「グリーン、好きって言って!」
また来た、唐突のお願い。
「…なんで」
俺はしかめっ面を、彼女に向けた。
「なんででもぉ」
ぎゅっと彼女は抱きついて甘えてくる。
「…」
俺は眉間にしわを寄せた。
「ねぇ、好きって言って」
上目遣いでじーっと潤んだ瞳で言われる。
「………っ………好きだ…」
この数秒に、脳内でいろんなものが戦ったが、結局負けて彼女の願いを叶えてしまった。
つくづく俺はこいつに甘いと、痛感させられる。
「もっと…」
「…はぁ?!」
まだ言わすか!?
「もっと、言って…」
俺の目が、蒼い瞳に射抜かれる。
「…っ」
あぁもうくそ自棄だ!!
「ねぇ…」
「好きだっ」
彼女の言葉を遮って、彼女の望む言葉を吐く。
「もっと…」
まだ足りないか!?
「……っ…好きだ…」
「もっと」
何度言ってももっと、もっとと要求する。
おまえは俺に何をさせたいんだ?!
「………好きだ」
「もう1回」
もう、何度目かも分からなくなる。
でも、何度言っても満たされないのは明白で、逆にこっちがいらいらしてきた。
「何度もいわせるなバカ!」
滅多に言わない言葉ゆえに、恥ずかしさがいらだちに変わってしまう。
なんなんだ?おまえは、俺に何をさせたいんだ…?
「…っ……あたしも好き…。あたしが好きっ…。だから、もっと…もっと頂戴…。あなたの…愛の…言葉…」
「っ!?」
少し泣きそうになった彼女が、俺の首に腕を回して抱きつく。
「…っ………俺も…好きだよ……」
結局負ける。
いろんなものに負ける。
こうして俺は、彼女の願いを、叶えてしまう。
「…うん…大好きぃ…」
彼女はやっと納得したのか、幸せそうに微笑んで、ぎゅっと俺に抱きついた。
「…好きだ」
あぁ、俺は結局、こいつに甘い…。
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