「俺って“愛してる”とか似合わないよなー……」(レイエ)
 

11月23日 第31回目 「俺って“愛してる”とか似合わないよなー……」(レイエ)

 

「俺って“愛してる”とか似合わないよなー……」
唐突に言い出した言葉に、僕は心底驚いた。
「……………え?」
おかげで、何を言ったのか理解するのに、たっぷりヤドン並みの時間をかけてしまう。
「いやさ、こないだグリーンが、ブルーに愛してるって言ってって言われて、恥ずかしがりながらも言ってたからさ。イエローも言って欲しかったりするのかなぁって。でもなんか俺に“愛してる”って言葉は似合わなさすぎないかなぁって」
「あぁそういえば、グリーンさん真っ赤になりながら、ブルーさんに伝えてましたね」

“愛してる”か。
確かに言われたこともなければ、今まで言って欲しいなんて思ったことはなかった。
“好き”だという言葉だけで十分だったし、“愛してる”という言葉と、“好き”という言葉の違いを、いまいち僕は理解できないでいた。

「イエローも言って欲しかったりする?」
レッドさんは、少し上目遣いで、小首を傾げて僕を見上げる。
「…そうですねぇ…言われたくなくはないですけど、そんなに絶対言って欲しい!!と泣いてお願いするほどじゃないです」
“好き”という言葉に、十分愛を感じているから。
「…イエロー」
「はい?…っ」
本棚に向き直って本を仕舞っている最中に呼ばれ、僕はそのまま振り返る。
そうしたら、なぜか本棚とレッドさんに挟まれる状況になり、思ったよりも、レッドさんとの距離が近かったことに、心臓が早鐘のように鳴り出した。
「…愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷっ、やべぇ、やっぱ似合わねぇ、俺」
先に笑ったのはレッドさん。
気持ちわりぃと言いながら僕から離れていく彼の後姿を、見送った。
「…っ」
そしてそこには、真っ赤になった僕が取り残される。

似合わなくなんか、ないじゃないですか…。
僕には絶大な、効果でしたよ…。

「…っ」
真っ赤になった顔を、必死に本で隠す。

ブルーさん、僕、“好き”でもなくて、“愛してる”という言葉を求めたあなたの願い、分かってしまったような気がします。
今度、“愛してる”って言って、と願ったら、彼はその言葉を、くれるだろうか…。

「レッドさん」
「ん?」
「僕も、愛してます」
言って欲しいから、僕もそう伝えよう。

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