グリーンとあたしは、会うという行為自体が難しい二人だとあたしは思う。
彼は最年少ジムリーダーだ。
つまり、毎日の仕事が、ジムでのバトルや作業になる。
かたやあたしは、お母さんとお父さんを捜索後、オーキド博士の手伝いで、ポケモンの進化についての研究に追われている日々だ。
皮肉にも、誘拐されたときに身についた知識が、生きていくのに必要な知識に変わるなんて。
「…」
あたしは思わず、自嘲的な笑みを浮かべた。
「ブルー?」
それでもあたし達は、こうして同じときを過ごす。
過ごせている…。
彼の無理のおかげで。
「…どうした?」
彼はあたしの名を呼び、あたしを撫でた。
「…ごめんね、グリーンだって忙しいのに」
それでも彼は、あたしが呼び出せば来てくれるし、突然の訪問にも、嫌な顔ひとつせず出迎えてくれる。
毎回「何か用か?」とかぶっきらぼうに聞くけれど、「あなたに会いたくて」で意味合いが通じるほどには、何度もこの会い方を繰り返していた。
「…今更だろ」
そう、今更だ。
「でも」
でも…。
「…相手できるほどには暇さ」
「…」
あたりを見渡せば、書類が数枚机の上にあるだけで、バトルを申し込むトレーナーの影はなく、締切前のようなぴりぴりした空気も漂っていない。
トキワジムは、最終ジムというだけあって、たどり着く人数が極めて少ないのかもしれない。
みんなそれぞれのジムで諦めては、ポケモンリーグを目指すのを辞めていくのだろうか…。
「だから、謝る必要性はない」
「っ!?」
本当に彼の声は、あたしを暗い考えから救い出してくれる天の声ね…。
思わず大げさに反応した後、あたしは思わず苦笑した。
「なんだ?」
彼は不思議そうにあたしを見る。
「なんでもないわ」
あたしはそう言うと、彼の首に腕を回してぎゅっと抱きついた。
「なんだよ」
彼はそう言いながら、あたしの背中に腕を回してくれる。
あぁもうほんと、全て、全てがあたしの幸せ。
「…ありがと〜!」
いつものあたしと変わらないテンションで言う言葉に、精一杯の感謝の想いをこめて。
ありがとう…。
朝から書くものではない(え)あたしの姉さんなら、もっといろいろ不安に感じてる。でも兄さんの声が引き戻してくれる。そういう話。 |