「やめちゃえば、あんなやつ」
レッドさんが旅立って1ヶ月。
連絡が途絶えて2週間。
ぼくに会いに来てくれたブルーさんが、そう呟いた。
「………え?」
ぼくは、分かってるのに、分からないフリをした…。
「…レッドのことよ!あたしだったら絶対耐えらんないんだけど!!旅に出たっきり連絡くれないなんてひどすぎよ!」
「…そ、そんな…。忙しいのかもですし、山に入ると、電波も届きませんから…」
なんでぼく、必死にレッドさんのフォローなんか、してるのかな…。
「イエローはそれで平気なのっ?」
平気…。
平気じゃ…ないけど…。
寂しいけど……
「…平気じゃ…ないですよ…」
小さく呟く。
「え?」
聞こえないと、分かっていて言える言葉…。
「平気ですよ!旅をしないレッドさんなんて、レッドさんじゃないですしっ」
ぼくは、いつも以上の笑顔を浮かべて見せた。
言った言葉は真実だ。
旅をしないレッドさんなんて、レッドさんじゃない。
旅より、ぼくを選んでくれるレッドさんなんて、ぼくが好きになった、レッドさんじゃないんだ…。
でも、寂しいのは事実で。
平気じゃないのは、ぼくのほんとの心…。
「…イエロー…」
心配そうに見つめる、彼女の蒼い瞳に、ぼくの泣き顔が、映った気がした。
「やめちゃえば?あんなやつ」
彼女が、同じ言葉を繰り返す。
「……やめられません…。…やめません」
どんなレッドさんでも、ぼくはレッドさんが、好きだから…。
でも、でも…どの感情も、嘘じゃないんだ。
だから、どうか今だけは、彼女の瞳にだけ映った、泣いてしまった気がした僕を、受け入れて…。
乗り越えるから…強くなるから…。
ぼくが好きなレッドさんを、ずっと、ずっと好きでいられるように…。
いつか…
いつか、あなたに追いつけるように。
いつか、あなたの隣に立てるように。
…いつか……。
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