「はぁはぁ…っ…」
俺は肩で息をしながら、木にもたれかかる。
「見つかったか?」
反対側から走ってきたレッドが、俺にそう聞いた。
「…はぁ…いや…」
俺は必死に息を整える。
俺はまた、走り回っている。
あいつを探して。
「今度は何をしたんだ」
「何をしたか皆目検討もつかん」
はぁと俺は大きくため息をつく。
原因が分かっていれば、もう少し合理的に探しているかもしれない…。
置手紙を残して消えた彼女。
数日で戻ると書いてはあったが、行き先を告げない置手紙。
ポケギアもいまだに繋がらないまま。
「くそっ」
無機質なポケギアからの「繋がらない」というメッセージに、俺は思わず木を殴った。
「…数日で戻るって書いてあったんだろ?」
そこまで心配しなくたって。と彼はぼやく。
分かっている。
こういうことは前にもあったし、前は普通に戻ってきた。
あのときも不安になんか感じなかった。
なんのことはない。
問題ない。
そう言い聞かせても、拭えない不安が心に渦巻く。
なんなんだこれは。
何がそんなに俺を不安にさせるんだ。
「…っ」
俺は思わず、奥歯を噛み締めた。
「…あいつならなんかあったって大丈夫だって」
レッドは、俺が心配しすぎないよう、そう言葉をかける。
わかってる。
あいつの強さは、誰よりも分かってる。
分かってるけど…。
「失くして気付くんじゃ、遅すぎるんだ!」
そう、居なくなって気付いてたんじゃ、遅すぎたんだ。
今更…。
今更だ…。
あぁ俺は、こんなにもあいつを求めてる…。
「グリーン!!」
レッドの静止の声も聞かず、俺は再度走り出す。
ただ、ただ、あいつを求めて、探して。
必死にただ、俺は走り続けた。
ただ、俺が求める、彼女の元へ。
この後、怪我して立ち往生してたところを発見されて、思いっきり抱きしめられます。そこまで書くと長いので、あくまで兄さんの衝動を表現した作品としました。 |