「何か、お前といると落ち着かねェなぁ」(グリブル)
 

4月19日 第69回目 「何か、お前といると落ち着かねェなぁ」(グリブル)

 

「…」
ジムで仕事をする俺。
「…」
ソファーで雑誌を読むブルー。

時計の秒針と、雑誌をめくる音と、俺がペンを走らせる音が混じるだけの空間。
別に邪魔をされているわけでもないのに、仕事の進みが遅いのは気のせいなのか。

「…」
俺は席を立つ。
この行為自体、俺はもう何度したか覚えてない。
資料を探しに書庫に行くはずなのに、なんだか落ち着きがないみたいで複雑な気分だった。
まぁ喉が乾いた、とコーヒーを煎れに数度給湯室に立ったけれど。
何度かトイレにも立ったけれど。
何度か挑戦者が来て、その都度席を立ったけれど…。

「…ん?」
俺はそこまで思考を廻らせて、本棚の前で立ち止まる。

いつものことだな…。

そう思ってしまった。

資料を取りに書庫へ行くのも、コーヒーを煎れにいくのも、トイレに行くのも、挑戦者を相手にするのも、いつものことだ。
挑戦者の数に関してはその日それぞれだが、それ以外はいつものことなのだ。
なのに、何故こんなに落ち着かないんだろう。
なんでこんな落ち着きがないように、感じるんだろう。

「…」
そう思いながら、俺は部屋に戻る。
すると、
「…あ、おかえり」
笑顔でブルーが、そう言った。
「……」

あぁ…

「何か、お前といると落ち着かねェなぁ」
俺はそう言って苦笑する。
「は?なんで?」
彼女は不思議そうに、首を傾げた。
「さぁーな」
俺はそう言って、椅子に座る。
何よそれ!!とぶーたれる彼女を横目にして…。

そうか、そういうことか…。

俺は小さく、呟いた。

 

 


彼だって少年(え)

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