「はぁあああ…」
重苦しい息を吐き出す。
疲れた。
その一言を言ったら、もう体が動かなくなるんじゃないかってくらい、体が悲鳴を上げている気がする。
連日に渡る挑戦者の嵐のせいか、溜まりに溜まった書類は、一向に減る気配がない…。
それは、疲れた俺の目の錯覚なのか…。
なんて、現実逃避をしている場合ではない。
そんなことをしている暇があったら、1枚でも多く終わらせなければ。
「グリーン」
「…っ」
最悪だ。
どんなに忙しくしていても、彼女の声だけは聞き逃せない。
他は全て、耳から耳へ聞き流すことができるのに。
どんなに集中していようと、どんなに夢中になっていようと、俺は絶対、彼女の声だけは聞き流せないんだ。
そして、その声が心地いいとまで感じるほど、今の俺は限界に近づいている。
まだ書類整理は終わりが見えないというのに、ほんとに最悪だ。
自分の体力の衰えに、心の中で舌打ちした。
「…そろそろ休憩」
そう言って、彼女が後ろから抱きついてくる。
あぁもう限界か…。
「…疲れたぁ」
思わず本音が漏れるほど、俺は限界だった。
俺は、後ろから抱きついてきた彼女に寄りかかり、思わず行動を停止させるキーワードを口にしてしまう。
「…珍しいわね、グリーンがあたしに甘えるなんて…。根詰めすぎなんじゃない?徹夜したって、能率は落ちるばかりよ?」
「…」
彼女の言うことはもっともだ。
甘えてしまうほどに体が悲鳴をあげている。
だが、分かってはいても、根を詰めずにはいられないんだ…。
「…コーヒーを…煎れてくれないか…」
滅多に頼みごとをしない俺が、目元を押さえながらそう呟く。
俺はあまり、ブルーに雑用は頼まない。
というか、頼む前にやってくれることがほとんどだったりもするけれど…。
「ブラック?」
彼女が優しく、俺の目元に当てた手を離れさせる。
「…少しミルクを入れてくれ」
今のこの胃にブラックなんか放り込んだら、荒れる気がする。
「…うふふ、ほんとに珍しい。絶対ブラックでしか飲まないのかと思ってた」
彼女が優しく、俺の目元にキスをする。
「…そんなことはないが…」
唇の柔らかさが、痛みのようなものを感じる目元に心地いい。
「ついでに、何か軽く作ってくるよ」
彼女が優しく、俺の髪を撫でた。
「…ありがとう」
いつもは遠慮して、「別にいい」と言うのだが、今日はもう、そんなことをしてる余裕がない。
「…本当に珍しい…。大丈夫?とりあえず寝る?」
彼女は、俺を心配気に見つめた。
「…っ」
俺は彼女の腰に手を回し、お腹の辺りに顔を埋める。
あぁ、体温が心地いい。
なんだかもう、頭がうまく回転しないな…。
「…ほんと珍しい。大丈夫なの?」
彼女は優しく、俺の頭を撫でる。
「…嫌か?」
こんな俺は…。
「まさか。毎日それでもいいくらい大歓迎だけど、これが重症の表現なら、ちょっと心配になるわ…」
彼女は優しく、俺を抱きしめる。
「…そうか…」
俺は安心したように、目を閉じる。
あぁ、ほんと情けないな。
疲れはここまで、俺を駄目駄目にしていく。
「…大丈夫?」
彼女が心配そうに、俺を撫でた。
「…こんな俺、嫌になるか?」
最悪だ。
すぐ心まで弱気になる。
「…だ・か・ら!大歓迎って言ったでしょ?」
彼女は俺の膝の上に座ると、優しくキスをくれた。
「…ブルー」
俺はじっと、彼女を見つめる。
「なぁに?」
彼女は再度、俺に口付ける。
「……誓うか?」
弱気な心は、そんな言葉を呟いた。
「…本当に珍しい。ほんとに疲れてるのね」
彼女は心配そうに、俺を見る。
「答えろよ」
疲れが呼び起こした、心の弱さは厄介だ。
早くこの不安を、どうにかしてくれよ。
「…誓うわよ。嫌になんかならないって…。未来永劫いつまでも。どんなあなたでも愛しつくすって」
そう言って、彼女は深いキスをくれる。
あぁほんとに厄介だ。
疲れた体や思考は、俺をこんなにも弱くする。
この後寝たら覚えてませんでしたオチ(おい) |