「何度もいわせるなバカ!」(グリブル)
 

11月25日 第32回目 「何度もいわせるなバカ!」(グリブル)

 

「グリーン、好きって言って!」
また来た、唐突のお願い。
「…なんで」
俺はしかめっ面を、彼女に向けた。
「なんででもぉ」
ぎゅっと彼女は抱きついて甘えてくる。
「…」
俺は眉間にしわを寄せた。
「ねぇ、好きって言って」
上目遣いでじーっと潤んだ瞳で言われる。
「………っ………好きだ…」

この数秒に、脳内でいろんなものが戦ったが、結局負けて彼女の願いを叶えてしまった。
つくづく俺はこいつに甘いと、痛感させられる。

「もっと…」
「…はぁ?!」
まだ言わすか!?
「もっと、言って…」
俺の目が、蒼い瞳に射抜かれる。
「…っ」
あぁもうくそ自棄だ!!
「ねぇ…」
「好きだっ」
彼女の言葉を遮って、彼女の望む言葉を吐く。
「もっと…」
まだ足りないか!?
「……っ…好きだ…」
「もっと」
何度言ってももっと、もっとと要求する。
おまえは俺に何をさせたいんだ?!
「………好きだ」
「もう1回」

もう、何度目かも分からなくなる。
でも、何度言っても満たされないのは明白で、逆にこっちがいらいらしてきた。

「何度もいわせるなバカ!」

滅多に言わない言葉ゆえに、恥ずかしさがいらだちに変わってしまう。
なんなんだ?おまえは、俺に何をさせたいんだ…?

「…っ……あたしも好き…。あたしが好きっ…。だから、もっと…もっと頂戴…。あなたの…愛の…言葉…」
「っ!?」
少し泣きそうになった彼女が、俺の首に腕を回して抱きつく。
「…っ………俺も…好きだよ……」

結局負ける。
いろんなものに負ける。
こうして俺は、彼女の願いを、叶えてしまう。

「…うん…大好きぃ…」
彼女はやっと納得したのか、幸せそうに微笑んで、ぎゅっと俺に抱きついた。
「…好きだ」
あぁ、俺は結局、こいつに甘い…。

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