俺は、イエローの屈託なく笑うあの顔が好きだし、ちょっとしたときの、ふわりと微笑む顔とか、ポケモンに向ける、慈しむように笑う顔とか、そういった、笑顔がすごく好きだった。
「馬鹿ね」
「なっ!?」
そんな自惚れを思わず口にしてしまったら、ブルーに思いっきり一刀両断された。
「笑顔が一番危ないんだからね?」
そう言ってブルーは、俺を指差す。
人を指差しちゃいけないって、教わらなかったか?
「危ないって、どういうことだよ」
嬉しいから笑顔になる。
それって至極普通のことじゃないか?
「嬉しそうに笑うのはいいけれど、無駄に笑ったり、ただ笑いを重ねてるだけなのは要注意なのよ?」
彼女は呆れたようにため息を吐く。
ただ笑ってるのがいいみたいに言うからさぁ、と彼女はぶーたれた。
「嬉しくもないのに笑えないだろ」
そんな無理矢理に笑うなんて、すぐ顔に出ちゃうじゃないか。
だから苦笑って言うんじゃないのか?
「笑えるわよ、人を騙せるほどにね」
彼女はきっぱりと、冷たくそう言い放つ。
そう言われて、彼女ならできると思ってしまったのはひどいだろうか。
そういやイエロー、俺が旅に行くって言った日は、笑顔が多いんだよな。
その笑顔に見送られて、俺は安心して旅へと出かけているわけなのだけれど…。
あれも、笑いを重ねているという表現に、なるのだろうか…。
「笑顔はね、感情表現の一つではあるけれど、結局は防衛手段でしかないの。心配させないための壁の役割なの。あなたみたいに気づいてない人には丁度いい目くらましになる。笑ってるだけで、大丈夫だなんて思うでしょ、あんた」
「…っ」
俺は思わず黙り込む。
思ってた。
思ってたさ。
微笑めるくらいだ。
きっと、きっと大丈夫だろう…って。
「笑顔はね、一番危ないの。心に踏み込まないでっていう合図なのよ?」
でも、ほんとはね…踏み込んでほしいっていう、SOSなんだよ。
と、彼女は悲しげに笑った。
「…だからお前は無理によく笑うんだな」
「…っ」
仕事がひと段落ついたグリーンが、会話に参戦する。
「…無理になんて笑ってない」
そう言って彼女は視線を反らした。
「…おまえの表情の変化なんかお見通しなんだ。踏み込んで欲しいSOSなら、いくらでも踏み込んでやるよ」
そう彼は言い放つ。
確かにそう言われて、何もしないのは人としてまずい。
「…無理な笑顔は心のSOSか」
なるほど、覚えておこう。
「…グリーンさん、これはこっちでいいですか?」
イエローがファイルを持って戻ってくる。
「イエロー」
俺は立ち上がって、イエローの前に立った。
「はい?」
イエローは不思議そうに俺を見上げると、口元に笑みを浮かべてくれる。
うん、この笑みは嘘じゃない。
こうやってレッドはいろいろ知っていく。グリブルが描きたかったの。でもレイエが少ないからまぜたの!(ええ)
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