「…なんかさ、もうブルーは絶対、おまえがいなくなったら死んじまいそうだよな」
俺は今、目の前に繰り広げられる光景を見て、そう呟いた。
「…は?なんだいきなり」
彼は本から視線を上げ、しかめっ面を見せる。
「だってよぉ」
そうも言いたくなるじゃないか、この光景。
俺は暇さえあれば、ジムに邪魔をしに来ることが多い。
グリーンの彼女である、ブルーもそれは同じことで…。
そうなると、彼女とグリーンがいちゃついてるところに出くわす、なんてことも、しばしばあるわけだが…
「ブルーはおまえにべったりだよなぁ」
と普段見慣れていたって、言わざるを得ない。
なぜなら、グリーンはジムにある大きめなソファーに座り、読書を楽しんでいる傍ら、ブルーはそんなグリーンの膝を枕に、幸せそうに眠っているのだ。
まずそんな状態を許しているグリーンにも突っ込みたいし、ブルーが何ゆえ寝ているのかも突っ込みたい。
ところがだ。
もうなんと言うか、突っ込むだけ無駄だ。
聞くだけ無駄だ。
こいつらに、妙な常識は通用しない。
と、ここ最近常々思う。
でもとりあえず、聞いておかねばならぬときも。
「つーか、なんでこいつは寝てんの」
と。
だってこんな昼間に、わざわざジムまで来て、グリーンの膝を借りて!!
気にならいでか!!!
「…こないだまで、おじいちゃんの論文の手伝いをしていたんだ」
そう言いながら、彼はブルーの頭を撫でる。
あぁもう、こいつらは!!
「…んで?」
それがどうした!?
「…会うの2週間ぶりかな…」
「…」
あぁなるほど。
ブルーの中の、グリーン電池が切れたんだ。
グリーンに会わず、触れず、聞かずと三大苦を2週間強いられてたわけだな。
さらには、締切に追われて、寝ずの何日間を過ごしていたわけだ。
そういうことか…。
「ほんとにもう、絶対ブルーはおまえがいなきゃ死ぬでしょ」
グリーン電池が切れただけでこの有様じゃ、いなくなったら狂気だな。
「そんなことないだろ」
彼は、そう言いながら苦笑する。
「いやあるね」
俺ははっきりきっぱり言い切ってやった。
この光景を作り出していても、まだ疑うのか。
「…まぁ、そんな風にはさせないさ」
そうぼそりと呟いた言葉を、俺は決して聞き逃してはいない。
実際、そんな理由でこいつがブルーを甘やかしてしまうほどに、グリーンだってブルーを必要としているのだ。
ある意味、持ちつ持たれつでいい関係なんだろうな。
「…あぁもう、熱い!!」
思わずそう叫んでしまう。
「は?そうか?だいぶ肌寒くなってきたぞ?」
そう言って、グリーンは自分が着てきたであろう上着を、彼女にかけた。
「あぁもう熱い!!!」
こいつらってばもう!!
「…なんなんだよ」
彼は、しかめっ面を再度俺に向ける。
「帰る!!」
俺はそう言って、ジムを出た。
あぁもう熱い熱い!!
いやほんと熱っ苦しいくらいのグリブルをお届けしました。 |