「イエローはさ、どうして俺を好きだって思ったの?」
「えぇええええええええええ!?」
唐突な質問に、僕は心臓が口から飛び出すんじゃないかってくらい、驚いた。
「いやさ…なんか別に、なんもした記憶ないし、どこに惚れる要素があったのかなぁって…」
僕の叫び声に少し驚いたレッドさんが、苦笑しながらそう言い出す。
「どうしてって……」
そんな、そんな急に…。
「いや、そんな無理には…聞かないけど…」
「無理じゃないです!!!あの…えーと…」
無理というよりは、どちらかというと恥ずかしい。
「…」
恥ずかしいのに、そうやって無言で、さらには真剣な眼差しで見られてしまうと、余計に恥ずかしさは増していって。
でも、なんとなくだけど、ちゃんと伝えたい…。
そう思った…。
「…ひ…」
「?」
だけど、言葉がうまく話せない。
頭では言ってるつもりなのに、口が言葉を発してくれない。
「…ひ…」
一生懸命声を出しても、言葉にならない。
そのもどかしさ…。
「…ご、ごめん…そんな困らせるつもりじゃ…」
「ひとめぼれだったんですよ」
彼の制止の声を遮るように、僕は必死に言葉を口にする。
最初の「ひ」という言葉が、裏返った気がした。
「え…」
「危ないところを、森で、助けてくれて…僕に、ポケモンと、仲良くなることを、教えてくれて…トキワジムのジムリーダをお願い…したときに強くなって…帰ってくるって言った…あなたに…」
ひとめぼれ…したんです…。
「……え…それだけで?」
そんな対したことじゃないだろう?というように、彼は不思議そうな顔をした。
「それだけなんてっ…十分……かっこよくて…その…」
顔がどんどん熱くなっていく。
あのときの衝撃を思い出して、心臓が早鐘のように脈打った。
「…か…かっこいい……か…な」
彼の顔もどんどん真っ赤になっていく。
うつむいていた顔を少し上げれば、少し赤くなった彼と目があった。
心臓の音が聞こえるんじゃないかってくらい、どきどきと体の中で鳴り響く。
「…あの…僕……」
「あんたたちうざい!」
「「うわぁあああああああああああ!!!!!」」
いきなりの声に、僕とレッドさんは同時に驚く。
「…二人でいちゃつくならどっか行ってよ!こっちはグリーンが仕事でぜんぜん相手になんかしてくれないのに、嫌がらせ!?嫌がらせなの?!」
「いや、そういうわけじゃ」
レッドさんが、慌ててそう答えた。
「まったく…」
ブルーさんは、怒りながら僕達の間を無理矢理こじ開けて通っていく。
そうだ、ここはジムで、グリーンさんの手伝いをしにきたんだった。
ブルーさんも借り出されてまで、今までのジムの書類の整理。
いきなりなレッドさんの話で、思わずここがジムの、しかも書庫に行く出入り口のまん前だったことを、すっかり忘れてしまっていた。
つまり、書庫に行くのに、僕達は完全に邪魔をしていて…。
「…なんか、忘れてたな…」
「そうですね…」
少し頬を赤らめながら、僕達は二人して、くすくす笑い出す。
そしたら、
「あんた達、いい加減にしないと追い出すわよ」
と、戻ってきたブルーさんに、再度出入口を塞いでいた僕達は、こっぴどく怒られた。
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