想いは深く
「は〜。今日もシゲ、いないんだ。」
朝、学校に向かう道をみてそう思う。
そうつぶやいた少女の名前は。
には幼馴染の佐藤茂樹。通称シゲがいる。
彼は金髪だがサッカーに目覚めてからというもの
サッカーに情熱や愛情を注ぎ、どんなポジションでもこなすことが出来る。
金髪のフリーマンとも言われている関西出身者だ。
努力家というか、なんというか、、
とりあえず、の側にずっといた人。
そんなシゲはもう側にはいない。
側にいてくれた時にはと遊び、がいじめられれば助けて、
一緒に登校した日は数知れない…。
だけどサッカーに目覚めてからは
サッカーのことしか頭にない!という状態になってしまった。
いつも一緒に登校していたのに、朝練に出るためより先に出るようになったし
いつも一緒に下校していたのに、放課後も練習するため、帰るのはかなり遅い。
もちろん帰るときはサッカー仲間と帰る。
それが嬉しくもあり、寂くもある。
にとっては後者の思いのほうが断然強いけれども。
何よりも大きく変わったのは、シゲがとてももてるようになったこと。
サッカーをしているときのシゲはとても輝いている。
それがとても格好よくて、自分なんか…と心から思う。
そして自分が前のように接したら必ずやシゲに迷惑がかかるだろうとずっと思っていた。
は、とても寂しいけど、シゲから距離を置く事にして、それを数年前から実行に移していた。
最近、、というかここ数年間、幼馴染のの様子がかなりおかしいと思う。
おかしいというか、簡単に言うと変わってしまった。
学校の廊下であっても、俺を見ると必ず目をそらす。
そして見なかったかのように、俺の横を
スッと通る。
そしてたまに横目でのことを見ると、(気づかれると、そらされるから)
俺のことをとても寂しそうな目で見ている。
何かしたか?といくら考えても、俺にはわからない。
もうガキではないのだから変わってしまって当然かもしれないし
変わるなアホ!というようにに命令することも出来ない。
人間必ず変わっていくが、それがココまで寂しいことだとは思っても見なかった。
数年前まではよく
「シゲ!」
と声をかけてくれたが、今ではほとんど言葉も交わさない。
寂しいといくら思っていても、
何も変わらないけども…。
前のように楽しく話したいと思わずにはいられない。
シゲはいつも、自らの半身をうしなったかのような気分だった。
シゲと話したい。シゲと一緒にいたい。
そんな思いは日々深くなっていく。
けど、
何も出来なくて…
いつものように日が過ぎていった。
そんなある日のこと…
「昨日、あれ面白かったよね。」
「うん!も見たんだ〜。」
「見たよ〜。なんかところどころ、細かいところ?で面白みを発しててさ〜。」
「そうそう」
という感じで、親友の沙耶ちゃんと話をしていたとき…。
「さん。」
「え…あ。山本君。」
「ちょっといいかな?」
「?私?」
「そう。」
「別にいいけど…。」
「ちょっ!」
「え」
沙耶ちゃんはを引っ張って山本守くんから少し離れる。
「どうしたの?沙耶ちゃん?」
「山本君って言ったら、水野くんレベルの人気者じゃない。
告白されるんじゃないの?」
「私が?ありえないって。沙耶ちゃんならわかるけど、私はないない。じゃ、行ってくるね」
「お待たせ。何?」
「ココじゃちょっと…」
「?」
とりあえず私達は人気のない屋上に移動した。
「で、何?」
「っと…」
「?」
「さん!」
「はいっ?!」
「俺と付き合ってください。」
「ぇ」
私は放心状態になる…。
シゲが屋上でのんびりと昼寝をしていたとき、
誰かが入ってきた。
シゲが寝ていた場所は、見つけようと思わなければ見つけられない場所だから
シゲは昼寝を続行しようとした…
が
「で、何?」
という声に昼寝を中断して立ち上がる。
「…」
聞いた声は、幼馴染のの声。
そして
「っと…」
俺と同じクラスでタツボンと同じくらい人気のあるという山本守の声。
まさか…という想いが心をかけめぐる。
ありえないことではない。
綺麗になった…。だから。
「さん!」
「はいっ?!」
まさか…本当に?
「俺と付き合ってください!」
「ぇ」
まさか…
「…嘘やろ?」
山本を見る限り、真剣らしい…。
成績よし。
素行よし。
人気あり。
しさもバッチリ。
そんな奴に告白されたら、は…
「OK…するやろな…」
なんともいえない感情がシゲの心の中を支配する。
出て行って、「に手ぇ出すな」といいたいが…
いえない…。
シゲはやりきれない思いを抱えて
開けたままにしてくれてよかったと思いながら
気づかれないように屋上を去った。
「なんや?…やりきれんわ…ほんまに…なんやねん…」
しばらく放心状態だったが、心の中で整理しなおす。
告白…されたんだ。
山本君は
シゲよりきっと成績いいし、
きっとシゲより素行がいい。
シゲと…同じくらいの人気で…
絶対シゲよりしい。
だけど…
「ごめんなさい。」
私は…シゲが・好き。
「ごめんなさい。私…好きな人が居るから…本当にごめんなさい。」
「いや…俺のほうこそ、悪かったな」
「ううん。本当にごめんなさい。」
は教室に帰りながら
再度シゲへの想いの深さを実感する。
きっと伝えることがないだろうけど…
この想いは…大切にしていきたい。
「どうだった?」
沙耶ちゃんにすぐ聞かれる。
「告白された。」
「やっぱり?!で?どしたの?まさかシゲくんを取ったとか?」
「なんでまさか。なのよ?」
「あ〜やっぱりそうなんだ!」
「…悪い?」
「ううん。ただ、やっぱりちゃんは、シゲくんが大好きなんだな〜って思っただけ」
私も、思ったよ。
シゲが好き。
再度認識させてくれて
ありがとう。山本君
こんなで、とりあえずはじめて告白されてみた。
山本君には悪いけど…あんまり嬉しくなかった。
そしてありもしないだろう事を帰り道、考えてみる。
「もし、シゲが………ううん。ありえない…。」
ありえない…。
「ありえない…か。」
もう少しで家に着く。
そんなときだった。
「あ」
「あ」
目の前にいたまぶしい金色の髪を持つ者…。
ついさっきまで考えていた人、シゲがいた。
「…」
「…」
「…久しぶり。だね」
「そーやな。」
「……。」
シゲ、おかしい。
そう思えたのは、ずっとそばで見てきた幼馴染の特権。
「おかしいよ?どうしたの?」
「別にふつーやん。」
「シゲ。ずっと言おうと思っていたんだ」
「な、なんや?」
「怒ると言葉がのびやすいよ。“そー”とか、それでー?とか。」
まったくこのアホは。
告白されたんやろ?お前は…。
山本なら断るわけないやろーし。
だいいち、男に告白されて付き合うっちゅーのに
なんでお前はそんなに普通やねん!
そしてシゲはのちのち、自分が短気だった事に気づくのだ。
「で、俺になんかよーか?」
シゲはどうしても冷たくしか当たれない。
「なんかよーかって……別に…特に用はないけど…」
俺に告白されてつきあうことになりましたっちゅー報告をしに来たんやないのか?
俺にはもう何も言えへんか。。
…
あーもー我慢できへん!!
「用がないんなら帰るわ。ほなな」
「ちょ!シゲ・私、何かした?シゲ!!」
「…別になんもされてへんよ。
こんなトコでほっつき歩いてる暇があるんやったら、
さっさか彼氏んとこ行ったらどうや!」
「ちょ!彼氏って何よ!」
「今日告白されてたやんか!屋上で!」
「ぇ…」
「ぁ」
やってもーた。
「なんで…知ってるの?」
目を丸くしまくりながら聞いてくる…。
純粋な目に見つめられて、、そして
しゃーないな。
「今日俺もいたんよ。屋上。
よかったやないか。彼氏が出きて。
でもみずくさいやん。
彼氏ができたって教えてくれてもええやろ。」
「ちょ、っと待ってよ!なんで彼氏?」
「ぁ?お前は本当バカやな。
山本やで?
断るわけないっちゅーのが世間の常識や。」
「じゃあ私の常識じゃない。」
は?
「ちょっと待ちぃ!
整理でけへんわ。
…?
どういうこっちゃ?」
「断ったよ。」
は少しばかりため息をこぼしながらそう言う。
「断った?!もったないな。」
…。
なんや?
すっきりしたわ。
…。
シゲはまったく…。
「立ち聞きなんて失礼なことするなら、最後までしていけ!」
「わるぅございました。」
昔っからそうよ。
「早とちりも昔からのクセ。」
「よー知っとるな。
おれですらわからんのに。」
「他者から見るとよーくわかるって。」
「見ててくれたんか。」
やばっ…。
「あ、危なっか過ぎて、、もー逆に目が離せなかったわよ。」
「ほー。」
ふと気づくとシゲの顔が目の前に…。
「なっ」
「俺の身長171cmあるで?
今は俺の方が心配や。
こうしてかがまんと、と同じ目ぇの高さにならへんもん。」
こっちはそれどころじゃないっつーの!!
「ちょ!…わっ」
緊張しすぎでバランスをくずす…。
情けな〜。
これから来るであろう衝撃に備えて目を閉じる。
ガシッ
「なにやってん?」
え
目を開けると、シゲが支えてくれていた。
「あぶなっかしいやっちゃな。
ますます目ぇ離せんな。」
シゲはもしかしたらこれから、ずっとそばにいてくれるかもしれない。
だけどそしたら、
シゲが大好きなサッカーをするのに、重みになる…。
だから、決めた
「…離さなきゃだめだよ」
「は?」
「シゲは、サッカーに打ち込む!
私なんか見てたら皆に追い抜かれちゃうよ!
サッカー、、
がんばって!」
はそう言って、家に駆け込む。
もう肩を並べて
歩いちゃいけないんだ。
そしては、シゲを好きだという気持ちを押し込めて、
彼の一番のファンになることを決めた。
数年後…
は大学に通っている。今年は20歳になる。
そしてシゲのことは…
「あきらめきれないんだよね…」
とつぶやく彼女の言葉を見ても良くわかるけど、
好きだという気持ちを消すことは出来なかった。
そんなのところに一通の手紙が届いた。
ソコには熱狂的な観客達がたくさんいる。
今日は7月8日。
そしてがいるソコは…
京都。
はい。京都です。
シゲは高校卒業後、京都サンガに所属していた。
そして今日はホームでの試合…。
んで、なんで京都にいるか。
その原因は…手紙。
内容は…
へ
よ〜元気しとるか?
俺は元気やで。
7月8日にホームで試合あるから来いや。
新幹線のチケットも入れといた。
俺が金出したんやで?
だから絶対来いよ。
こなかったらどうなるか知らへんで。
もちろん俺も試合でるさかい、よろしゅ〜。
ほなな。
シゲ
とまぁこういう感じで、脅しに近い手紙を受け取り、
こうしてやってきている。
こなかったらどうなるか…知りたくもないし。
な〜んて考えていると試合スタート。
もちろんシゲはスターティングメンバー。
シゲの試合はもちろん見たことがある。
ただ、それはとても近くで、小さなグラウンドで見ただけだった。
大きなグラウンドで。
前のほうの席とはいっても遠いところから
スターとして活躍する一人のFW。
自分とは遠いところに行ってしまったと、実感せざるを得ない…。
結局その試合でシゲは2点を決めた。
またひとつ。シゲは有名になった。
試合終了後、インタビューを受けるのは藤村茂樹こと通称シゲ。
そしてシゲは関西だけでうわさになった事実にを聞かれる。
「今日、ココで婚約を発表するという話が出ていますが…!」
「え?」
もちろん東京から出てきたはそんな話は知らない。
「今日、俺の誕生日なんですよ。それで、その記念に。」
「お、おめでとうございます」
ふざけるな。
それが率直な感想だった。
中学卒業後からは、ほとんど連絡をくれなかった
やっとくれたと思って多少おびえながら来てみれば結婚だ?
何も話さないで。何も…
確かに一般凡人だけど、幼馴染のよしみで教えろ!
は怒りに震える。
そしてそれと同時に寂しくもあった。
もう何も、話してくれない事に。
が一通り考え終わると話がスタートする。
「でも実はまだ、相手に了解を取ってません。」
「は」
リポーターのぽかんとした口に私も同意。
「でも、何がなんでもその人を俺の奥さんにします。」
「じ、自信たっぷりですねえ」
「本人が嫌だと言っても、納得させます。」
その自信満々の宣言に会場は沸いた。
しかしの心はナイアガラのような勢いで悲しみがあふれまくっている
そんな考えをしている間に更に話は進む。
「んで、今から了解を取ろうと思います。」
リポーターの質問にも熱が入り始める
「で、では今日この会場にいるんですね?」
「居ます。もし居なかったらその時点で結婚決定です。」
「居たら?」
「了解をとって結婚決定です。」
おまえはバカか。
その想いがたくさんあった。
でも正確な事実がひとつ。
失恋決定
長い間秘めてきた私の想い。
さようなら。
ごめんね。
そして
しーんと会場が静まり返る。
その静けさは、誰か一人が声を上げればその周りの人が気づく位…。
ようするに、ものすごい静であった。
「さん。」
「は?」
ついうっかり。
それがこの静けさの中で命取りとなる。
「え?」
「じゃああの子が?」
やばい…
しーんと静まりかえったところで声を出してしまった。
近くのサポーターから声があがる。
そしてそのサポーター達の声にシゲもがいる事に気づく。
そしての目を見つめて真剣な目で残りの言葉を言う
「俺と結婚してください。」
「…」
は顔がほてるのを感じた。
もちろん顔はまっかっか。
「将!」
急にシゲが将君の名前を呼ぶ。
かえってくるはずのなかった返事は予想に反してかえってくる。
「はい!」
「あ!風祭将だ!」
急に観客席に表れた将に皆は歓声をあげる。
は、ぼーっとしているだけ。
「頼むわ!」
シゲがそう言うと将はのところに走ってきた。
「お久しぶりです。」
「将くん?」
「一緒に来てもらいます。」
純粋な将君に逆らえるわけもなく、手を引かれるままついていくと
そこはグラウンド。
そしてと将が出てくると歓声があがる。
そしてシゲはのところに走ってくる。
(もちろんリポーターも。カメラも。)
「さん。」
「は、はいっ?」
「ずっといえなかったけど、
俺はが好きです。
俺と結婚してください。」
夢?じゃないの?
「うそ?」
「本当や。」
思わずつぶやいた言葉に
一瞬後、答えが返ってきた。
そして
「俺はが好きや。」
そうつぶやかれる。
もちろんつぶやいたといっても会場には筒抜け。
だけど、嬉しかった。
自分に嫉妬して、むなしくもあった
だけど…
は無言でシゲに抱きつく。
「うわ。?」
「…」
「………OKか?」
そしてはまた無言で、顔を縦にふる。
「おおきに。
てなわけで、結婚しますのでよろしゅ〜。」
会場からは割れんばかりの拍手が鳴り響く。
「今日、俺誕生日やから、もらうで?」
「え」
シゲはそう言うと、を一度話すと左手の薬指に指輪をはめる。
「これでは俺のもんやな♪」
そしてシゲは
を無理やり抱き上げる。
「きゃあ!…ちょ!恥ずかしいよ!」
そして抵抗するを無視して
「幸せになります。」
そう言って控え室に向かう。
そして3分後、シゲとの記者会見が行われた
そして報道陣とサポーターが全員帰った後、
二人は誰も居ない観客席にいた。
「ばか」
「は?」
「ばか・ばか・ばか・ばか・ばか・ばか・ばか
ばか!ばか!ばか!ばか!」
「ちょ、?」
「ばかバカ馬鹿ばかバカ馬鹿ばかバカ馬鹿
ばかバカ馬鹿ばかバカ馬鹿ばかバカ馬鹿
ばかバカ馬鹿ばかバカ馬鹿」
はずっと、ばかバカ馬鹿と言い続ける。
もともと我慢強くないシゲは…
「ば…」
にキスをして、その声を止めた。
そして静かに離す。
「ずっと言えんかって、ごめんな。
でも俺、お前が告白された日ぃ、好きやって気づいて…
だけど、言えへんかった。
言えへんままきたけど、もう20やし、に会いとぅて。
もうおさえられんかった。」
「シゲ…」
「俺はが好きやから、とずっといたいんや。
だから、結婚しよう。」
「今から嫌だって言っても意味ないの知ってて言ってるなら
性格悪すぎだよ。」
「が嫌やって言うなら、まだ撤回きくで?」
「やっぱり馬鹿だよ。シゲ。」
「え」
「シゲより前から、シゲのこと。好きだったよ。」
「…そんなアホな。」
「アホじゃないもん。本当だもん。」
はとうとうなき始める
「シゲが好きだよ。今でも…ずっと好きだよ。
だから、私と、一緒にいてください。」
シゲは最初驚いていたけど、やがてニッコリと笑顔で
りょーかい
そう言った
ふぃん
胡事 把枝様にいただきました。シゲさんです。
いや〜わらかしていただきました。突っ込みどころ満載で(笑)シゲさんだと幼馴染み設定は難しいんだろうな〜とか思いながら、まぁ原作読んでない彼女には分からないでしょうね。不可抗力って方向で。そしてシゲさん試合に出る気満々みたいですけど、スタメンって最後まで分からないじゃないんかな〜っとか突っ込んでみたり。そこらご都合主義で(笑)そして将くん。学生時代に将くんのしの字も出てこなかったのに未来編でこともあろうにやたらおいしいところをかっさらい、ヒロインを拉致したのには爆笑。すげ〜。あははは。あとはヒロイン視点にシゲさん視点とかいろいろ変わっててすごいとか思いました。ドリームではまだ試してないですね。うん。
本当にどうもありがとうございました。
俊宇 光
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