「やきもち焼いたの?」(グリブル)
 

12月8日 第37回目 「やきもち焼いたの?」(グリブル)

オリジナルキャラ注意。

「…ブルー!!」
「…リョウ!?なんでここに…」

名前を呼ばれて振り返れば、そこには前に交換するのに知り合った、男の子が立っていて。

「…旅して物資がなくなったから補充に」

ここはタマムシシティだ。
物を揃えるには、うってつけの場所である。

「…旅って、あんたホウエン地方に住んでなかったっけ?わざわざこんなとこまで来たの?」

彼は、チリーンを交換して欲しくて、知り合った人だった。

「…どこへでも行くのがトレーナーだろうっ」
「…探求心旺盛ね」
思わずクスクス笑ってしまう。

電話越しに見る彼よりも、本当に楽しそうに話す彼の姿を見て、レッドのことを思い出した。
あいつも今、どこにいるんだか…。
レッドと気が合いそうだと思う…。

「おまえは?なんでこんなとこに?…おまえはたしか、マサラに住んでんだろ?」
ホウエンよりは近いといっても、マサラからタマムシは、そんな近い方じゃない。
「…彼氏とデート!…って言う名の買い出しの手伝いね…」

ジム用品の、補充の手伝いだ。
こうでもしないと、一緒に出かけるなんてできやしない。

「…それって買い出しっていう名のデートじゃないのか?」
彼はあたしの言い方を察したのか、フォローにはなってないが、慰めのように言葉をかける。
「言わないでっ…デートなのっ」
デートったらデートなんだからっ!!
ばりばりおしゃれして今日を楽しみにしてきたんだから!!
って……
「聞いてる?」
いろいろ捲くし立てて言ってみたものの、うんともすんとも返事がないのは、さすがにむなしくなってくるんだけど…。
「…っ……」
「リョウ?」
なんでそんな怯えた顔してるの?
「も、もしかして、おまえの彼氏って…」
そう言って、震えた手であたしの後ろを指さす。
「え?」
振り返ればそこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」
ものすごい形相で睨んだグリーンの姿が…。

「じゃ、じゃあなブルー!また連絡するから!!」
そう言って叫ぶと、リョウは慌ててその場を逃げ出した。
「あっ!ちょっとリョウ!!」
こんな、ゴーストタイプのにらみつけるより、効力のありそうなにらみをきかせてる彼と、二人っきりになんかしないで!!
「…ブルー…」
「はいっ!!」
びくっと怯える。
「あいつはなんだ…」
少し怖い感じが抜け、落ち着いた声でそう聞いてくる。
「え!?あ…前に…交換するのに知り合った人…」

あたしはかわいいポケモンを集めるのが好きだから、ネットで知り合いを募っては、ポケモン交換をしているのだ。
それは、グリーンも知ってることだったんだけど…。

「…おまえは交換した奴とこうやって会ったりしてるのか?」
さっきより、少しぴりっとした空気を感じる。
もしかして、怒ってる?
「な、ないよ…。今だって、たまたま偶然会っただけで、彼ホウエン地方の人だし…」
少し怯えながら、あたしはちゃんと答えた。
「そうか…」
彼はそれだけ答えると、そのままデパートへ歩き出してしまう。
「ちょっ、ちょっと待って!…ねぇ、ねぇっなんで怒ってんの?」
あたしは慌てて、彼を追いかけた。
「…別に、怒ってない…」
あいかわらずぴりぴりした雰囲気は変わらない。
「怒ってるじゃん…」
怖いんだけど…。
「怒ってないっ!」
彼はどんどんと先を歩く。
「じゃあ…」

彼の早足についていけない。
置いてかないでよ…。

 

 

 

 

 

 

 

「やきもち焼いたんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

「…っ」
彼は、ぴたっと歩を止めた。

 

 

 

 

ゆっくり歩いて、彼に近づけば、
「…グリーン耳真っ赤よ?」
耳まで真っ赤にした彼を、確認できた…。
「うるさいっ!」
彼はそう一喝すると、あたしの腕を掴んで、さっきよりは遅いけど、まだあたしよりは早い速度で歩き出す。
でも今度は、彼に腕を掴まれてるから、置いてはいかれない。

「グリーン、大好きよ」

大好き。
そんなグリーンが、大好き…。

 

リョウが後から、

『ちゃんとデートじゃん…』

って、メールをくれた。

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