「……お前……俺の事、試したな?」(グリブル)
 

4月27日 第71回目 「……お前……俺の事、試したな?」(グリブル)

 

「ねぇグリーン」
「…」
また始まった。今度はなんだ?
「…あたしのどこが好きなの?」

 

 

 

 

「は?」
俺は覚悟して言葉を聞いたはずなのに、それでも反応が数秒遅れるほど、彼女は突拍子もないことを言い出した。
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜…あたしのど・こ・が、好きなの?って」
彼女は小首をかしげて問うてくる。
「…なんだよいきなり…」
なんでそんなことをいきなり…。
「グリーンはあたしのどこが好きなのかなぁって疑問に思ったから」
「…はぁ」

暇なんだな…。
さっきから小1時間ほど構ってやらなかったのが原因か…。

「ねぇ、あたしのどこが好き?」
彼女が質問を繰り返す。
「…どこ…と言われてもだなぁ」
俺は逃げられないと自覚すると、とりあえず必死に頭を巡らせた。

どこが好きかなんて、考えたこともなかった。

「…なんかないの?ここが好きとか」
彼女がじっと俺を見上げてくる。
「…そう…いきなり言われてもだなぁ」
俺は気まずそうに視線を反らした。
「すぐ出てこないってことは、好きじゃないんだ」
「それはないっ」
なんでそうなるっ。
「だってどこが好きなのか言えないのに、好きになるなんておかしいじゃないっ」
彼女は泣きそうな表情をした後、そのまま俯いてしまう。

まずい、泣かせたか?

「いや…だから…」

俺は必死に頭を巡らせて、言葉を探す。
この言葉足らずな俺に、言葉を言わせる方が間違ってるんだぞ…。

「…」
彼女はあいかわらず俯いたままで、表情は読み取れなかった…。

「…どこって…言えないというか、言いたくないというか…」

どこか探せば、そりゃ言えるのかもしれない。
その長い髪も、屈託なく笑う顔も、素直に言葉を喋るようになった彼女も、上げればそれこそきりがないほど、思い出せることはたくさんある。
でも、

「…限定したくなくて…だからって、全部って…言うほど…なんていうか、なんかそんな言葉で言えるくらいじゃなくて…」
全部なんて、ひとくくりにできるくらいの想いでもないんだ…。
どこか、俺にさえ複雑で、捕らえきれない…そんな…想いなんだよ…。

 

 

 

「ぷっ」
ぷ?
「うふふっ…あはははははっ」
彼女がいきなり笑い出す。

ま…まさか…

「……お前……俺の事、試したな?」
泣くフリをして、俺の想いを試したのか?
「ちっ…ちがっ…ぷっ…ふふふ」
彼女が笑いをこらえきれず、笑い続ける。
「…もういい。絶対もう二度と言ってやらねぇ」
かなり恥ずかしかったんだぞこっちは。
「それは嫌!!!ごめん!ごめんってばぁ!ほんとに試したわけじゃないよっ!!」
「じゃあなんなんだっ!」
そこまで笑っておいてよく言う。
「た、ただ、ちょっと1箇所でも、好きな部分あげてくれればよかったのに…そんな、まじめに、すっごいなんか真っ赤になって考えてくれるから…さぁ」
そんな本気にするなんて…思わなくて…と彼女は少し罰が悪そうに視線を反らした。
「だから言っただろ?どこって限定するような想いじゃないんだ」

それを言葉にしたら、それだけになるみたいで、嫌なんだ。
そんな、そんな想いじゃないのに…。

「…なら、そう言ってくれればよかったんだよ…」
彼女は苦笑を浮かべた。
「…っ」
なるほど、それもそうだ。
「…ありがとう…」
彼女が幸せそうに笑う。
「…いや」
まぁ、想いは伝わったようで、少しほっとした。
「…あたしも、あなたの全てが……ううん…あなたが…グリーンが…大好きよ…」
「…俺も…好きだ…」
幸せそうに笑う彼女に、俺は優しく、そう言えた。

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