だって私は濡れてるでしょ?
学校からここまで濡れてきたの。だから、取ってないよ。これは、私の。」

書いてある名前を見せる。

「ほんとだ。ごめんなさい。」
「気にしなくていいよ。ちょっと待ってね。」

そう言うと私はすでにびしょびしょになったバッグの中から、除光液をとりだして、
ティッシュにつけて、油性ペンで書いてある私の名前を消すの。
ほら。私はいなくなった…

「はい。おまたせ。」
「え?え?」
「新しいのじゃなくてごめんね。それ、あげる。」
「でも…名前…。。返しにいく!」
「いいよ。大丈夫。あげるよ。じゃあね。濡れないで…あなたは帰って?」

それだけ言うと私はまた帰路を進む。

思いだしたのは中1の頃の寂しい記憶で…
それ以外にも思い出していって、、
私は…っ。
泣きそうになるのをこらえながら、
思いだしたのは一筋の光。

彼だった。

 

…中学1年。夏―

 

泥まみれの傘を見つけて、壊れた傘を見つけて…
だけどそれは思いいれのある傘だったから
洗って大切に、大切にしようと思っていて…
洗ってた時…

「なにやってるんだ?」
「…誰?」
「…渋沢克朗。君の隣のクラス。」
「渋沢…くん?」

記憶の糸をたぐりよせて、一人の人物がヒットする。

渋沢克朗。
1年にも関わらず、武蔵森のサッカーでレギュラーを取って
守護神として活躍しているスーパープレイヤー。
笑顔が素敵だとか、優しいとかで、女子の人気は
おなじく武蔵森のサッカーでレギュラーを取って
活躍している私と同じクラスの…………………。

「なんていいましたっけ?私と同じクラスの、サッカーくんは」
「?・・・あー。三上のことか。三上亮?」

あ。そーだ。
おなじく武蔵森のサッカーでレギュラーを取って
活躍している私と同じクラスの三上亮とほぼ並ぶ。
とかなんとか…。

「で、そのサッカー君が、私に何の用でしょう?」
「いや・・・傘を洗ってるみたいだから、何をしてるんだろうって…」
「傘を洗ってます。わかってるじゃないですか。もういいですよね。」
「ちょ」
「まだ何か?」

「いらなかったら…いいんだけど…」
「?」

私に差し出されたのは、傘のチョコレート。
「??」
「3年まで頑張れば、多分接触しなくてすむだろうから、それまで頑張れ。」

 

あー。ようするにこのサッカーくんは…
「知ってたんですね。何もかも。」
「・・・まぁな。」
苦笑したのは、どういうわけでしょう。お兄さん。

「アリガトウゴザイマス。アリガタクイタダカセテイタダキマス。」

「片言だな。随分。」

「片言にしないと笑っちゃいますって。だって…サッカー君が、傘のかわりにチョコレートを買ってくれるんですから。

“緑茶がでてくるかと思いました。あなたそういうの好きそうだから。”と続ければ、
“考えたんだけどな…、飲むならあるが。”って真顔で返されて、どうしていいかわからなくなった。

とりあえず、用件をすませた彼が去った後、彼がくれたチョコを食べながら、
初めて泣いてみたりなんてした。

今まで泣かなかったのに。

初めて泣いてみたりなんてした。

 

…中学2年。夏―

 

その出来事があって、必然的?に彼を好きになった。

彼は本当に光だった。
生きるための、光になった。

 

中学2年になって、渋沢くんと同じクラスになって、
いじめをしてた人は、違うクラスになってくれた。
偶然と言う名をもつそれに、私は心からの感謝をする。

どしゃ降りの雨の中で、一人にこにこと笑う私…
しかもどしゃ降りにも関わらずにゆ〜っくりと歩いてて・・・
危ない人みたいに、きっと見えるんじゃないかって、思ってみたり…

なんとなく、前で振り返った人が、私の光に似てて・・・嬉しくなってみたりだとか…
幸せって・・・こういうふうのかな?なんて、思ってみたりもして…

「傘は…持ってたみたいだな。」
ほら…声がそっくり…。
「・・・?!」

本人に見えるんですけど…。

じっくりと眺めてみると、やっぱり彼本人で…。
そんな見ないでくれるか?なんて苦笑されてしまう。

「はい。」
そういわれて差し出された彼の傘。
「いいよ。今傘をさしたくない気分だから。」
「じゃあ俺も閉じようか。」
「え・!だめ!!」

あなたには…濡れて欲しくない。
「じゃあ、入ってくれるよな。」

なんかどっかで見たよ。このシチュエーションを…。
いや、見た。うん。見たことある。。(ご、ご、ご、ごめんなさい〜〜〜)

「…はい。」

「どしゃ降りなのに、雨に濡れたい気分なのか?」
「……。」
説明できないのよ。この気分は。
「今回は傘があるのに。」

「え?」
今回は?

「前回は、無かったけど、今回はあっただろう?今は・・・ないみたいだけど?」

見てたんだ…。

「じっくりと、みさせてもらいました。」
そう言う彼が、すごく、なんだかすごく、面白くて、
濡れたかった気分は、雨と一緒に、流れてしまった気がした…。

寂しいなんて思って無いって思ってたけど、やっぱり寂しいと思ってた私を
見つけてくれた。

すごく
すごく…
嬉しかったよ。

 

好きです。
あなたが好きです。

だから誰よりも・・・幸せになってくださいね。

そして今まで通り、誰よりも、
頑張ってください。

 

…20才。夏―

 

雨が…あがったよ。
…虹がでるかな?

私がいたこと、覚えててくれたら、
嬉しいんだけどね。

そういえば…あの日も…虹が出てたね。

 

…中学3年。夏―

 

その日は雨が降ってたけど、ちゃんと傘を指したの。
雨に濡れて、楽に慣れる時もあるけど、
雨に濡れて、逆に余計寂しくなるときもあって。
その日はそうだったの。

 

しばらく一人で歩いてて、
やむかな〜って思ってたら、
声をかけてくれたの。

「今度は、ちゃんと・さしてるな。傘。」
「さす時と、ささない時があるの。ささない時の方が、めずらしいんだから。」

そうか。って苦笑されても、困るんだけどな。

「そろそろ、やむね。」
「虹が…出るかもな。」

虹は、かけ橋。
何かと、何かのかけ橋。
私にとっては、流れ星…的な時も、ある。

お願い・・・してみようかな。
虹が…でたら。

 

「わ・・・綺麗。」
「綺麗だ。な。」

手を組んで、
目を閉じる。

 

どうか…どうかあの人が…
あの人が幸せで、あの人の夢が…実現しますように。

目をあけても、まだ虹は広がっていて、空に綺麗にかかっていた。

「何してるんだ?」
「な〜いしょ。」
不思議そうな、彼に、おどけて返して見せる。ついでに笑顔もつけようか?
でも、内緒。
だって願いは、人に言ったら叶わないんだもん。

願ってるって事すら、あなたには内緒にしたいな。って思ったから、内緒。

 

…20才。夏―

 

雨上がりじゃないと出ない特別なもの。
雨上がりでも出ないかもしれない虹。
その虹は七色の架け橋を空にかけてくれる。
そんな神秘的なもの。
それに加えて雄大。

そんな雄大なものを私は知ってる。
それは

華火。
本当は花火だけど、それはそれ。これはこれ。
同じものだけどね。

夏にしか見れないもの。
だけど、ヒトが作り出せるきれいな華。

なんで主に夏にしかやらないんだろう?って考えたことがないといったら嘘になる。
もっとみたいと。私はよく思うけど。

そんな華火にも、また思い出がたくさん。
ねぇ、あなたの、思い出だよ。

 

…高校1年。夏―

 

私はそのまま高等部に進学。
私には大の仲良しの友達が出来た。
芯崎洸ちゃん。もと桜上水で元気で明るくて、桜上水の風祭将くんが好きだって言ってた。

今、将くんはすごく頑張ってる。すごく大変なのも、よくわかる。
だからね、私も頑張らないと、負けちゃうから、頑張って勉強とか、スポーツとかやりたいの。
将くんが帰ってきたとき、胸はって、好きですって言えるように、私も頑張る事にしたの。

そうやって洸ちゃんの頑張りを聞いた時、私はすごく感動して、今までの事を、洸ちゃんだけに話した。
何も隠さず(隠せなかったりもするけれど)、私は洸ちゃんと、良く話した。

「洸ちゃん!!」
「うぇ?どうしたの?。」

洸ちゃんと過ごすようになってから、沢山話して、沢山笑うようになった私。
話しかけるのも、珍しくなくなった。
そして今回は…

「お祭り?!」
そう。お祭りの誘い。
一緒に行きたいなぁって思ってて、誘ってみた。

「ハナビあるの?!」
「あるよ。あるよ〜〜!!」
「じゃあ、行こうか!!」
「約束ね!!」

というわけで決定。

…当日…

「友達とお祭り行ってくるね〜。」
「…?」
ニッコリと笑った笑顔が、すごく怖いのはなぜでしょう。。お母さん。

ジリジリと詰め寄られて…

「ちょっやめてってば!時間ない!…きゃあ!おか・・・苦しい〜・・・・・・・にゃ〜〜」

 

「出来た。行ってらっしゃい〜。」

 

 

待ち合わせ場所にダッシュ。
「ご、ごめぇん。」
「わ、可愛い!!その“浴衣”」

 

そうなんです。無理やり着せられました…。。その旨報告すると、
「へぇ〜。でも私も浴衣だからいいじゃん。ね!」
そうなんです。洸ちゃんも浴衣を着てた。なんか洸ちゃんかわいいから比べられるとちょっと。って思うけど、あんまり気にしない事にして回る。

たくさん回って、お腹いっぱいになって。そして華火があがる時間になる。

「楽しみだねぇ。」
「私は胸に響くのが好きなの〜〜!!も綺麗!」
「うん。」

話をしているうちに、ど〜んって大きな音が聞こえる。

「「わぁ〜〜〜」」
「「おぉ〜〜〜」」

 

「「「「ん?」」」」

 


さん?」
って声でぱっと横を見る。

「おぉ〜。渋沢氏!サッカー部と一緒かぁ〜。残念。。」
「??」

そうなんですね。渋沢氏をはじめとしたサッカー部がいた。
びっくりして見つめてしまったけれど、華火の音で我にかえり、華火にまた熱中。

大好きな華火を、大好きな友達と、大好きな…あなたと。見られて、幸せだったよ。。

 

「にしても、さん達も来てたんだな。」
「うん。似合うかな?」

ちょっとおちゃらけて、聞いてみる。特に気にも止めないで、さらって出たことばだった。
のに、
「あー。すごく、よく似合ってるよ…」
「へ?」
「あ。」

まじまじと見つめると、いつもとは違うあなたの顔
ほんのすこしだけ、期待をしてしまいました。

 

…20才。夏―

1年目はこんな感じだったね。2年目も同じ。
3年目は少しだけ違った。

洸ちゃんが、桜上水の人達と出かけてしまうと言ったため、一人で回らざるを得なくなった
はずだったのにね。

・・・高校3年。夏―

「えーー。」
あわてて口を押さえられる。でも、大声をあげたくもなる。

「だ・か・ら、今年は桜上水の子達と一緒に行く事になったんだってば!」
「どうして私も一緒にまわっちゃ行けないのよ〜〜!!」

周りでは『さんが大きな声で話をしている』っていう冷やかしの声も聞こえる。
でも、あまり気にならなかった。だって最重要事項は、

夏祭りに行けるか、否か。なんだから!!

「だ・か・ら、今年、私は、と、一緒に、夏祭りに、行けないの!!」
「だから!なんで私が一緒にまわっちゃいけないのよ!!」

二人で言い争う。
それに誰かが加わったのも知らないで。

 

さんひとりなんだ。」
「そーだよ!ひどいと思わない?!」
「まぁな。なんで一緒に回らないんだよ。」
「あんたは関係ないでしょ!むしろ引っ込んでろ!」

「だいたい!」
「じゃあさん。オレといこう。今年オレも断られたんだ。」
「別にかまわないけどさ!なんでよ!洸ちゃん!!」
「無理だって言うのは無理だってば!せっかく渋沢氏が誘ってくれたんだから!あんた二人で行けばいいでしょうが!!」
「渋沢君が凡人の私を誘う分けないでしょ!!」
「でも今……って渋沢氏?!!!」
「いるわけ…って渋沢くん?」

二人で驚く。
なぜかっていうと渋沢くんの介入に二人とも気づかなかったから(気づけよ)

「じゃあいいじゃない。さっきの渋沢氏なら、二人で行けば?」

 

結局断ろうとしたけど(だって心臓持たない!)オレと行くのがそんなに嫌なのか?と問われれば、行くしかないでしょう。

…20才。夏―

てなことも、あったよな。うん。

二人で回って、楽しかった。途中サッカー部の人に逢ったりもして。
華火も…綺麗だった。
気持ちも、優しくなれた。
だって・・・・あなたと一緒だったから。

 

普段かかえてる悩みも
時々見せてしまう悲しみも
あなたの前ではよく見せられる笑顔も
あなたに届かない事で感じる痛みも
すべてが私にとって大切な思いでで
思い出になんて…したくないもの。

だけど時は過ぎ去って
遠く遠く…なってしまう。

 

あなたと生きたいって言ったら…困るよね。

 

 

そして今年も、あなたの誕生日がやってくる。

 

手帳にはただ、誕生日。としか書いてない。
誰の?って言われて、困った事があるから。

会いたいな。
でも、大学と、Jリーグで、手一杯だよね。
わかってるよ。
会いたいなんて言える関係じゃないことも。

 

 

Trrrrrrr
突然なる家の電話。

「お〜い!電話。」
受話器を押さえて言うのは、1個下の葵。

受話器を受け取る。
『もしもし?』
『ツーツーツーツー』
『?』
「葵、切れてるよ?」

「マジで?…本当だ。」
受話器を私からひったくった葵は切れて居る事を確認。

「あのさ、高校の時の連絡網ちょっと貸して。」
「??……はい。」
引っ張り出してきたのは、1年の時の連絡網。受け取ると、一通り見てから首を横にふる。
「あ〜違う違う。3年の!」
「??」
私は引き出しに入れてあったソレを葵に渡す。

「これこれ。っと…」
連絡網を見ながらどこかに電話をかける。
あっち行ってて。と手で合図される。
…葵の分際で…

!!」
「…葵の分際で…」
呼びすてにすることなんかめったにないのに、葵は私を呼びすてにして、受話器を私に押し付ける。

「もしもし…さんですか?」
「?えぇ。そうですけど、どなたですか??」
「オレ…覚えてるかな?高校の時、同級生だった渋沢克朗。」

「…もしもし?」

受話器から聞こえてくる声に反応できないでいる。だけど、なんとか声を絞り出して…

「渋沢くん??ど、うして?」
「ん?オレ誕生日近いんだ。」

―知ってる。知ってるよ―

「だから、いろんな人に声かけてるんだけど…さんは、彼氏がいるから無理だな。すまなかったな。」
「は?彼氏?誰が?」
少し無言になるが、彼は私の笑いのツボを綺麗に付いた答え方をしてくれる。
「さっき出た奴。」

「ぷっ…あはははははは!!」

笑い出したらとまらない。
受話器の向こうで困った顔をしている彼。
今教えてあげてもいいんだけど、後でにしよう。

「っごめん。。でも、論より証拠って言うから、パーティー、開くんでしょう?」
「あ、あー。」
「じゃあソコにつれてくよ。文句ないよね。時間は?」

 

と、言う事で、葵をソコに連れて行く事にして、私はウキウキしながら数日を過ごす。

 

―7月29日―

「ここだね。」

「なんでオレまで行かなきゃいけないんだよ。」
「あんたが私のことを、名前呼びするからいけないんでしょうが。」

葵を適当にあしらって、私は会場へと足を運んだ。

ちょっとしゃれた場所で、立食パーティーっぽいことになっている。
渋沢くんのサッカーのチームメイトもいる。

「あっ風祭選手だ!オレサイン!!!」
葵は将くんのひたむきなプレイが好きらしく、サインをねだりに行こうとしたが、私は服を掴んで止める。

「んなもん、後ででいいの!いくらでも洸ちゃんに頼んであげるから!行くよ!!」

ということで、葵の腕を引っ張って、渋沢氏を探す。(ハタから見れば腕を組んでいるように見えるその格好…)

「あ!渋沢くんだ!」

誰かと話をしていたから、終るのを待って話しかける。

ちなみに葵は1個下だが、タメ位にしか見えず、より背が高い(もちろん渋沢くんよりは低い。)

「久しぶり。だね。」
「あー。で、こっちが例の…」
「うん。ほら。」
「はじめまして。葵です。」
「説明になってないじゃない!!」

葵は真実の関係を言おうとしない。

「意味ないじゃないよ。んとね、葵は私の…」
「わーさんじゃないですか!」
「?あ。将くん。」

振り向くと将くんと、洸ちゃんが居た。
さんの彼氏ですか?」
「違う違う。葵は私の…」

「どっかで見た事ある気がするんだけどなぁ。」
と洸ちゃん。
なんで本当のことを言おうとすると、こんなに邪魔が…

「渋沢選手。」
ふと口をひらく葵。
そしてやっと真実をつげてくれると思った瞬間の事だった…
はあなたには渡さない。」
「…葵?」
「オレはいただきたい。」
「・・・渋沢くん?」

なんか葵と渋沢くんの間に火が少し見える。。

 

はオレのもんだ!!」
「あああああああ!!!思いだした!この人!!

 

 

 

 

 

 の弟だ!!」

 

 

 

静まりかえる会場。

 

「ちぇ〜ばれちゃた。ま、いっか。渋沢選手。いつも姉がお世話になってます。葵です。」

渋沢くんはビックリ箱をあけたようになっている。
別にそんなに驚くような事でもないと思うんだけどな…

 

そのあとはもう普通に立食パーティーを楽しんだ。

「じゃあオレ、風祭選手ともうちょっと話してから帰るから。、気をつけて帰れよ。」
「うん。あんたもね。」

 

さん。」
呼びかけられ、振り向く先には、あなたの顔。
「送っていくよ。せっかくタメになれたしな。」

ようするに私の方が誕生日が早いからってコトらしい。私はとりあえず、おことばに甘える事にする。

「両立は大変?」
話しかけてみる。大変じゃないといったら嘘になると思うけどという以外に、楽しいという答えをくれる。
「楽しいの?ま、そっか。」
「楽しくなきゃ、やってないしな。それに、高校を卒業してからは、精神も鍛えられた。」
「そうだよね。大学に入ってからだもんね。プロ。」
並大抵の努力じゃないコトを、私は知ってるよ。
「ま、そうじゃないんだけどな。そういうことにしておくよ。さんは?さっきの弟なんだろ?彼氏は?」
話しをそらすかのように、彼は私に話題をふる。

「雨が…降り続けば、いいのにね。」
そうしたら、そうしたら…
あなたが側に居てくれる気になれるのに。
「晴れてるから、傘がさせない。」
晴れてるから、傘をささないで、あなたは走っていっちゃうんだよ。
「雨が降り続けばいいけど、たまにはやんでもいいかもね。」
やんでくれて、もし虹が出たら
「やんでくれて、もし虹が出たら、見る事が…できるのに」
過去の思い出。楽しいばかりの、過去の思い出を。
「だけど、実際には雨は降らないんだよ。ずっとず〜っと。晴れてるの!」
そう。アナタの未来は、明るい。

「だから、いくら降って欲しくても、しょうがないって・・・仕方が無いって…これでいいんだって…思えるんだよ。」
「それって…?」

「ナ・イ・ショ。あ!!」
「え?」

ガサゴソとカバンをあさって、彼に渡す。
会場で渡したら、ダンボール箱に詰められるから、嫌だったもの。

「コレ…」
うけとった彼は、すごく驚いた顔をしている。
別にあげたっていいじゃないねぇ?

 

贈り物。プレゼントだよ。

 

 

「渋沢くんは、まだ、まだ、輝ける。頑張って!

 

 誕生日、おめでとう。」

 

 

「…ありがとう。

オレ、ずっと気にかかってた女の子がいた。なにかしてあげたいと思っても、何も出来なくて悔しくて、それでいて、何かしてあげたかった。ずっと一緒で嬉しくて、絶対に守りたいって思ってた。だけど2年近く逢えなくて、だけど、逢いたくて。それでおもいきって誘って、誘って…でもその女の子は強くなってた。2年で、その女の子は強くなっていたんだ。そしたら、自分が小さく見えた。もっと頑張らないとって…もっと頑張って、頑張って、そしたら、そしたら、迎えに来ようって。決心したんだ」

 

さん。君が好きだよ。誰よりも。結婚したいって思ってる。
だけど今のオレじゃダメなんだ。君につりあわない。だから、君につりあうまで、オレと付き合って欲しい。
いつか頑張ったって、思えるようになって、君につりあう時が来たら、必ず君をさらってくから、それまでオレと、付き合ってください。」

 

 

「それまでって・・・つりあったら付き合っていけないの?」
「論点が違う気もするけど…つりあったら、結婚してください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私と、付き合って・・・くれるの?」

「もちろん。婚約も、同時にしてほしい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はい。」

 

 

 

「じゃあ、手始めに、明日の試合のチケット。」
「え?」
「結局、こっちにも来て欲しかったんだ。最前列とってあるから。もちろん、ゴールの近くの。」

「っ絶対に行く!!」

 

 

 

 

 

 

この先、何がおこるのかわからない。
私にも、あなたにも、日本にも、地球にも。
だけど、
だけど、ずっと一緒に居たら見えてくる、結婚って所まで、

 

 

あなたと歩いていけたなら、

心から幸せだって…私は思える。

 

 

7月29日、あなたに逢えるきっかけになった日。

 

 

あなたに、幸あることを願います。
そして、できれば

 

 

私にも、訪れますように。

 


胡事把枝様にだいぶ前にいただいておりました。
すいません。渋沢さんの誕生日にといただいていたのにあたしってば忙しさにかまけて更新もしないで。本当に申し訳ありませんです。やっとこさ日の目を見るころには3ヶ月もたってるという恐ろしきかな。すいませんすいません!!!でもちゃんとあたしは読んでますから!!!!
というか本当にもう、あたしが渋沢さんを読むのはこうやって胡事様が書いてくれるからですよね。あぁ本当に。未だに彼を愛し続けるのは彼女の影響もあり。いやいやなくても1番大好きですけどね。
今回はやっぱり渋沢さんの誕生日ということもあって夏がテーマとなりました。タイトルをどうしようかなぁと思いこんでいたんですが、処理をしながら夏夏夏夏といっぱい夏の文字を見るのでよし夏だ!と思い、さらには高3とか、20歳の夏とかいろいろでてきたので、じゃあそれぞれの夏ということで、と相成りました。お気に召さなかったらすいません(汗)
本当に毎回ありがとうございました。

俊宇 光