「…短い付き合いだったな」
彼が、夕日に輝く空を見上げて、そう言い出す。
「そうかしら…」
私は地面を見つめ、言葉を返した。
「短かっただろ、友達歴約6年に、恋人歴約6年じゃ」
彼がゆっくり、歩き出す。
「6年続けば、長い方だわ」
人の関わりに、年単位は長いわよ。
「人生は約100年あるんだ。そのうちの6年ずつの付き合いなんて、短かったようなもんだよ」
彼が少し笑ってるように、感じられた。
後ろ姿からは、何も分からなかったけれど。
「そう…なのかしらね…」
私は地面を見つめながら、彼とは反対の方向に、ゆっくり歩き出す。
「明日から、この関係ともおさらばだっ」
彼はそう言葉を吐き出す。
「…そうねっ」
私も同じように、言葉を吐き出した。
ゆっくり歩いて広がった距離でも、声が届くように。
「短い付き合いだったな!!」
彼が再度、同じ言葉を叫ぶ。
「そうね!!!」
私も叫んで、返してやった。
「明日、朝式場でな!」
「明日まで遅刻なんかしないでよね!!!」
明日私達、結婚します。
夫婦としての付き合いが、スタートするのです。
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