「…っ」
「ん?」
残りの仕事を思い出し、夜中に起きていた俺は、彼女のうめき声に、振り返った。
「……や…っ」
「ブルー?」
机にペンを転がし、少し大きく音がなるほど、席を勢いよく立ち上がる。
「…いやっ…っ」
近づけば、彼女は真っ青な顔で、うなされていて…。
「ブルー?」
少し汗ばんだ額に触れ、張り付いた前髪を掻き分ける。
「…っ…グ……リーンっ…」
「っ!?」
俺の名前が呼ばれ、一瞬どきりとした。
そして、秒針の音が聞こえる中、彼女は小さく、囁いた。
「た…す…けて…っ」
……と…。
頬を伝う涙が、胸に強烈な痛みを、残した気がした。
「ブルー!ブルー!!!」
俺は彼女を揺さぶり、無理矢理起こす。
「うっ…」
彼女の目が、ぴくりと動いた。
「起きろ!ブルー!!!」
「う……グ…リーン…?」
彼女をそのまま揺り動かせば、彼女はぼんやりとした瞳に、俺を写し出す。
「っ!!」
俺はそのまま、ぎゅっと力強く抱きしめた。
「なっ!?ちょっ…え?…グ…リーン?」
寝ぼけていた目を大きく見開き、彼女は慌てながら俺に話しかける。
どうやら、夢の内容は覚えていないようで、ほんの少しだけ、ほっとした。
「どうしたの?」
彼女は少し困ったように、俺に問う。
「何かあったらすぐに呼べ!いいな?」
俺は質問の答えになってない、言葉を彼女に送る。
「え…?」
彼女は不思議そうな顔で、俺を見上げた。
「いいな?!」
俺は再度、念を押すように言葉を繰り返す。
「う…うん…?」
彼女は訳が分からないというような顔をしていたが、とりあえず頷いてくれた。
おまえが苦しいとき、一人でなんて、泣かせないから。
何も、何もしてやれないけれど、何も解決なんか、してやれないけれど…。
それでも、一人で泣かせたりは、絶対、したくないんだ…。
「何かあったら…すぐに呼べよ…」
どこにいても、どんなときでも、必ずおまえのところに、行ってみせるから…。
だから…
「一人で…泣くなよ…」
彼女は分からないというような顔をしていたけれど、少し、嬉しそうに微笑んでくれたから、むしろ俺が、救われた。
夢は、現実を映す鏡なのです。 |