「なぁグリーン、おまえブルーと付き合ってるのか?」
「ぶふーーーーーーーっ!!」
俺は思わず、飲んでいたコーヒーを噴出した。
「きったねーな!!」
「おまえが変なことを言い出すからだろうが!!」
何をいきなり言い出すんだ!
俺とブルーが、つ、つ、付き合ってるだと!?
「…変なことじゃねーよ!イエローとも言ってたし、ゴールドもあの二人付き合ってるんっすか?って聞いてきたから、もうこれは親友として、確かめねばならん!と思ってさぁ」
「いつ親友になった」
おまえなんか知るか!
「ひっでーーーーー!じゃあライバルとして!!」
「ライバルにそんなプライベートなことを教える必要性はないと思うが?」
「じゃあもう友達でも、同じ町に住んでる好でもなんでもいいから教えてくださいっ!!」
うわーんっと泣きつきそうになっているレッドを見て、おもしろいなこいつ、とか思ったのは言わずにおこう…。
「まぁ、冗談はさておき」
俺は、咳払いをして話題を変える。
「冗談だったの!?」
本気で傷ついたぞおまえ!!と泣き出しそうな彼を、俺は悪かった、と謝った。
「ったくぅ」
「まぁ、結論から言うが、俺とブルーは付き合ってはいない」
そんな事実は全くもってない。
なんでそんな話になったのか、俺が聞きたいくらいだ。
「えぇええ?!おまえもうネタは上がってんだぞ!観念して薄情しやがれ!!」
「おまえ、刑事ドラマの見すぎだろ」
阿呆くさい。
「だって!あれで付き合ってないなんて認めないぞ!!」
「あれでってなんだ!?」
特に何もしていない!!
「だって毎回ジムに遊びに来るじゃないか」
「おまえだってそうだろう」
現に今だってそうじゃないか。
「一緒にでかけたりするじゃないか!!」
「あれは勝手に誘ってくるんだ!」
俺が誘ったわけじゃない。
「でも一緒に行くくらいは好きなんだろ?」
好き…。
「…」
俺は思わず、そこで黙り込んでしまう。
「…おい、もしかして無自覚で一緒に出かけたり、出迎えたりしてたのか?」
無自覚…。
「…いや…無自覚…というか、それは、好きという意味になるのか?」
俺はそもそも、愛だの恋だのといった「好き」という感情が、いまだによく分かっていない。
この行為は、「好き」という感情からくるものだろうか…。
「…おいおい、そこからなのかよ…」
彼は呆れたようにテーブルに手をつく。
「…」
俺は必死に頭をフル回転させながら、答えを探し出す。
だが、分かりもしない感情に、いくら頭をフル回転させたところで、答えは出なくて…。
「…はぁ。おまえそもそも、他人と関わること自体、あんまり好きじゃないだろ?」
彼はため息をつきながら、話しをし出す。
「まぁ、そうだな」
どちらかといえば、大勢でいるよりは、一人でいる方が好きだ。
「そんなおまえがだ。人を、しかも女の子をだぞ?異性と関わりを持つ。俺はその時点で、好きなんじゃねーかって思ってたんだけど?」
そう彼は説明する。
確かに、同姓以上に、異性と関わりを持つ方がよほど難しい。
なのに、ブルーとはあまり気兼ねせずに話をすることも多く、そばにいても不快だと思ったことはない。
だが…
「それはイエローだって、クリスだってそうだろう?」
上げ連ねれば、女性ジムリーダー達とも交流も少なくはない。
そんな理由で「好き」という感情が該当するとは考えにくいんだが…。
「あ、いや、そうだけど!でも、明らかにブルーとの交流のが多いだろ!?」
「…まぁ…」
確かに用もないのによくジムに来ては、話をする。
「それに、一緒に出かけたりしてんじゃん!!他の女の子とはそれはしないだろう!?」
「…そうだな。だが、タマムシシティにジムで使う用度品や消耗品を買いに行っただけだぞ?」
確かに、一緒に出かけるという行為自体は、他の女性とはしたことはない。
だが、そんな理由で出かけただけであって、別に深い意味があったわけではないのだが…。
「でも一緒に出かけられるくらいは好きなんだろ?」
根本な問題に戻った。
「いやまぁ確かに、好きか嫌いかと聞かれれば、決して嫌いではないし、その2択でしか答えられないなら、好きな部類には入るが…」
確かに、好きか嫌いかの2択でしか答えられないなら「好き」にはなる。
だがそれが、付き合っているという意味の「好き」という感情なのかはまた別な気がすんだが。
「でもあのおまえがだよ?人と関わるどころか、異性と関わることを率先してしようとしないおまえがっ!ブルーなら平気なんだぜ?しかもおまえと好みがぜんぜんあわなそうで、性格もあわなそうなブルーが!!これはもう、付き合ってるんだ!!って思ったっておかしくないだろう!」
「おまえ、俺をどんな人間だと思ってるんだ」
俺は、はぁと思いっきりため息をついた。
確かに、ブルーの考えてることや、性格、好みなんかは、あまり一致する方ではない。
どちらかと言えば、感性面から考えれば、クリスやイエローの方が話は合う。
だがいつも、気づくとブルーと話していることが多い。
それは、あいつが俺に話しかけてくるからで…。
でも、あいつと話してても、そんなことは気にならないし、不快だと思ったことはない。
逆に考えの違いに学ぶところもある分、話していて面白いとさえ思うこともあった。
あったにはあったけれど…。
「だいたい、おまえここ最近俺が先に来ると、「ブルーは?」って聞くじゃん」
「そ、それはブルーのが先に来ることが多いからで」
おまえが先に来ると違和感を感じるからであって、深い意味はない…。
ないはずだ。
「…それって、ブルーが来ることがあたりまえになってる言い方だよな」
「…っ…あいつが来なかった日がないだろう」
そうだ。いつも、いつもいつも、そんなに暇なのか、と思うほど来る。
毎日来るって思ったっておかしくないだろう!?
「こないだだって一緒に出かけてたじゃん」
「ジムの買い出しだ!」
それも深い意味ではない。
「なんか、毎回ジムの買い出し一緒に行くんだな」
「あいつが行きたいって言うから」
ただそれだけだ!
「…それを嫌がらないだろう?」
「嫌がる理由がないだろう」
拒否する理由がない以上、断れないだろうし…
っていうか、ちょっと待て…。
「なぁ、一ついいか」
俺は話の腰を折る。
今更だ。
今更だが、もし、レッドの言う「普通ならこうだろう」という原理が当てはまるのなら…
「なんだよ」
「もしかして、ブルーって俺が好きなのか」
そういうことに、ならないか?
「…おまえ、今更気づいたのかよ」
「…っ?!」
「はぁ」
レッドは、思いっきりあきれてため息をつく。
まじか…。
まじなのか…。
「…グリーン、顔真っ赤だぜ?」
レッドが笑うようにそう言う。
「うるさい!」
ちょっと待て、ちょっと待てっ。
もしブルーが、その条件で俺を好きだとするならば、やっぱり俺はブルーが好きだってことになるのか?!
話をすることは不快だとは思わないし、一緒に出かけることを拒否する理由もない。
だがそれは、今知り合いの女性陣に誰でも当てはまる。
でも確かに、知り合いの女性陣の中の誰よりも、関係性が深い気がするのはブルーだけだ。
でもそれは、あいつが俺を好きで、俺と特別関わりを持とうとした結果による産物であって、俺の意思とは別のところで出来上がったことだ。
だが、そうだとしても、そうだとしてもっ、それを不快だと思わない俺がいる。
拒否したいと、思わない自分がいる。
むしろ、「ブルーが俺を好きだから」という理由がついただけで、今までの全ての行動に納得がいき、それを受け入れられている俺がいる。
そして、それに違和感を感じていない自分がいる。
それに、今までのことが、これからも続くもんだと、思っている俺がいる。
そんな関係を永遠に続けていくには、それを、続けさせていくには…。
「…グリーン?」
「…そうか…」
永遠に続けばいいと思うこの想い。
彼女が、そばにいる。
その関係が続くことを願う、この欲望。
それはきっと、
結論としては……好き……なんだと思う。
きっとこれも、「好き」という感情に当てはまる、公式なんだ…。
「…おーいグリーン」
黙り込んだ俺に、レッドが話しかける。
「さ、ジムの仕事でもするかな」
俺は立ち上がって机に向かう。
「あ!おいはぐらかすなよ!なんなんだよぉもう!」
「知るか。仕事の邪魔だ。帰れ」
そう言いながら俺は、書類を見始める。
「ひでぇ!」
そんな関係を続けていくために。
誰かに攫われて、この関係が崩れてしまわないために。
彼女を捕まえよう。
その想いはきっと、「好き」だという想い。
意味不明ですいません。なんか萌えが枯渇してるからいかんなぁ。無理矢理チックですいません。まだ付き合う前の話。 |