「うんっしょ」
大掃除だかなんだか知らないが、よく人をこれだけ無視して片付けに集中できるもんだ。
「…えーと」
彼女はてきぱきと部屋をきれいに片付けていく。
だが、かたや俺は、邪魔にならないようにはしに避けているだけで…。
申し訳ない感じもしなくはないが、手伝おうにも、何をどうすればいいか分からない。
へたに動けば、
「邪魔」
と言われ、暇だったから箱の中身を見始めたら、
「これ以上ちらかさないで」
と怒られて、仕方がないから何か手伝うか?と聞いたら
「おとなしくしてて」
と追い払われたわけだ。
でもせっかくクリスに会いに来た以上、しぶしぶ手ぶらで帰るのもつまらない。
と思ってさっきから部屋に居座っているのだが…
「…こっちを片付けて…」
案の定完全無視だ。
俺なんかこの部屋にいないかのように思われている。
だがそんなことはいい。
へたにやっかみを買ったり、余計な仕事を手伝わされて疲れたりするよりはましだから。
しかし問題は…
「えーと…きゃっ!?…危なかった…」
一瞬落としそうになった物を、必死に受け止める彼女。
「…これを…きゃっ!?……セーフ…」
棚に入れようとしてひっくり返そうとして、なんとか受け止める彼女。
「…こっちに…これを……きゃっ!?……ふぅう」
大きな荷物を持ちながら、こけそうになって持ちこたえる彼女。
そう、見ていて危なっかしいんだ。
とんでもじゃないが、心臓がいくつあってもたりやしない。
俺は今、刻一刻と寿命を縮めさせられていた。
ほんと勘弁してくれ…。
「…あとは……きゃああっ!?」
高いところに荷物を置こうとして、手を滑らせる彼女。
俺の今の位置は、彼女を助けに行くには十分で。
「…お前、危なっかしくて見てらんねえ」
後ろからしっかりと支えて、荷物を所定の場所に置く。
「……あ…ありがと」
彼女が少し驚いた表情で、俺を見上げた。
「そのくらいでときめくなよ」
顔真っ赤だぞおまえ。
「と!?ときめいてなんかないわよ!!」
「あぁ、はいはい。…高いとことか、重いもんは俺がやっから、支持出してくれ」
そう言って俺はひらひらと手を振る。
そうすりゃ、邪魔にはならねーだろう…。
「……あ…うん…」
彼女の顔の赤みが引くまで、もう少し。
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