飛んでいけるね、どこまでも 後編
いつも空ばかり見ている子がいた。
放課後のパソコン室のベランダ。俺は校庭から彼女を何度も見ていた…。
「おい翼、何ボーっとしてんだ?」
一緒に練習中のマサキに声をかけられる。
「別にボーっとしてなんかないよ。…あの子」
「あ?」
「いつもあーやって空見てんだ」
「…ふーん」
マサキは興味なさげに言い、練習に戻っていく。
まぁいいや、どうせ知らない子だし。俺には関係ない。
そう思いながらもなぜか、いつもパソコン室のベランダを見上げていた。
話をしてみた彼女は、やっぱり不可解で…。
空を眺める理由を聞いても、いつもはぐらかされる。
逆に意味不明な言葉を残して帰っていく。
最初は本当にどうでもよかったんだ。
だけどいつのまにか、彼女に惹かれていく自分がいた。
放課後のグラウンド、いつものようにベランダを見上げる。
そこにいた彼女はすごく淋しそうな顔をしていて…。
どうして今まで気がつかなかったんだろう。
空を見上げる彼女は、いつだってどこか辛そうだったのに。
「私…今の私がきらいなの…」
「もっと自由になりたくて…だからあの空にあこがれて…。いつも空ばかり
見てる。あの空に飛んでいきたくて…。でも、私には…”翼”がないの…」
「だから自由に生きてそうな椎名くんがうらやましくて…。あなたは…どこへでも飛んでいけそうで…」
彼女は泣きながらそう言った。
俺は、どうすればいいんだろう。
俺には…どうすることもできなくて…。
こんなことで調子狂ってる自分なんてらしくない。
なんで彼女のことでこんなに…。
そうだ、彼女には何か力を感じる…。
はじめて会った時から俺の中で何かが動き始めたんだ。
彼女は無力なんかじゃない。
こんなにも俺の心を動かしている…。
いつもの放課後のグラウンド、パソコン室のベランダ、空を見上げる彼女…。
「!!」
彼女は声に気づき、こっちを見下ろす。
「だって、自由に飛んでいけるよ!」
俺は大声で話す。
ただ夢中に…君は無力なんかじゃないって…。
「の背中には…ちゃんと”翼”がある!!」
俺には見えるよ。
真っ白い…大きな”翼”が…。
「ちゃんと持ってるんだ…っ」
ただ飛び方を知らなかっただけ。
「…椎名くん…っ」
彼女はずっと俺の顔を見つめて、俺の声を一つ一つ確かめるように聞いていた。
そして…
「!?」
彼女はベランダの柵に足をかけ、飛び下りた。
「うわっ!!」
俺の腕の中に、舞いおりた…天使…。
「…いて…」
受け止めたはいいけど、バランスを崩してそのまま後ろに倒れていた。
2人は顔を見合わせ、笑い出す。
「本当に飛ぶ奴がいるかよ…バカ…」
「…だって…」
俺は彼女をしっかりと抱きしめた。
「一緒に…飛んでくれる?」
彼女は静かに囁く。
「…ああ…」
俺も、一緒に飛べる”翼”を見つけたんだ。
飛んでいこう…君と2人で、どこまでも…。
2002.6.15.結城 沙耶
あとがき。
…てなわけで…。ふぅ。疲れました。
これはひかりんが話考えた時から自画自賛してて…「これいい話じゃねぇ!?」
って。
期待の眼差しを痛いほど浴びながら書きました。…やめてくれ…。
自分としては…あんま満足してません。表現力の無さを呪う。
でもまあ、精一杯やりましたさ…。
こんなに何度も書き直したのはじめてですよ…。よくやった、自分(笑)
書き直したのは後編だけですがね。
そうそうこれ、前編→彼女視点、後編→翼さん視点となってます。
時間の流れとかちゃんと順番になってないので、あのときこっちはこうしてて、あっちはこうしてて…みたいなのをわかっていただけると良いかと。
この話は例の名曲(笑)「翼をください」が合いますね…。
あと、バ○アスのOPの「tsubasa」とか、
すっごく明るく考えると飯塚雅弓さんの「ロマンチックだね」とか。
聞けたら聞いてみて下さい〜。
ああ…私も受験生なんだよなあ…(暗)
ああああああああああああ。(うざいぞ自分)
あああもう翼さん!!自分達二人でこの話を考えた時、まじ翼さんがかっこいい!!って感じでした。故にこれが形になっていい感じです。今自分が考えていて沙耶ちゃんに書いてもらおうと思ってるので話が好きなのはこの翼さんと、前の上原くんとこれからある桜庭くん。そして何より渋沢さんです。あはは。いやーまじ楽しみだし、期待できるし。俺なんかよりばりばり書ける少女さんですからね。ああ楽しみ。自分のは駄目駄目っすよ。あわあわ。
ってかもう翼さんがかっこいいんだよ!!自分も一緒に飛んでいこう。君と二人で…。あああああ。
本当にありがとうございました。また次回もよろしくです(笑)
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