「うわぁ…」
山にハイキングに行こう!
そう誘ったのは俺だった。
観光名所としても名高いこの山は、頂上から見下ろす街がとてもキレイに見える場所だった。
そのはずなのに…。
「…」
イエローが一歩踏み出せば、かさりとビニールを踏む音がする。
「ピッカァ」
ピカが歩けば、落ちていた缶を軽く転がした。
「…ゴミだらけですね」
現状を、イエローが言葉で説明してしまう。
そう、頂上の展望台風になっているこの場所は、ゴミの宝庫になっていた。
べこりとへこんだ缶に、お弁当の空箱。
ポテトチップスの袋や、少し膨張したペットボトル。
どれもこれも、この風景には似合わないものばかりで…。
「…ここ、ゴミ箱ないからなぁ」
『ゴミはお持ち帰りください』なんて立て看板は、スプレーの落書きに、もうよく見えなくなっている。
「よしっ」
イエローは小さく気合を入れて、下に散らばっていたビニール袋を拾い上げると、周りのゴミを拾い始めた。
「え、い、イエロー!?」
俺はその行動に一瞬驚くが、彼女は周りが見つめる視線を気にもせず、ただ黙々とゴミを拾っていく。
あぁもうほんと、俺の想像を裏切ってはくれないな…。
俺はピカと顔を見合わせて、くすりと笑みを浮かべた。
「ふぅ。だいぶキレイになった…ってレッドさん!?」
一緒になって拾い出していた俺を、イエローが気づいて俺に駆け寄る。
「そっちは終わったか?」
俺は、もう何袋目になるか分からない袋を、どさりと地面に置いた。
「す、すいません!?手伝ってもらうつもりじゃ、っていうか、折角ハイキングに誘ってくださったのに、こんな、いきなりゴミ拾いなんて…。ほんと、ほんとすいませんっ!」
彼女の顔が、赤から青に変わっていく。
慌てて彼女は、頭を下げた。
この頂上から見える景色はもう夕焼けだ。
今日はこの山に、このキレイな景色を見にハイキングに来たはずだったのに…。
「たまにはこういうのもいいんでない?」
「え…」
彼女がぱっと顔を上げる。
「…この景色を見せたくて連れてきたんだ。キレイな場所で見れることに、こしたことはないさ」
俺は、優しく笑みを浮かべた。
「……ありがとう…ございます」
キレイな夕日に染められて、彼女の笑顔が、まぶしく見えた。
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