「浮気する人だなんて、知ってたのに」(ゴークリ)
 

1月31日 第53回目 「浮気する人だなんて、知ってたのに」(ゴークリ)

 

「浮気する人だなんて、知ってたのに」
私はそう、ぽつりと呟く。

分かってた。
分かってて好きになった。

女好きのゴールドが、私と付き合ったからと言って、女遊びを辞めるなんて思えない。

分かってた…。
分かってたはずなのに…。

 

 

 

 

 

 

 

目の当たりにすると、痛い…。

 

 

 

 

浮気って、どこからどう見れば浮気になるのかは、人それぞれだろう…。
男性は、必要以上に触る行為、例えば手を繋ぐという行為だけで、浮気されたと思うらしい。
逆に女性は、自分以外の女性と、自分が暇なのにも関わらず、わざわざ休みに会ったり、食事をしたりする行為を、浮気ととる傾向が多い。
そう、ブルーさんが教えてくれた。

今日の私の予定はあいている。
視線の先には、別の女の子と、街で買い物をしているように見える、ゴールドの姿。

どうやら、ブルーさんの情報は、正しいようだ…。

「…分かってたのに」
分かってたのに、じりじりと心が蝕まれる。
痛いような、苦しいような、複雑な感覚。

分かってた…

 

分かってた…

 

 

分かってた……。

 

 

 

でもっ

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴールド!!」
私は走り出し、彼の腕を力強く掴む。
「っ!?え!?クリス!?なんでここに!?」
彼は驚いたように反応した。

その慌て具合に、また心が蝕まれる…。

「私以外の女の人と、会ったりしないで!!!」
思わず、ここがどこだかも忘れてしまうくらい、私は大声で彼に叫んでいた。

あぁ、バカだ。
大バカだ。
こんな、嫉妬丸出しで、絶対うざいって思われる…。
分かってる、分かってるはずなのに、想いが、言葉が、止められない…。

「……クリス…?」
心底驚いた顔をして、フリーズしてる彼。
私の思いもかけない言葉に、本当に驚いたのだろう。
それを見かねたのか、
「…別に浮気してたわけじゃないわよ?」
と、一緒に買い物をしていた女の人が話しかけてくる。
「っ!?」
私はびくっと震え、彼女から少し距離を置いた。
「そんな警戒しないで。盗ったりしないから…。あなたへのプレゼントを選ぶのに、呼び出されただけよ…。ゴールド、本人来たんだから、一緒に選びなさいな」
「え!?おい!!」
帰っていく彼女を、彼は引き止める。
「じゃあね」
そんな引き止めも空しく、彼女はすたすたと人混みに紛れていった。
「…え…浮気じゃないの…?」
違うの?
「ちげーよ!!」
彼は思いっ切り否定する。
「…そう…なんだ…」

 

 

 

 

 

うわ…ほんとバカだ…。

「なぁ、さっきの言葉さ…」
彼が少し恥ずかしげに、私を見る。
「…っ知らない!!」
私はそのまますたすたと歩き出した。
「あ、おい!待てって!!」
「知らない知らない知らない!!!!」
そこから2kmほどの、追いかけっこの始まりだ…。

あぁバカだ…。
大バカだ…。

ブラウザのバックでお戻りください。