いつも、いつも、「旅に出るんだ」と言ったあなたの笑顔に、僕は笑顔しか返せなかった。
いつも、いつも、「今回の旅は…」と楽しそうに語るあなたに、僕は笑顔しか返せなかった。
引き止めることも、ついていくこともできずに、旅に出るあなたに、「いってらっしゃい」と送り出すことしかできなくて…。
そして、帰ってきたあなたに、「おかえりなさい」と、優しく出迎えることしか、僕にはできなくて…。
そうして、あなたが話す旅の話を聞くことで、僕は少しでも、あなたに関わろうと試みる。
毎回…毎回……。
心まで、離れてしまわないように…。
「あたしだったら、あんたみたいな放浪癖のある人なんか好きにならないわっ」
イエローが可哀想よっ。
そう言ったブルーさんの言葉に、「僕は旅をしてるレッドさんが好きなんですよ」と彼に伝えた。
彼はすごく、嬉しそうに笑ったけれど、申し訳なさそうに「ありがとう」と言った。
彼はきっと、僕を置いていくことを申し訳ないと思っているのだろうか…。
本当は、引き止める勇気も、ついていく強さもない僕が悪いのに…。
「今回は、どんなところに行ってきたんですか?」
久々に会った彼に、いつもの笑顔で出迎える。
「…」
「レッドさん?」
何も言わない彼を、僕は不思議そうに見上げた。
「オレがいなくて、さみしかった?」
「…え?」
彼の言葉に、僕は一瞬耳を疑う。
そんなこと、一度も言われたことなんかなかったのに…。
「…オレがいなくて、さみしかった?」
もう一度、言葉を繰り返される。
いつもの笑顔が作れない。
自分の弱さがあふれ出す。
いつも、必死に隠してきたさみしさが、あふれ出す。
引き止める、勇気のない自分。
ついていける、強さのない自分。
あふれてく…。
壊れてく…。
「………っ……さみしくないわけ…ないじゃないですか…」
必死に強がって、必死に顔を隠して、そんな言葉だけ、口にした。
どこにも行かないで、なんて、やっぱり言える勇気なんかなくて…。
ずっとそばにいて、なんて、言える強さなんか、僕にはなくて…。
「イエロー…ごめん……ありがとう……。ただいま…」
なのに、あなたがそう言葉をくれるから。
必ず、僕の元へ帰ると、言葉をくれるから…。
「おかえりなさい」
僕はまた、あなたに笑顔を送れる。
「あなたにとっては迷惑な気持ちかもしれませんが、僕、ずっと…ずっと、待ってますから…」
だから僕は、あなたを待つ勇気だけは、強さだけは、失くさない。
「…迷惑なんかじゃない…。俺はそれに、救われてるんだ…。どこまでも…どこまでも…」
彼がまた、申し訳なさそうに言葉を吐く。
「それが、聞けただけで十分です」
優しく抱きしめてくれるぬくもりが、優しくくれる言葉が、僕の支え。
「…おかえりなさい」
僕は再度、笑顔でそう伝える。
「…ただいま」
彼は嬉しそうに、微笑んだ。
前回のイエローバージョンです。こっちだけ読むと変な話(おい)前回の話を考えたときに、これをイエローバージョンにしたいと思ったので、実行。ただそれだけ(え) |