アンドロイド製作記第一話
最終話   アンドロイド

 「おはようございます。」
「おう。」
ウィルは、昨日のことがふっ切れたのか、グレイスに普通に接した。
「はーい!!リシアちゃんもいまーす。」
あいかわらず、ハイである。
「やぁー。」
「今日は、どーするんですか?」
「えーとね、ちょっとこっち来てくれ。」
そう言って、準備室っぽい所の前に呼ばれた。
「ここは…。」
不思議そうに見る。
『コポコポ』
よーく耳を澄ましてみると、中から何か音がする。
「さぁー。」
そう言って、グレイスはドアを開けた。
「真っ暗ね…。」
リシアは周りを見渡した。
『パチ』
「う…うわー。」
電気を付けるなり、ウィルは叫んだ。プラス、感動した。
「… 」。
リシアは放心状態に陥った。
「これは…。」
驚きを隠せないウィル。
「これは教授と共に、2年前から研究しつつ作ってきたアンドロイドさ。」
「すっげー。しかもヒューマンロイド型じゃないですか !?」(人間型ってこと)
「あー。そーさ…。」
『コポコポ』
そのアンドロイドは、バイオー液の中に入っていた。
「女性型、なんですね。」
「じゃなきゃ、リシアちゃんを意識体に使おうなんて、思わないよ。」
「そーですね。」
ちょこっと男性の時だったらってことを、想像してみたウィルだった…。う〜きもい…。
「私、これになるの?」
ちょっと嫌な顔をするリシア。
「あー。そーだよ。でも一時的なものさ。」
「え?」
ウィルはその言葉に反応した。
「実験結果が出るまでの間だけ。それなら問題ないだろう。」
「あ…はい。」
なんか変な反応をした。どーやらグレイスは、ウィルがグレイスに反発したことが、リシアの存在が別の物になるのが嫌なんじゃないかと、考えたらしい。ところで、なぜリシアが嫌な顔をしたのか。まぁーそれはそーだろう。まだ、人間の基礎的な部分しか出来てないから、アマさん風なのである。(言いかえればハゲ)
「あの、そーじゃなくて、これに…。」
リシアはアンドロイドを指差して言った。
「いや、もう少し、改良はするつもりだし、完璧に完成したら、普通の女の子と変わらない姿になるよ。」
あははって感じでの顔で答えるグレイス。
「あ、そーなんだ。」
安心しているリシア。
「この顔でリシアの性格…くっ…わ…笑える。」
笑いたいのを必死にこらえながら言った。
「こらー、変な想像すんなー。」
リシアは、ウィルをべしべし打とうとしたが、ホログラムなので、すかすか通り抜けた。
「むー。」
もっと怒るリシア。
「ふんだ!」
最後にはすねだした。
「ははは。」
グレイスが笑った。
「なーによ!二人してー。」

☆     ☆     ☆

「わるかったよ ごめん、ごめん。」
リシアが怒ってるところに、ウィルが謝った。
「ふんだ!」
まだすねてる。
「…。」
どうしようって感じの顔をした
『ガチャ』
いきなりドアが開く。
「あ!教授!」「アルス!」
二人は同時に言った。
「どうしてここに。」
不思議そうな顔をする。
「いや、暇だったからのー。アルスを連れて、暇つぶしじゃ。」
あっはっはっ、という感じの顔で言う。
「暇つぶしって…。」
「どうだい?セリアの様子は…。」
「えー。順調ですよ。」
「そうかい。」
カーシスは安心したような顔をした。
「…。」
この時ウィルは、その顔に疑問を抱いた。
「さて、ちょっと見せてもらうよ。」
「えー。」
グレイスはなんだか、あんまり浮かない顔をしていた。
「…。」
カーシスはただ黙って、セリアと呼ばれたアンドロイドを見ていた。
「!?この人…カーシスおじいさん…。」
アルスは不安そうな顔をして、カーシスを見つめる。そしてカーシスはアルスに笑いかけ、何も言わずに出ていった。
『バタン』
「?」
もうウィルには、何がなんだかわからない。
「このアンドロイドは、教授の孫娘さんなんだよ。」
「え…え〜 孫娘 !!」
ウィルは叫んだ。
「この子はね、親と共に交通事故で亡くなってしまったの…。」
「え…。」
「彼女はまだ12歳で、死ぬにはかわいそすぎるし、カーシスおじいさんは、すごくセリアちゃんを可愛がっていたし。」
「それでその子の細胞を使って、アンドロイドを作ったってわけか。」
やっと納得したウィル。
「そう…。」
悲しそうに言うグレイス。
「でもそのアンドロイドに、私の記憶を入れちゃって、よろしいのでしょうか? 」
「あー構わないよ…。これは、教授と二人で決めたことだし、なによりセリアちゃんと、性格が似てるしね!」にこっと笑う。でもぎこちない。
「リシアと似たような… なんか…すごい性格だったんですね、セリアちゃんて…。」
ちょっと想像してから言う。
「はは、まぁーね。」
「ちょ〜っと!!それどーいう意味よ。」
リシアが突っかかる。
「あはは。なーんでもねーよーだ!」
笑って言う。
「あ!ちょっ、ウィル!!」
また怒る。
「俺、アルスを送ってきますね。」
そう言って、逃げるようにして部屋を出ていった。
『バッタン』
「うっもー。」(牛)
「さて、リシアちゃん。研究に付合ってもらうよ。」
「はーい。」
何だかしょうがなく、って感じの言い方で言った。

☆     ☆     ☆

「今日はどーしたの?」
エスカレーターを下りながらウィルが聞く。
「え…カーシスおじいさんが、行こうって言ったから…一緒に…。」
「でも…結局、カーシスじいさんは暇つぶし、とか言いいつつ見たらすぐ帰っちまったよなー。いったい…何しに来たんだろ。」
「セリアちゃんに会いに来たんでしょう?」
勢い良くエスカレーターから下りるアルス。
「会いたいから、会いに来る…べつにいーんじゃない…。それじゃー。ありがとうじゃーね〜ん。」
にこっと笑って出ていった。
「会いたいから…会いに来る…か…。」
ウィルはぽつりとそう呟いた。

☆     ☆     ☆

「しつれいしまーす。」
そう言って、ウィルは研究室に入る。
「あれ?」
だが、誰も居なかった。
「ん?」
さっきの部屋から物音がした。
『ガチャ』
「あ…髪が…。」
入るなりぼそっと言った。
「あ!ウィル…そこの書類を取ってくれないか?」
グレイスが話しかけてきた。
「あ!はい…。」
ウィルはグレイスに書類を渡した。
「あの…セリアちゃん…。」
「あー。リシアの情報を。ちょっとばかし突っ込んでやったらさ、すぐ反応して…。すげーよ。」
「はぁー。」
感心するウィル。
「セリアちゃんて、カールっ毛なんすね…。」
「あー。そーだよ。」
今わかる。セリアは、髪の毛がオレンジのちょっと薄い感じで、カールがかっていて、中途半端な長さ。(裏表紙の絵の人です。沙耶の絵)(だったんです)
「よし。こんなもんか…。」
グレイスは終わらせた。
「あの…リシアは?」
リシアの姿が見えないので心配した。
「あー。はい。」
そう言って、ホログラフィーの映像装置を渡された。でも、リシアは写っていない。
「あれ、リシア?」
「あー、たぶん寝てると思う。」
っと片付けをしながら言われた。
「はぁ〜。」
不思議そうな顔して言うウィル。
「ちょっといろいろと、がんばってもらったからね…。」
「ふーん…。」
「すっごくセリアちゃんと相性が良くってさー。セリアちゃんもすぐ、リシアちゃんのデーター、受け入れてくれたし…。先が期待できそーだよ…。」
すっごくうれしそうに言う。
「はぁー。」
ちょこっと圧倒される。
「俺ちょっと出かけてくるから、お留守番よろしく。暇つぶしに、パソコン見てていーよ。」
そう言って、出ていってしまった。
「忙しー人だ。」
呆れながら言う。そしてパソコンの前に座る。
「はぁ〜。すげー。アルスのとこより、さらにすげーぞ。」
さすが研究所ってとこだろうか、家庭用パソコンとはひと味違う。
「うおー。はえー。」
感動するウィル。
「ん…?」
ウィルは、アンドロイドと書かれたフォルダを見つけた。
「…ひらいちゃえ。」
一瞬戸まっどったが、開いてみた。
「…すっげー。」
そこにはアンドロイドのことを、事細かに記してある設計図らしきものがあった。
「アンドロイドって、こんなんでできるんだー…。」
感心しているウィル。ウィルはグレイスが帰るまで、パソコンにへばりついていた。

☆     ☆     ☆

「ウィル、お留守番ごくろー…さん。」
グレイスはウィルの姿を見るなりびっくりした。だってすっごく楽しそうに、パソコンを見てるのから。
「どーした?」
グレイスがウィルの顔をのぞき込む。
「え?あ…すごいなー、とか思って。」
「あーこれね…。これは、カーシス教授と二人で、設計図からたてて作ったんだ…。なんか感想ある?」
聞く。
「えーと、一つ思ったのは、ここにこの要素を加えて…。」
この後も、ウィルはいくつかのアドバイスをした。
「あー、そのとおりだ。そーした方が、効率がいいかもしれない。」
グレイスも納得する。
「リシアの波長が、こういう波長だから、セリアちゃんの方も同じ波長にすれば受け入れやすいし、リシアにも負担はかからないですし。」
パソコンを使いながら、にっこり笑って説明した。
「うん…。それはいい…。さっそく取り組もう。」
はい決定!

☆     ☆     ☆

「ただいまー。」
それから数週間後、ウィルの意見で思ったより早く完成し、カーシスも認めるほどとなった。
「おかえり…今日はずいぶんと遅くて…。」
心配そうな顔つきで、アルスが言う。
「まだ、徹夜にならないだけいいさ。」
ふっ、とウィルが笑う。このごろ、セリアに付きっきりで研究を進めているウィルのとって、今はとても目が放せないのである。
「大丈夫?」
そっと聞くアルス。
「あー。」
そう言って、部屋へと戻っていった。
『ウイーン』
ウィルはパソコンを付け、メールを開いた。
「ん…?」
そのメールはウィルにとって、とても興味深いものだった。
「ま…まじかよ…。」
ウィルは息をのむ。
「リシア!!リシア!」
休んでいたリシアを叩き起こすウィル。
「なによ。いきなり…。」
ちょっと寝ぼけて言う。
「学会が実験を認めてくれたんだ!!これで明日にでもすぐに、お前のプログラムをセリアちゃんに、インストールすることができる!」
興奮気味のウィルに、リシアはびっくり。
「ほ…本当なの?」
「あー。あ〜 明日が待ちきれない。」
落ち着かないウィル。まぁーそーだろう。アンドロイド研究は、あんまり学会から認められていなかったのである。だけど今回、学会も認め、はれてどうどうと実験することができるというわけだ。
「わーい!!明日が楽しみだぜ!!」
まるで、次の日の遠足を楽しみにしている子供のような…。
「がんばってね!」
たまたま通りかかって、聞いていたアルスが言った。
「あー。」

☆     ☆     ☆

「おはよーございます!!」
おもいっきりドアを開けて入ってきた。
「おー。予想通り早かったな!!」
「え?」
行動パターンをよまれているウィル。
『ザワザワ』
いーっぱいの人がいる。
「それじゃー、そろそろ始めるから、用意してくれ。」
「はい!!」

☆     ☆     ☆

「電力スタンバイOK!」
「配置完了。」
「リシアちゃんもOKでーす!!」
あいかわらずハイ…。
「本当に大丈夫なんだな…。」
心配そうな顔でリシアを見つめる。
「そんなに見つめないでよー・減っちゃうでしょー。」
『ガタ』
数人の人がこけそうになった。
「減るか!?」
「あはは 大丈夫よん。」
余裕満々。
「それじゃーいきます。スイッチON!!」

☆     ☆     ☆

『ガチャ』
「おかえりなさい。ウィル。」
にっこり笑ってむかえるアルス。
「ただいま…。」
ウィルは、なぜか安心したような顔をして、アルスに笑いかけたのだった。

最終話   おしまい

後書きへレッツゴー!!