「…ブルー!!」
「…リョウ!?なんでここに…」
名前を呼ばれて振り返れば、そこには前に交換するのに知り合った、男の子が立っていて。
「…旅して物資がなくなったから補充に」
ここはタマムシシティだ。
物を揃えるには、うってつけの場所である。
「…旅って、あんたホウエン地方に住んでなかったっけ?わざわざこんなとこまで来たの?」
彼は、チリーンを交換して欲しくて、知り合った人だった。
「…どこへでも行くのがトレーナーだろうっ」
「…探求心旺盛ね」
思わずクスクス笑ってしまう。
電話越しに見る彼よりも、本当に楽しそうに話す彼の姿を見て、レッドのことを思い出した。
あいつも今、どこにいるんだか…。
レッドと気が合いそうだと思う…。
「おまえは?なんでこんなとこに?…おまえはたしか、マサラに住んでんだろ?」
ホウエンよりは近いといっても、マサラからタマムシは、そんな近い方じゃない。
「…彼氏とデート!…って言う名の買い出しの手伝いね…」
ジム用品の、補充の手伝いだ。
こうでもしないと、一緒に出かけるなんてできやしない。
「…それって買い出しっていう名のデートじゃないのか?」
彼はあたしの言い方を察したのか、フォローにはなってないが、慰めのように言葉をかける。
「言わないでっ…デートなのっ」
デートったらデートなんだからっ!!
ばりばりおしゃれして今日を楽しみにしてきたんだから!!
って……
「聞いてる?」
いろいろ捲くし立てて言ってみたものの、うんともすんとも返事がないのは、さすがにむなしくなってくるんだけど…。
「…っ……」
「リョウ?」
なんでそんな怯えた顔してるの?
「も、もしかして、おまえの彼氏って…」
そう言って、震えた手であたしの後ろを指さす。
「え?」
振り返ればそこには…
「っ!?」
ものすごい形相で睨んだグリーンの姿が…。
「じゃ、じゃあなブルー!また連絡するから!!」
そう言って叫ぶと、リョウは慌ててその場を逃げ出した。
「あっ!ちょっとリョウ!!」
こんな、ゴーストタイプのにらみつけるより、効力のありそうなにらみをきかせてる彼と、二人っきりになんかしないで!!
「…ブルー…」
「はいっ!!」
びくっと怯える。
「あいつはなんだ…」
少し怖い感じが抜け、落ち着いた声でそう聞いてくる。
「え!?あ…前に…交換するのに知り合った人…」
あたしはかわいいポケモンを集めるのが好きだから、ネットで知り合いを募っては、ポケモン交換をしているのだ。
それは、グリーンも知ってることだったんだけど…。
「…おまえは交換した奴とこうやって会ったりしてるのか?」
さっきより、少しぴりっとした空気を感じる。
もしかして、怒ってる?
「な、ないよ…。今だって、たまたま偶然会っただけで、彼ホウエン地方の人だし…」
少し怯えながら、あたしはちゃんと答えた。
「そうか…」
彼はそれだけ答えると、そのままデパートへ歩き出してしまう。
「ちょっ、ちょっと待って!…ねぇ、ねぇっなんで怒ってんの?」
あたしは慌てて、彼を追いかけた。
「…別に、怒ってない…」
あいかわらずぴりぴりした雰囲気は変わらない。
「怒ってるじゃん…」
怖いんだけど…。
「怒ってないっ!」
彼はどんどんと先を歩く。
「じゃあ…」
彼の早足についていけない。
置いてかないでよ…。
「やきもち焼いたんだ?」
「…っ」
彼は、ぴたっと歩を止めた。
ゆっくり歩いて、彼に近づけば、
「…グリーン耳真っ赤よ?」
耳まで真っ赤にした彼を、確認できた…。
「うるさいっ!」
彼はそう一喝すると、あたしの腕を掴んで、さっきよりは遅いけど、まだあたしよりは早い速度で歩き出す。
でも今度は、彼に腕を掴まれてるから、置いてはいかれない。
「グリーン、大好きよ」
大好き。
そんなグリーンが、大好き…。
リョウが後から、
『ちゃんとデートじゃん…』
って、メールをくれた。
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