「サファイア!!!」
僕は思わず、大声を上げて彼女の名を叫ぶ。
「っ!?」
彼女はびくりと、肩を震わせた。
「君はどうしていつもいつもそうやって心配させるようなことばかりをするんだ!!」
僕はまくし立てるように怒鳴りつける。
「っ…」
彼女は何も言わず、俯いた。
なんでこんなことになったのか。
それは、ひみつきちで何気ない一日を過ごすことも、多くなったある日のことだった。
たまたま先に来ていた僕が、なかなか来ない彼女を探しに森へ入ったとき、
「ルビー!?」
なんと、彼女は高い高い木の上から落下してきたのだ。
「うわっ!?」
僕はもちろん、慌てて彼女を受け止めるが、突然のことに、地面に一緒に倒れこんでしまう。
「…いたたた…す、すまんち。大丈夫?」
彼女が起き上がると、腕には怪我をしたキノココを抱きかかえていた。
聞けば、怪我を手当てしようと追いかけていたら、木の上まで登ってしまい、キノココが足を踏み外して落ちたから、助けようとして一緒に落ちたと言うではないか。
「一歩間違えれば死ぬことだってあるんだぞ!!」
僕は再度、彼女をしかりつける。
この高さだ。
骨折や怪我だけで済めばいいが、打ち所が悪ければ死ぬことだってありえる。
どうしていつもいつも、彼女はポケモンのことになると、自身を疎かにするんだっ。
「へ、平気やって思ったからっ」
「自分の力を過信しすぎて、取り返しのつかないことになったらどうするつもりだったんだ!!!」
そうして僕は、額に傷を残した。
自分ならできる。
そう思って、俺は好きな女の子を守るどころか、怪我をして、彼女を怖がらせたんだ。
「…でもっ」
「不安になってるのはこっちだけかっ」
俺は、額の傷を抑えながら、ずるずると座り込む。
こっちばかりが心配して、こっちばかりが不安になって。
確かに、若干過保護になりつつあるなとは思っていた。
でも彼女だって、いつまでたっても自分の力ばかりを過信して、無茶ばかりを繰り返すから。
「…っ…す、すまんち…」
彼女がそっと、僕の額の傷に、帽子越しに触れてくる。
「…っ」
僕はゆっくり、彼女を見上げた。
「そ、そんな不安にさせてしまったと?もしそうなら…ごめん…」
彼女はしゅんっと肩を落とし、俯く。
「…少しは…自分を大切にしてくれよ」
俺はぎゅっと、彼女を抱き寄せた。
「っ!?る、ルビー!?」
彼女は慌てたように少し暴れたが、しばらくすると、僕に体重を預けてくる。
小さくて、細い、軽い体。
こんな体のどこに、あんなパワーと自信を持っているのだろう。
少し、分けてもらいたいくらいだな…。
「…ごめん」
彼女が再度、僕の耳元で謝る。
「次やったらわかってるね?」
何するか分からないよ?
「…っ…うん」
彼女はびくりと一瞬怯えると、必死に頷いた。
真っ黒ルビー!黒い赤って怖いよねぇ。血の色みたいな。
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