「ルビーなんか嫌いっ!!」
いつものケンカのはずが、思わぬ地雷を踏んだのか、目に涙を浮かべた彼女がそう吐き捨てて、ひみつきちを飛び出す。
「サファイア!!」
さすがに自分が悪かったと思ったボクは、慌てて彼女を追いかけた。
野生のポケモン顔負けの身体能力で、自分の庭である森を、すいすいと駆け抜けていく。
まるでサルと追いかけっこをしている気分だ。
「サファイア!待てって!!」
「ついてくるな!!!」
ボクだって、ここ数年ただ彼女と一緒に行動していたわけじゃない。
ボクだって男だ。
彼女の身体能力がいくらよかろうと、一緒に行動して得たスキルと、男女の身体能力の差を足せば、少ないがおつりは出る。
つまり、
「っ!?離せっ!!!」
本気を出せば、彼女に追いつけるようには、なっていた。
「サファイアっ」
凶暴なサルのように、じたばたと暴れる彼女を抑える。
「離せっ!」
「悪かった!ボクが悪かったよ!!」
暴れる彼女を、必死に抑えた。
「許さなか!!」
「悪かったって!」
「…っルビーなんかっ…きっ…!?」
その言葉の続きは言わせない。
「なっ!?」
「……嫌いだなんて言わせないよ」
真剣な眼差しで、彼女を射抜く。
「っ!?ルビーなんかっ……うぅう…」
彼女の顔が、真っ赤に染まる。
嫌いだなんて言ったら、またキスで口をふさぐからね?
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