嫌い…。
キライ。
きらい……。
一番、あの人に言われて悲しい言葉。
あの人に、一度も言われたことのない言葉。
嫌い…。
キライ。
きらい……。
あれだけわがまま言って、あれだけ文句ばっかり言って、あれだけ迷惑かけてるのに、グリーンは絶対、その言葉だけは言わない。
「嫌いにならないで…っ」
何度か泣いて喚いたこともあるけれど、嫌いになるのは一瞬だ。
嫌い…。
キライ。
きらい……。
なのに…なんで、グリーンは、あたしにその言葉を、言わないんだろう…。
嫌いじゃないから?
ううん、好きでもないから?
「どうでも…いいから…」
「勝手に自己完結してんじゃねぇよ」
「っ!?」
あたしはびくりと肩がはねる。
「ったく」
彼は大きく、ため息を吐いた。
「あ、あれ…あたし、声に出してた?」
最後は、自分に言い聞かせるように、声に出したつもりだったけど、最初っから、言葉にしてたはずは…ないのに…。
「おまえが黙り込んでるときは、たいていろくでもないことを考えてるときだからな」
彼は再度、ため息をつく。
「な、何よそれ」
あながち間違いではないから、あまり言い返せない…。
「で、今度は何を考えてたんだ」
彼があたしの頭を、そっと撫でる。
「……。はぁ…」
あたしは観念したように、ため息を吐いた。
「…グリーンは…なんで…何をしても、何を言っても、嫌いって、言わないの?…って」
迷惑だっていっぱいかけて、理不尽なことだっていっぱい言った。
わがままだって言いまくったし、あたし自身、グリーンに嫌いだって、言ったことがある…。
本気でそう思って、言ったわけじゃないけど。
「言って欲しいのか?」
「やだっ!!!」
そんなの絶対やだ。
「じゃあいいだろう」
「そうだけどっ…そうなんだけど…」
嫌いだと思わないのは、嫌いじゃないから?
それとも、好きじゃないから?
どうでもいいから…。
そうだったら…悲しい。
「はぁ…。嫌いじゃないのに、嫌いだって言う必要性はないだろう?」
彼はため息を吐いて、再度言葉を口にする。
「でもそれって、好きでもないから!?」
あたしはがばっと顔をあげて、泣きそうな顔で彼を見上げた。
好きでもないどころか、なんとも思ってないからだったら…どうしよう…。
「…はぁ…。言葉を間違えたな」
「きゃっ!?」
彼は大きくため息をつくと、あたしをぎゅっと、抱きしめる。
「好きだからだ」
だから、嫌いだと言う理由はないだろ?と、彼が優しく、囁いた。
「…っ」
あたしはほっとしたように、彼に体を預ける。
「…ったく。すぐほっとくと勝手に自己完結して、訳の分かんないこと考えてる…」
彼はため息をつきながら、あたしを撫でる。
「分かってるんなら、そうなる前に構ってよ」
ほんの一瞬でいいの。
名前呼んでくれるだけでも、こっちを見てくれるだけでもいい。
それこそ、雑用おしつけるとかでもいいから、あたしを見て…。
「善処しよう」
彼はそう言うと、あたしに優しく、キスをした。
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