「前から少し疑問に思ってたんだが」
そういきなり言い出したのは、ジムで仕事に追われていたグリーンだった。
息抜きに会話を求めてきた、といったところだろうか。
「…なんだ?」
俺は読んでいた雑誌を机に置き、彼を見る、
「…おまえってさ、結局イエローのことどう思ってるんだ?」
「はぁ!?」
何を言い出すんだこの男は。
「…なんか、いいお兄さんに徹してるように俺には見えてたからさ。子を想うような愛情を、恋情と勘違いしているような」
子を想うというか、妹みたいな存在的扱いか。と彼は付け足した。
「……」
俺は思わず、黙り込む。
「…え、もしかしてそうなのか?」
彼はまずいことを聞いた、というような顔で俺を見た。
「…妹?冗談じゃない…」
俺は嘲笑うように苦笑する。
「…いいお兄さんを演じてるのは、イエローがそういう俺を望むからだ。イエローはたぶん、俺をいいお兄さんとか、憧れの存在くらいにしか見てない気がするから」
イエローと俺はどこか似ていて、むしろ俺よりかっこよくて。
でもいつだって、「レッドさんはすごいです」って笑ってくれるから、それに支えられて…。
「…俺は、あいつのそういう気持ちを、利用してるだけなんだよ…」
その気持ちを利用して、誰よりも一番近くにいたがってるだけなんだ。
兄妹に抱く愛情が、決して恋情になど、なるはずないのに。
「…おまえ鈍感だってよく言われるだろ」
彼が重苦しい空気を崩す。
「なっ!?」
「…そのセリフ、イエローに直接伝えてやれ」
「っ!?言えるわけがないだろうが!!」
こんなことを言って、「そうです」って言われたら、立ち直れないだろうが!!
「…まぁ言う勇気があればだけどな」
そう言って、グリーンは俺に挑戦的な笑みを見せる。
「だ、だから!!」
「まぁそんなこと言おうもんなら、あいつ大泣きするだろうがな」
「…っ」
俺の言葉を遮って言われた言葉に、俺は思わず黙り込んだ。
泣く?
なんで…。
なんでイエローが泣くんだ?
「…泣かせる覚悟があるのなら、言ってみればいいさ」
そう言うと、彼は再度書類とにらめっこを始める。
「な、なんだよそれ!どのみち言うなってことか?っていうか、鈍感ってどういうことだ!!おい、グリーン!!」
結局グリーンは、それ以上何も答えてはくれなかった。
俺はただ、自分の都合のいいようにしか、グリーンの発言を理解できない。
理解したうえで、俺はイエローに、一言だけ伝えようと、ふと思う。
「イエロー…俺…」
イエローが好きだ。
うちのレイエはこんなだ。 |