傷
信じることが怖い。
信じてしまうことが怖い。
でも
あなたの優しさを捨てることも出来ない。
私はいったいどうしたらいいの…
「さん」
「え・ぁ。渋沢君。どうしたの?」
私を呼び止めたのはサッカー部キャプテンの渋沢克朗。
クラスメートだし、結構良く話す。
良い友達。
それ以外の感情も少し除くけれど、私はその感情を無視している。
「ん・ちょっといいかな?」
「?いいよ。」
渋沢君が私に用があるのは珍しくないけど、
なにかが珍しい気がする。
「ちょっ、どこまで行くの?」
「もうちょっと…」
この先にあるのは屋上だけ。
いつも誰もいない。
そうだ。
誰もいないところで話をするのがはじめてなんだ。
何の用なんだろう?
屋上まで来て、彼はやっと止まった。
「さん、俺さ。」
「うん?」
「……サンのことが、好きなんだ。」
「え」
まさか
一番最初に駆け巡ったコトバはそれだった。
ねぇ、なんで?なんでよ…
でも
ごめんなさい。
私は
怖い。
「ごめん…なさい。」
涙を流しながら言えたのは、
たったそれだけ。
「そっか。ありがとう。今日は、悪かったな。」
悪くなんか無いよ?
悪いのは、私。
私なの。
私は大きく首をよこにふる。
「じゃあ先に教室に戻ってる。
涙、止まったら戻ってきてくれ。な?」
どうして優しいんだろう?
なんで優しいんだろう。
涙を流しながら、私はうなづく。
彼は寂しそうに、教室に戻っていった。
「先輩!!」
「ぇ…笠井くん…」
「どうしてキャプテンのこと!すきなんじゃないんですか?!」
やっぱりこの感情は好き。だったんだ。
「…。」
「!先輩?」
私は笠井君の肩に顔を乗せて、話し始めた。
「2年前の12月の…話よ?
私はある人からメールが来るたびに、嬉しくてドキドキしてた。
すきなのかもと思ったけど、そのまま流していた。
ある日ね、私は渡すものがあって、その人に会いに行った。
その時に、抱きしめられて、わけがわからないまま帰ってきた。
次の日、問い詰めたら?かな?好きだっていってくれたの。」
「先輩…」
「このドキドキは恋なんだと思った。だから嬉しくてね、OKしたの。
毎日メールした。だって彼氏彼女ってそういうものでしょ?
私がその人に会う場合、電車で1時間かかるから、ぜんぜん合えなかったけど、
次にまた会えるって思っていたの。
でも、それは叶わなかった。」
「…」
「なんでだかわかる?
その人が私をふったから。
2週間よ?
その間向こうから来たメールは2通くらいかな?
向こうが告白してくれたの。嬉しかったな。
私は私を好きになってくれて、嬉しかった。
でもね、私を好きだって言ってくれた人が、
2週間後、私のことを嫌いだと言った。」
「…」
「その人の前に、私は人に告白して振られた。
その人は、告白してくれたのに、私を振ったの。
だから、信じられない…信じたくないのかもしれないな。
だからもう二度と、恋なんかしないって、、思ってたのに。」
「だそうですよ?キャプテン。」
「え」
話に集中しすぎて後ろに渋沢君がいた事に気づかなかった。
「聞いてた…の?」
「あー、、まぁな。」
私は泣き崩れる。
そんな私を、渋沢くんは抱きしめてくれた。
「人を好きになるのが怖いの。
でも、渋沢君の優しさを断るのも、つらいの。」
「ああいうことがあったらしょうがないさ。
でもな、。俺は、一年の頃から君がずっと好きだったんだ。」
「え」
だって、私と同じクラスになったの、2年だよね…?
「隣のクラスにいたから、よくあった。
俺は、君を好きになったんだ。ずっとずっと前からね。
今も変わることが無い。
俺は卒業してからも、
君に会いたい。」
「…」
「こうしないか?。」
「え?」
「俺は、がいいと言うまで、に何もしない。キスも。何もね。
が、信じられるまで、おれはずっと待ってるから、君の彼氏にして欲しい。」
「し…ぶさわ…くん…っ」
私は彼の腕の中で涙を流した。
心に深い深い傷を負いました。
心の深い深い傷は、私を信じられなくしました。
そんな私の傷を、優しくなでてくれた人がいました。
信じられると思いますか?
私は、あなたならば、信じてみたいと思いました。
信じ…たいと思いました。
信じることが出来たのならば、
私はまたひとつ大きくなれると思いました。
どうか…その日が来るまで、あなたが隣にいてくれますように……。
作成者:胡事把枝
胡事 把枝様にいただきました。
うううなんだかまじ切ないお話です。人を信じることの出来なくなった少女のお話。私はまぁ昔に色々あって、人なんか絶対信用しないような人間でございますゆえ、どうにもこういうヒロインって共感持っちゃいますね。でも痛い。いや私はここまで痛くはなかったけど。ああああ。っていうか笠井くんがいい味出してます素敵ね。渋沢さんも「何もしない」宣言が笑う(笑うとこじゃない)何もしないって何かする気だったのか。うぷぷ(待て)いやいやシリアスですから笑うところじゃないんですけど、汚れた私は変な方向にね、想像が進む故ね。あああすいません。
わざわざ本当にありがとうございました。これからもよろしく!!
俊宇 光
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