言えなくて…
「ずっと言いたかったけど、言えなかった。」
今のところ反応ゼロ。
「だけど、言いたくて…言いたかった。」
まだ無反応。
別に反応が見たいわけじゃないけど…。
時間が無いから、急がなきゃ。
「だけど、言わざるを得なくなった。」
「え?」
息を大きく吸い込む。
「今日でさよなら。なんだ。」
「…え?」
目を大きく見開いている。
そんな姿も、そうじゃない姿も、、見るのは今日で最後。
私、は2ヶ月前に武蔵森に転校してきた。
武蔵森にいる期間は2ヶ月。
皆にも言わなかったし、先生にも口止めした。
今日という日が来ても、絶対誰にも言わないでくださいと。
つまり私は2ヶ月間だけ、武蔵森に転校した。という事になる。
実際、そう言うことが出来る人はいないと思う。
だけど、いろいろとコネ?があって、、まぁ実現したのだ。
転校初日。
私はドキドキしていた。
たった2ヶ月。されど2ヶ月。
楽しく過ごしたいと思うのは、当たり前でしょう?
「はじめまして。です。」
その言葉で私の武蔵森での生活は始まった。
始まってすぐに友達が出来た。
小佐々由岐ちゃん。
一緒に笑って、一緒に御飯食べた。
そして、由岐ちゃんが、三上亮くんという男の子のことを好きなのも知った。
「だから協力して?」
といわれて、何がなんだかわからずに、Yesの返事をしたのは私。
その日、私はサッカー部に連れて行かれた。
サッカー部が練習しているところまで行く途中、
「マネージャー手伝って」
このように由岐ちゃんに言われた。
マネージャー?
2ヶ月しかいないのに…
でも思いなおす。
たった2ヶ月。されど2ヶ月。
いい思い出を作りたい。
私は一生懸命働いた。
その中で渋沢克朗君というキャプテンに出会う。
渋沢くんは三上君と同室。
だから、由岐ちゃんが寮の部屋に三上君に会いに行くとき、
渋沢君が邪魔なんだって。言っていた。
だから私は、皆があこがれる渋沢克朗君を外に連れ出していた。
ドリンクを配る時も、由岐ちゃんが三上君に渡せるように、一生懸命頑張った
すると、大抵私は、渋沢君にドリンクを渡していた…。
必然的な結果だったのかもしれない。
でも私は必然的でもなんでもかまわない。
渋沢克朗君に恋をした。
二ヶ月って長いなぁと転校当初は思っていたけど、
マネージャーをやってから?
渋沢君に恋をしてから?
私は2ヶ月をかなり短く感じた。
ずっと言わなきゃと思っていた。
だけど言えなかった。
「ずっと言えなくて、、ごめんなさい。
由岐ちゃん達にも、説明しておいてね。
あと、これを渡して欲しいんだ。」
「手紙を…小佐々にか?」
「うん。じゃ〜ねっ!」
「おいっ」
止めるのも聞かずに走り出したわけじゃない。
止めるのを聞けなくて走り出したんだ。
明日転校するって事実は嘘じゃないけど、
明日はもう学校には行けないんだ。
今日だってお父さんが、迎えにきているんだ。
ごめんね。
『何もいえなくてごめん。
楽しかったよ?
大好きな、大好きな由岐ちゃん。
頑張って、告白してね☆
私が見た限り、大丈夫だよ☆
ごめんね。』
ちなみにこれが手紙の内容。
とりあえず私は涙を流しながら、彼から去った。
告白、出来なかったけど、しょうがないんだ。うん。
「ん…」
は目を覚ます。
「懐かしい夢…。」
は現在22歳。
武蔵森を去ってから何年たっただろう…。
あの頃の夢を見るのは久しぶりだった。
あのときの武蔵森のメンバーは、今、ものすごい活躍をしている。
三上くんも、笠井くんも、藤代くんも、…
渋沢君も…。
活躍してくれたから、
由岐ちゃんの告白が成功して、三上くんと結婚したのも知っている。
「あ!しまった!」
私は急いで跳ね起きる。
私には今日は絶対に、行かなければならないところがある。
用意して、電車に乗り、大きな建物の前に立つ。
これからこの中で、サッカーの試合が行われる。
武蔵森でマネージャーをやったから、サッカーを好きになった。
そのことは認めるけど、私はそのために、この試合を見に来たわけじゃない。
今日は、あの時の…
私が武蔵森に転校した時期の武蔵森のメンバーと
あのときの桜水中?のメンバーが試合を行うのだ。
言わずと知れた超!!!!!!!!!!豪華メンバー!!
ワールドカップにしかそろわないだろう最強のメンバー達が、
サッカーをするのだ。
もちろんチケットは不況にもかかわらず馬鹿売れ。
で、なんで私がそのチケットを持っているか。
それはお父さんからもらったのだ。
転校した後、私は沈みっぱなしだった。
そのことで、お父さんは結構心を痛めていたらしく、
“お詫び”だそうだ。
何はともあれ、私は試合会場に、足を踏み入れた。
試合は普通に進んで、前半戦が終了した。
すると、前に座っていた女の人が、フェンスに手をかけて
「亮っ!」
と、呼んだ。
―亮って…三上亮?―
「点、入れてね。」
「おーまかしとけっ。」
私はその女の人をじっと見詰めていた。
後半開始のホイッスルが鳴ると、その女の人は私の方を向いて、
また私の前に座った。
…。間違いない。
三上亮というサッカーに関しては?かなりの凄い奴と結婚した
(旧姓)小佐々由岐という女性の顔は、テレビでやっていたから、
よく知っていた。
あの頃より、もっときれいになったことも知っていた。
だから、間違えるはずが無い。
「あの…。」
私は話しかける。
「はい?」
「間違ってたら、ごめんなさい。
小佐々…じゃなかった…えっと…三上…由岐さん?」
「え?あ。はい。」
もう本当に嬉しかった。
「由岐ちゃん?!久しぶり〜〜。
きゃ〜元気だった?うまくいってよかったね☆」
「あの…スイマセン。どなたですか?」
しまった…嬉しすぎて我を忘れた。
覚えているかどうかも、わからないのに…。
「えっと…覚えてる?武蔵森にいたときに、2ヶ月だけいたです!」
「……………うそだ。」
「え〜本当だよ〜。」
「証拠は?証拠っ?」
「ん〜。あっ学生証がある。」
私は珍しく持っていた学生証を見せる。
「…………本当に、…なの?」
「うんっ!久しぶりだねぇ!由岐ちゃ」
由岐ちゃんといいたかったけど、いえなかった。
「マジで?マジで?マジで?きゃ〜亮〜〜〜〜〜〜〜!!!」
由岐ちゃんは、いきなり興奮して?どこかに去っていってしまった。
てか、親友より旦那ですか…まぁ、、、わかるけど、ひどいっ!
と、思っていると、しばらくして戻ってきた。
後半戦はあと少し。
「〜。」
「え・きゃ〜〜〜〜〜!!!!」
試合を見ている私を、無理やり引っ張って、どこかへ走る由岐ちゃん…。
私が連れて行かれた先は選手控え室。
「ここでまってて〜〜☆」
由岐ちゃんは、そう言って私を選手控え室に押し込んで、どこかに行ってしまいました。
唖然としていると、試合終了のホイッスルが鳴る。
武蔵森が勝ったらしく、渋沢君のインタビューが聞こえてきた。
そういえば、渋沢君は、いまだに彼女がいなくて、結婚していない。
武蔵森のメンバーも、桜水中のメンバーもほとんどが彼女もちor結婚済なのに…。
話を元に戻すと、渋沢君がインタビューを受けている最中、
ドヤドヤと音が聞こえてくる。
きっと彼以外のメンバーが帰ってくるんだろう。
ちょっと待った?ここどこ?
選手控え室…。
てことは、
ここに戻ってくるの〜〜〜〜???
ガチャ
入ってきたのは、笠井くん、藤代くん、三上くん&由岐ちゃん
「由岐ちゃ〜〜ん(泣)」
私は由岐ちゃんに抱きつく。
「一人にしないで。まじ寂しかったよぉ〜。」
「はいはい。ごめんねぇ。」
「あれ?由岐先輩、知り合いですか?」
「ぜんぜん見たことないってことは、最近知り合ったんですか?」
「由岐、そいつ誰?」
…
言いたいこと言ってくれますねぇ〜
由岐ちゃんは、私を離して、三上くんの隣に立つ。
「亮っ!だよ!!」
「?って、?」
「先輩?」
「本当に、先輩ですか?」
「うんっ!久しぶり〜です!元気だっ」
またもや元気だった?という言葉が言えずに、4人は扉を閉めてどこかに言ってしまった。
しかも扉がしまってから走る音が聞こえた。
またですか〜(泣)
と思っていると、
「うわっ?おまえら?」
さっきまでインタビューに普通に受け答えしていた渋沢君の声がおかしくなった。
「俺が変わります!俺が!」
「え…え〜では、、三上選手と奥さんの由岐さんにインタビューを…。
最近何か変わったことはありましたか?」
「いいの?亮?」
「ああ。」
「?あったんですか?」
「はい☆子供が出来ました☆」
一瞬静まった会場から、大きな歓声が聞こえた。
―へぇ・・・・おめでとう☆………じゃなくて、、何?―
またしばらくしてからドヤドヤと音が聞こえる。
「お前ら何なんだ?」
ガチャ
「うわっ!」
ガチャ
扉が開き、一瞬のうちに誰かが選手控え室に放り込まれた
(本当に、放り込まれたの!)
「ったく何なんだよ…。って…えっと…どなたですか?」
「あ、勝手にすいませ……渋沢…くん?」
放り込まれたかわいそうな人は、渋沢君だった。
「あの〜?どなたですか?」
見とれてました。スイマセン。
テレビで見るより格好いい〜。
「えっと、お久しぶりです。です。覚えてますか?」
「渋沢くん?」
渋沢君、目を見開いたまま、何も言わない。
「あ、すまない。えっと、君、本当に、、、さん?」
「はい。お久しぶりです・・・。
えっと、手紙、渡してくれて、ありがとうございます…」
「…」
「?…きゃっ?!」
急に抱きしめられました。
渋沢くんに…
「渋沢くん?!」
「好きだ!」
「・・・え」
―何を…言ったの?この人は…?―
「ずっとずっと…忘れられなかった。君の事。ずっと…
もう二度とあえない事、わかっていた。だけど、忘れられなかった。
すべてが…離れなかった。
俺は、、が好きだ。」
「・・・本当?」
「嘘なわけ…ない。嘘だと思ったら、皆に聞いてみろ。」
よくよく考えると、渋沢くんの言ったとおりだった。
由岐ちゃんも、三上君も、笠井君も、藤代君も、みんな、
みんな私を、渋沢君と会えるように、してくれた。
本当…なんだね…
「…………ありがと…私も…
私も、ずっと…忘れられなくて、ずっと覚えてた。
私も…渋沢くんが、大好きよ。」
私は渋沢君の背中に手を回して、返事をしました。
後日談ですが、
ず〜っと、ず〜っと、
彼女もいなかった日本の守護神、渋沢克朗が、
電撃結婚をしたそうですよ?
作成者:胡事把枝
胡事 把枝様にいただきました。私この話すっごく好きなんですよね。こういった不思議めいたシリアス話が一番すきです!!!むしろ大好きだ!!!わーいわーいってわけで、本当にどうもありがとうございました。タイトルは私が勝手に考えてしまってすいませんでした。ちゃんと許可もいただきましたのでご安心を?あははは。っていうか、これで短いんだっていうんだからすげーなー。私じゃこれは長い部類に入るですよ。あはははは。
このお話は本当にいいですよね。想いを伝えることもできず、真実も話せず、ただ、好きだった相手に結果だけを伝える。法律でいう結果無価値論のような。あははは。そういう勉強したんよ。まぁだからさ、それから何年もたって、あーいう形で出会う瞬間っていうのが、本当に、本当に素敵で幸せな時間のように感じられたって感じでうしょね。あー素敵だ。由岐ちゃんがいい味だしてます!!私がこの「言えなくて…」ってタイトルをつけたのは、上の理由もかねて、すべて、あなたに伝えることはできなかった。でもねってそういう意味をつけてます。勝手な解釈ごめんなさいでした。
本当に毎回すいません。そしてありがとうです。どうぞこれからもよろしくお願いします!!
俊宇 光
|