「…ありがとうございましたぁ」
「はぁあああ」
慣れない街並みの、慣れない店から、慣れない物を買って、慣れないことをしたと、心底後悔する。
年を重ねて、幼さが抜けて、誰よりも美人になっていくキミを、今のオレじゃあ、追いつくことができないから…。
こんな、給料3ヶ月分なんて名のつく物とはかけ離れた物を、キミに送る以外に、引き止めておける術を、思いつくことができなかった。
こんな安物…。
大会で優勝したお金を使いまくって残った、2、3日トレーナーを倒しに旅をすれば集まるような、そんな額で買えてしまうような安物。
こんなもの、キミには決して、見合わないけれど。
オレには、レッドさんみたいな地位も名誉も力も強さもない。
オレには、グリーンさんみたいな知識もルックスも後ろ盾も安定した職もない。
オレには、シルバーみたいなかっこよさも器用さも冷静さも能力もない。
オレには、何にもないけれど、キミだけは、手放せないから…。
「クリス」
呼び出した彼女を、遅刻したオレが呼ぶ。
「あ、ゴールド。もうっ呼び出しといて遅刻ってあいかわらずねっ」
キミは怒ったように、頬を膨らませた。
周りが振り返る。
周りが噂する。
目の前にいる、オレの彼女を…。
苛つく。
「…オレを、おまえの最後にしてくんない?」
キミの左手の薬指に、さきほど買った、似合わない物をつける。
縛るように。
捕まえるように。
オレだけのモノに、するように…。
「…っ」
キミは驚いたまま、黙り込んだ。
そして…
「馬鹿ね…」
と、小さく囁く。
彼女は幸せそうなのに、なぜか苦笑した表情で、俺を見上げた。
「なんでだよ」
慣れないことをしたもんだから、いつもよりもぶっきらぼうの返事を返してしまう。
バカなオレ…。
「最後にしてなんて、あんたは最初っから、私の最初で最後だよ…」
幸せそうに、オレのあげたものをつけたままの左手を、逆の手で握り締めた姿を見て、安堵の息が、漏れた…。
苛立ちが消える。
安心する。
あぁ…
「好きだ」
おまえが好きだ。
実際は2007年の11月26日に書いた作品です。書いてないと思って思わず考えてしまった話。書いてあったから、このまま星嶺さんに献上。クリスは絶対大人になると美人になると、なぜかうちらの間じゃ思われています。ゴールドは、捕まえておくのが、大変だといいよ!