「何かあったらすぐに呼べ!いいな?」(グリブル)
 

2月28日 第60回目 「何かあったらすぐに呼べ!いいな?」(グリブル)

 

「…っ」
「ん?」
残りの仕事を思い出し、夜中に起きていた俺は、彼女のうめき声に、振り返った。
「……や…っ」
「ブルー?」
机にペンを転がし、少し大きく音がなるほど、席を勢いよく立ち上がる。
「…いやっ…っ」
近づけば、彼女は真っ青な顔で、うなされていて…。
「ブルー?」
少し汗ばんだ額に触れ、張り付いた前髪を掻き分ける。
「…っ…グ……リーンっ…」
「っ!?」
俺の名前が呼ばれ、一瞬どきりとした。

そして、秒針の音が聞こえる中、彼女は小さく、囁いた。

「た…す…けて…っ」


……と…。


頬を伝う涙が、胸に強烈な痛みを、残した気がした。


「ブルー!ブルー!!!」
俺は彼女を揺さぶり、無理矢理起こす。
「うっ…」
彼女の目が、ぴくりと動いた。
「起きろ!ブルー!!!」
「う……グ…リーン…?」
彼女をそのまま揺り動かせば、彼女はぼんやりとした瞳に、俺を写し出す。
「っ!!」
俺はそのまま、ぎゅっと力強く抱きしめた。
「なっ!?ちょっ…え?…グ…リーン?」
寝ぼけていた目を大きく見開き、彼女は慌てながら俺に話しかける。

どうやら、夢の内容は覚えていないようで、ほんの少しだけ、ほっとした。

「どうしたの?」
彼女は少し困ったように、俺に問う。
「何かあったらすぐに呼べ!いいな?」
俺は質問の答えになってない、言葉を彼女に送る。
「え…?」
彼女は不思議そうな顔で、俺を見上げた。
「いいな?!」
俺は再度、念を押すように言葉を繰り返す。
「う…うん…?」
彼女は訳が分からないというような顔をしていたが、とりあえず頷いてくれた。

おまえが苦しいとき、一人でなんて、泣かせないから。
何も、何もしてやれないけれど、何も解決なんか、してやれないけれど…。
それでも、一人で泣かせたりは、絶対、したくないんだ…。

「何かあったら…すぐに呼べよ…」
どこにいても、どんなときでも、必ずおまえのところに、行ってみせるから…。
だから…


「一人で…泣くなよ…」
彼女は分からないというような顔をしていたけれど、少し、嬉しそうに微笑んでくれたから、むしろ俺が、救われた。

 

 


夢は、現実を映す鏡なのです。

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