「失くして気付くんじゃ、遅すぎるんだ、何事も。」(グリブル)
 

10月21日 第21回目 「失くして気付くんじゃ、遅すぎるんだ、何事も。」(グリブル)

 

「はぁはぁ…っ…」
俺は肩で息をしながら、木にもたれかかる。
「見つかったか?」
反対側から走ってきたレッドが、俺にそう聞いた。
「…はぁ…いや…」
俺は必死に息を整える。

俺はまた、走り回っている。
あいつを探して。

「今度は何をしたんだ」
「何をしたか皆目検討もつかん」
はぁと俺は大きくため息をつく。

原因が分かっていれば、もう少し合理的に探しているかもしれない…。

置手紙を残して消えた彼女。
数日で戻ると書いてはあったが、行き先を告げない置手紙。
ポケギアもいまだに繋がらないまま。

「くそっ」
無機質なポケギアからの「繋がらない」というメッセージに、俺は思わず木を殴った。
「…数日で戻るって書いてあったんだろ?」
そこまで心配しなくたって。と彼はぼやく。

分かっている。
こういうことは前にもあったし、前は普通に戻ってきた。
あのときも不安になんか感じなかった。

なんのことはない。
問題ない。
そう言い聞かせても、拭えない不安が心に渦巻く。

なんなんだこれは。
何がそんなに俺を不安にさせるんだ。

「…っ」
俺は思わず、奥歯を噛み締めた。
「…あいつならなんかあったって大丈夫だって」
レッドは、俺が心配しすぎないよう、そう言葉をかける。

わかってる。
あいつの強さは、誰よりも分かってる。
分かってるけど…。

「失くして気付くんじゃ、遅すぎるんだ!」

そう、居なくなって気付いてたんじゃ、遅すぎたんだ。

今更…。
今更だ…。

 

 

 

 

あぁ俺は、こんなにもあいつを求めてる…。


「グリーン!!」
レッドの静止の声も聞かず、俺は再度走り出す。

ただ、ただ、あいつを求めて、探して。
必死にただ、俺は走り続けた。


ただ、俺が求める、彼女の元へ。

 

 


この後、怪我して立ち往生してたところを発見されて、思いっきり抱きしめられます。そこまで書くと長いので、あくまで兄さんの衝動を表現した作品としました。

 

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