「いたっ」
でこぼこした、歩道と呼ぶにはいささか程遠い道を歩いていた俺たち。
小さく聞こえた彼女の声に、俺は振り返った。
「なんか言ったか?」
「えっ……あ…ううん…なんでもない…」
一瞬驚いてびくりと肩を震わせたが、彼女はなんでもないと、手をひらひらと振った。
「そうか?」
俺はとくに気にもせず、前に向き直り歩き出す。
しかし、しばらく歩いて、俺は彼女の異変に気づいた。
「…ほんとになんでもないのか?」
さっきから、足音が遠ざかってる気がして、彼女を振り返ると、思っていた以上に距離があいていたことに、少し眉間にしわを寄せた。
「え…あ、ごめん…平気っ」
彼女は慌てて後をついてくる。
普通に歩いて近づいてくる彼女に、どこも異変は見当たらない。
あえて言うなら、無駄に浮かべた笑顔が、少し気になった程度だった…。
「…」
俺は少し気になりながらも、再度前へ向き直り、道と呼べない道を歩き出す。
そしてやっぱり開いていく彼女との距離に、少し苛立ちを覚えた。
これでも精一杯彼女の歩幅に合わせてるつもりだ。
いつもはこんなに遅くなかったはずだ…。
そう身長の変わらない彼女との歩幅は違わないし、俺がとりわけ早足で歩いてるわけでもない。
となると…
「クリス!」
「あ、ごめん!」
彼女は少し走って俺に追いついてくる。
みかけには異変は見当たらない。
「…なんなんださっきから!」
「ご、ごめん…ちょっと考え事してて…」
無駄に浮かべた笑顔から、胡散臭さがにじみ出てる。
「足」
「へ?…ってちょっ!?」
俺は、彼女の左足を無理矢理掴んで持ち上げる。
転びそうになった彼女は、俺の肩を強く掴んだ。
「痛いんだろ」
「いっ!?」
強く足首を握れば、彼女の顔が痛みに歪む。
「ったく…お前は嘘が下手くそだな」
そう言って、俺は軽々しく彼女を抱き上げた。
「きゃっ!?ちょっ…ちょっと降ろして!!自分で歩く!」
「このペースで歩いてたら街に着くのが遅くなる」
俺は彼女を抱き上げたまま、道を歩き出していく。
「じゃ、じゃあウインぴょんに乗るから!」
彼女は慌ててモンスターボールを出した。
「じゃあなんで最初からそうしなかった」
そうすればここまでひどくならずに済んだだろうに。
彼女の足は、だいぶ赤く腫れ上がっていた。
「…ま…まだ…捕獲の仕事…残ってる…から…。ばれたら…止められると…思って…」
「あたりまえだ!!!」
しゅんとうつむいた彼女に、思わず一喝してしまう。
「…だって仕事っ」
「なんのために一緒にいると思ってんだ馬鹿野郎!!」
おまえの手伝いするために、わざわざ一緒にいるっていうのに、馬鹿かこいつは。
「…っ……ごめんなさい」
「分かればよろしい」
普段俺のが面倒見られてばっかりなのに、いつもと逆転していて、二人して笑いあった。
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