「グリーンって、本当にあたしが好き!?」
彼女は、俺に顔を近づけて睨む。
「な、なんだいきなり!?」
俺は慌てて、彼女から離れた。
「ほらそうやって逃げるし!」
「べ、べつに逃げたわけじゃ…」
近いんだ、明らかに。
「いつも抱きついたって、すぐ引き剥がすしっ!」
「人前でやるなと言ってるだけだ!!」
そこがどこだろうと、誰がいようと抱きついてくるだろう。
「普段だって抱きしめ返してくれたりなんか絶対しないじゃない!!キスだってしてくれないしっ!何より全然グリーンからは触れてくれないくせに!!」
「…っ」
彼女は泣きそうな顔で、俺を睨む。
触れる…。
俺が、ブルーに…。
「触れてくれないのは、あたしのことがそこまで嫌いだからでしょ!?」
「違うっ!そういうことじゃなくてっ!」
俺は、俺はただ…。
「じゃあどういうことなのよ!!触れてもくれないのに、好きだなんて思えるわけないじゃないっ!!」
彼女の瞳に、涙が溜まっていく。
違う、嫌いなんじゃない。
好きじゃないわけじゃない。
ただ俺は…
「…所詮、あたしが誰かに好かれるなんて、そんなことありえないのよっ」
そう苦しげに彼女は呟くと、顔を両手で押さえて俯いた。
「…っ…違う…俺は…」
そこまで言って、俺は言葉が出なくなる。
すぐそこまで手を伸ばすのに、その手に感じるぬくもりはなくて…。
俺は…
俺は…
自分の情けなさに嫌気がさして、俺は冷たくなった手を、自分の額に当てた。
そして…
「好き過ぎて……どうしていいのかわかんねえよ」
そう、壁に背中を預けて、心が言葉を、吐き出した。
…っ俺、今もしかして、すごいこと口走らなかったか?
「…っ…ブルー?」
無言の彼女が気になり、俺は顔を上げる。
すると…
「…っ」
「ブルー?」
真っ赤な顔をした彼女が、そこにいて。
「…あ…あの…」
少し目じりに涙を残しつつ、彼女は恥ずかしげに視線を反らす。
「あ、いや、あの、これは、そのそう言う意味じゃっていうか…あの」
ど、どう言えばいいのかわからない…。
俺はただ、ちゃんとブルーのことは好きで、でも、どう触れていいのか…分からなくて…。
そういうことを、言いたくて…。
「…ほんとに…」
彼女が涙目で俺を見上げる。
「…えっ」
俺はびくりと反応した。
「ほんとに、ほんとにあたしのこと好き?」
彼女が必死に、俺を見つめてくる。
「…」
多少の勘違いなど、どうでもいい…。
どうせ言いたいことは、同じだから。
「…っ?」
彼女に一歩近づき、彼女を見つめる。
「…触れて…いいか?」
俺は少し、上ずった声でそう聞いた。
我ながら情けない。
「……うん」
彼女も少し気恥ずかしいのか、赤い顔のまま頷く。
俺はそっと、彼女に手を伸ばした。
心臓が早鐘のように脈打つ。
その音が、手から伝わっていきそうで、無駄に恥ずかしい。
手が、少し震えているようで、俺は手の指先まで、ぐっと力をこめた。
そっと、そっと手を伸ばして…そして…
「……好きだ…」
頬に、そして唇に、俺のぬくもりを伝えていく。
最後は始まり。グリブルは不滅です。お付き合いありがとうございました。 |