涙が笑顔に変わるとき なのに、あたしの周りはそれを咎めず、むしろ生い立ちや心境のひどさに、同情してくれるほどだった。 「あいつだろ?オーキド博士からポケモン盗んだっていう」 もっと、もっとあたしを愚弄すればいい。 そうすれば、忘れない…。 あたしの罪を…。 でも… 「…あの優勝者のレッドと、オーキド博士の孫のグリーンと仲がいいって…」 「…っ」 あたしのことは、いくらでも罵ればいい。 でも… 「おまえらいい加減しろよ!!!」 嘘…なんで…。 「…こいつがどんな思いで!」 なんでそこであなた達が怒るの? 「なんでおまえが怒らないんだっ。今のは絶対文句言っていいんだぞっ」 なんで…なんで…なんであなた達が…。 「っ…?」 悔しい、悔しい、悔しい…。 でもまさか、自分がしたことが、大切な人を、悪く言われることになるなんて…。 「……ごめんなさいっ」 謝って許されることじゃない…。 「…ごめんっ」 「え…」 「…っ…だって…だって、あたしのせいで、あなた達まで悪く言われたのにっ」 言葉にすれば、それがより現実だと理解する。 どういう…こと…? 「…おまえが悪く言われてることの方が嫌だって言ってんだよっ」 あぁ…駄目だ…。 「うわっ!?」 でも…手放すなんて… 「……ごめん…ありがとっ」 できないよ…。 あたしがレッドにも抱きついたことをグリーンが怒るから、流れそうだった涙は、笑顔に変わっていた…。 2008年4月5日 Fin すいません(開口一番それか)リクエストはグリーン受けでという話だったんですけどね(え)受けっつーか、グリーンを苦しめろっていう話で、シリアスでって話だったんですが、姉さんを苦しめただけになったシリアスになってしまった。ブルグリだったとは思いますが、レッドさんが出張りすぎだし、これはもう、なんていうか、おまえさぁと、文句もクレームも来そうな話しなんですが、まぁグリーン視点で書けば、お望みの話になったんだと思います。最初はそうするつもりだったのですが、どうしても姉さんに、「自分のしたことが、大切な人を悪く言われることになるなんて…」って言わせたくて!!!それだけのために姉さん視点になりました。あとは姉さんが好きだから?まぁ兄さんが苦しんでるのは、想像っつー方向で。姉さんが一人で悪口言われてるのを耐えてる姿を、何かを言うこともできず、助けることもできないままだった兄さんの苦しみを、分かってくれるといいかなぁって。で、とうとう自分のことで彼女が悪く言われてしまったことが悔しくて、レッドより先に切れたというオチ。ブルーからすれば、あれは自分のせいでグリーン達が悪く言われたとなりますが、グリーンたちからすれば、自分たちのことですら、悪く言われるネタにされてしまったことがくやしかったので。そこらへんの葛藤なんかも感じていただければって方向で。ほんとすいません、水のせせらぎ様。リクエストどおりにならずですいませんでした。こんなんでよければもらってやってください。キリバンリクエスト171717でした。
自分がしてきたことを、正当化するつもりはない。
言い訳もしないし、その罪を償えと言うならば、自分にできることならば、なんでもしよう…。
どんな罵倒も、どんな否定も、どんな非難も受け入れよう。
そう言われたって、仕方がないことを繰り返してきた。
みんなの優しさが嬉しくて、甘えて、なかったことにしようとしたことは、何度もあった。
でも、そんなこと許されるはずない…。
「あの女でしょ?何度も人騙してたっていう。ちょっと顔が可愛いからって、いい気になってんじゃないわよ」
もっと、あたしを非難すればいい。
忘れさせないっ……
「…どうせ色目使ったんじゃねーの?」
「あんな奴とよく一緒にいれるよな」
「騙されてるんじゃない?可哀想…」
怒りで、口の中に鉄の味がした。
いくらでも馬鹿にして、いくらでも蔑めばいい。
でも…あいつらのことまでは…
「…っ!?」
「グリーンやめとけって」
掴みかからんばかりに怒る彼を、一緒にいたレッドが止める。
「おまえはなんとも思わないのか!?」
「俺だって腸煮えくり返りそうだよ」
静かに怒る彼に気づいたのか、彼は少し落ち着いたように力を抜いた。
「…な…なんで…」
しかも…あたしのことで…。
彼は怒りが消えないのか、機嫌が悪そうにそう言う。
「…おまえが怒ってるからブルーが怒りのやり場を失ったんだろうが」
彼は少し呆れたように、彼を諭した。
「…っ」
彼は悔しそうに、舌打ちする。
あたしのせいで…あたしのせいで、あなた達が悪く言われたのにっ…。
「ブルー?どうした?」
あたしは二人の手をぎゅっと握り、うつむく。
「…ごめん」
あたしは小さくそう呟いた。
自分が何を言われたって、それは罰だと思ってた。
自分がどんなに傷ついても、それは自分がしてきたことへの罰なのだと…。
あたしと一緒にいるから…あたしがあなた達と関わってしまったから…そのせいで悪く言われてしまった…。
どんなに謝ったって、償うことなんか、できない罪…。
「何が?」
グリーンは、訳が分からないという声でそう言う。
「…何を謝ってるんだ?」
同じようにレッドも不思議そうな顔をした。
あたしは、涙が出そうだった。
本当に、本当にあたしがいるから、彼らを傷つけたんだ…と…。
「「それが?」」
「っ!?」
二人の言葉が、重なる。
「…ん」
レッドが顎で、彼に喋るよう託した。
「…っ…はぁ…それがどうした?」
一瞬彼はたじろぐが、諦めたようにため息を吐き、あたしの頭を優しく撫でる。
「…っ…どうしたって…」
だって、自分のこと悪く言われたのに…。
「俺のことなんかどうでもいいんだよ」
「俺もどうでもいいよ」
レッドが優しく微笑む。
「…え?」
こんなこと言わせんなっと、彼が顔を赤らめた。
「俺らが何か言われるより、大切な友達が悪く言われて、それで傷ついてるおまえを見る方が、よっぽど嫌なんだよ」
レッドがそう付け足す。
「とにかくだっ!おまえはあんな中傷されるような奴じゃないんだっ。甘んじて受けることはないっ」
駄目…駄目…駄目っ。
ここで、この人たちの手を取っては駄目。
こんなに優しい人たちを、あたしのせいで傷つけることなんて…そんな…そんなこと…。
でも…っ
「っ!?」
あたしはぎゅっと、彼らの腕に抱きついた。
「俺を睨むなよ!!怒るのはこっちだろ?」
そう言ってあたしを指差す。
「ふんっ」
彼はさらにレッドを睨みつけた。
あとがき
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