「おはようございます。」
「おう。」
ウィルは、昨日のことがふっ切れたのか、グレイスに普通に接した。
「はーい!!リシアちゃんもいまーす。」
あいかわらず、ハイである。
「やぁー。」
「今日は、どーするんですか?」
「えーとね、ちょっとこっち来てくれ。」
そう言って、準備室っぽい所の前に呼ばれた。
「ここは…。」
不思議そうに見る。
『コポコポ』
よーく耳を澄ましてみると、中から何か音がする。
「さぁー。」
そう言って、グレイスはドアを開けた。
「真っ暗ね…。」
リシアは周りを見渡した。
『パチ』
「う…うわー。」
電気を付けるなり、ウィルは叫んだ。プラス、感動した。
「… 」。
リシアは放心状態に陥った。
「これは…。」
驚きを隠せないウィル。
「これは教授と共に、2年前から研究しつつ作ってきたアンドロイドさ。」
「すっげー。しかもヒューマンロイド型じゃないですか
!?」(人間型ってこと)
「あー。そーさ…。」
『コポコポ』
そのアンドロイドは、バイオー液の中に入っていた。
「女性型、なんですね。」
「じゃなきゃ、リシアちゃんを意識体に使おうなんて、思わないよ。」
「そーですね。」
ちょこっと男性の時だったらってことを、想像してみたウィルだった…。う〜きもい…。
「私、これになるの?」
ちょっと嫌な顔をするリシア。
「あー。そーだよ。でも一時的なものさ。」
「え?」
ウィルはその言葉に反応した。
「実験結果が出るまでの間だけ。それなら問題ないだろう。」
「あ…はい。」
なんか変な反応をした。どーやらグレイスは、ウィルがグレイスに反発したことが、リシアの存在が別の物になるのが嫌なんじゃないかと、考えたらしい。ところで、なぜリシアが嫌な顔をしたのか。まぁーそれはそーだろう。まだ、人間の基礎的な部分しか出来てないから、アマさん風なのである。(言いかえればハゲ)
「あの、そーじゃなくて、これに…。」
リシアはアンドロイドを指差して言った。
「いや、もう少し、改良はするつもりだし、完璧に完成したら、普通の女の子と変わらない姿になるよ。」
あははって感じでの顔で答えるグレイス。
「あ、そーなんだ。」
安心しているリシア。
「この顔でリシアの性格…くっ…わ…笑える。」
笑いたいのを必死にこらえながら言った。
「こらー、変な想像すんなー。」
リシアは、ウィルをべしべし打とうとしたが、ホログラムなので、すかすか通り抜けた。
「むー。」
もっと怒るリシア。
「ふんだ!」
最後にはすねだした。
「ははは。」
グレイスが笑った。
「なーによ!二人してー。」
☆ ☆ ☆
「わるかったよ ごめん、ごめん。」
リシアが怒ってるところに、ウィルが謝った。
「ふんだ!」
まだすねてる。
「…。」
どうしようって感じの顔をした
『ガチャ』
いきなりドアが開く。
「あ!教授!」「アルス!」
二人は同時に言った。
「どうしてここに。」
不思議そうな顔をする。
「いや、暇だったからのー。アルスを連れて、暇つぶしじゃ。」
あっはっはっ、という感じの顔で言う。
「暇つぶしって…。」
「どうだい?セリアの様子は…。」
「えー。順調ですよ。」
「そうかい。」
カーシスは安心したような顔をした。
「…。」
この時ウィルは、その顔に疑問を抱いた。
「さて、ちょっと見せてもらうよ。」
「えー。」
グレイスはなんだか、あんまり浮かない顔をしていた。
「…。」
カーシスはただ黙って、セリアと呼ばれたアンドロイドを見ていた。
「!?この人…カーシスおじいさん…。」
アルスは不安そうな顔をして、カーシスを見つめる。そしてカーシスはアルスに笑いかけ、何も言わずに出ていった。
『バタン』
「?」
もうウィルには、何がなんだかわからない。
「このアンドロイドは、教授の孫娘さんなんだよ。」
「え…え〜 孫娘 !!」
ウィルは叫んだ。
「この子はね、親と共に交通事故で亡くなってしまったの…。」
「え…。」
「彼女はまだ12歳で、死ぬにはかわいそすぎるし、カーシスおじいさんは、すごくセリアちゃんを可愛がっていたし。」
「それでその子の細胞を使って、アンドロイドを作ったってわけか。」
やっと納得したウィル。
「そう…。」
悲しそうに言うグレイス。
「でもそのアンドロイドに、私の記憶を入れちゃって、よろしいのでしょうか?
」
「あー構わないよ…。これは、教授と二人で決めたことだし、なによりセリアちゃんと、性格が似てるしね!」にこっと笑う。でもぎこちない。
「リシアと似たような…
なんか…すごい性格だったんですね、セリアちゃんて…。」
ちょっと想像してから言う。
「はは、まぁーね。」
「ちょ〜っと!!それどーいう意味よ。」
リシアが突っかかる。
「あはは。なーんでもねーよーだ!」
笑って言う。
「あ!ちょっ、ウィル!!」
また怒る。
「俺、アルスを送ってきますね。」
そう言って、逃げるようにして部屋を出ていった。
『バッタン』
「うっもー。」(牛)
「さて、リシアちゃん。研究に付合ってもらうよ。」
「はーい。」
何だかしょうがなく、って感じの言い方で言った。
☆ ☆ ☆
「今日はどーしたの?」
エスカレーターを下りながらウィルが聞く。
「え…カーシスおじいさんが、行こうって言ったから…一緒に…。」
「でも…結局、カーシスじいさんは暇つぶし、とか言いいつつ見たらすぐ帰っちまったよなー。いったい…何しに来たんだろ。」
「セリアちゃんに会いに来たんでしょう?」
勢い良くエスカレーターから下りるアルス。
「会いたいから、会いに来る…べつにいーんじゃない…。それじゃー。ありがとうじゃーね〜ん。」
にこっと笑って出ていった。
「会いたいから…会いに来る…か…。」
ウィルはぽつりとそう呟いた。
☆ ☆ ☆
「しつれいしまーす。」
そう言って、ウィルは研究室に入る。
「あれ?」
だが、誰も居なかった。
「ん?」
さっきの部屋から物音がした。
『ガチャ』
「あ…髪が…。」
入るなりぼそっと言った。
「あ!ウィル…そこの書類を取ってくれないか?」
グレイスが話しかけてきた。
「あ!はい…。」
ウィルはグレイスに書類を渡した。
「あの…セリアちゃん…。」
「あー。リシアの情報を。ちょっとばかし突っ込んでやったらさ、すぐ反応して…。すげーよ。」
「はぁー。」
感心するウィル。
「セリアちゃんて、カールっ毛なんすね…。」
「あー。そーだよ。」
今わかる。セリアは、髪の毛がオレンジのちょっと薄い感じで、カールがかっていて、中途半端な長さ。(裏表紙の絵の人です。沙耶の絵)(だったんです)
「よし。こんなもんか…。」
グレイスは終わらせた。
「あの…リシアは?」
リシアの姿が見えないので心配した。
「あー。はい。」
そう言って、ホログラフィーの映像装置を渡された。でも、リシアは写っていない。
「あれ、リシア?」
「あー、たぶん寝てると思う。」
っと片付けをしながら言われた。
「はぁ〜。」
不思議そうな顔して言うウィル。
「ちょっといろいろと、がんばってもらったからね…。」
「ふーん…。」
「すっごくセリアちゃんと相性が良くってさー。セリアちゃんもすぐ、リシアちゃんのデーター、受け入れてくれたし…。先が期待できそーだよ…。」
すっごくうれしそうに言う。
「はぁー。」
ちょこっと圧倒される。
「俺ちょっと出かけてくるから、お留守番よろしく。暇つぶしに、パソコン見てていーよ。」
そう言って、出ていってしまった。
「忙しー人だ。」
呆れながら言う。そしてパソコンの前に座る。
「はぁ〜。すげー。アルスのとこより、さらにすげーぞ。」
さすが研究所ってとこだろうか、家庭用パソコンとはひと味違う。
「うおー。はえー。」
感動するウィル。
「ん…?」
ウィルは、アンドロイドと書かれたフォルダを見つけた。
「…ひらいちゃえ。」
一瞬戸まっどったが、開いてみた。
「…すっげー。」
そこにはアンドロイドのことを、事細かに記してある設計図らしきものがあった。
「アンドロイドって、こんなんでできるんだー…。」
感心しているウィル。ウィルはグレイスが帰るまで、パソコンにへばりついていた。
☆ ☆ ☆
「ウィル、お留守番ごくろー…さん。」
グレイスはウィルの姿を見るなりびっくりした。だってすっごく楽しそうに、パソコンを見てるのから。
「どーした?」
グレイスがウィルの顔をのぞき込む。
「え?あ…すごいなー、とか思って。」
「あーこれね…。これは、カーシス教授と二人で、設計図からたてて作ったんだ…。なんか感想ある?」
聞く。
「えーと、一つ思ったのは、ここにこの要素を加えて…。」
この後も、ウィルはいくつかのアドバイスをした。
「あー、そのとおりだ。そーした方が、効率がいいかもしれない。」
グレイスも納得する。
「リシアの波長が、こういう波長だから、セリアちゃんの方も同じ波長にすれば受け入れやすいし、リシアにも負担はかからないですし。」
パソコンを使いながら、にっこり笑って説明した。
「うん…。それはいい…。さっそく取り組もう。」
はい決定!
☆ ☆ ☆
「ただいまー。」
それから数週間後、ウィルの意見で思ったより早く完成し、カーシスも認めるほどとなった。
「おかえり…今日はずいぶんと遅くて…。」
心配そうな顔つきで、アルスが言う。
「まだ、徹夜にならないだけいいさ。」
ふっ、とウィルが笑う。このごろ、セリアに付きっきりで研究を進めているウィルのとって、今はとても目が放せないのである。
「大丈夫?」
そっと聞くアルス。
「あー。」
そう言って、部屋へと戻っていった。
『ウイーン』
ウィルはパソコンを付け、メールを開いた。
「ん…?」
そのメールはウィルにとって、とても興味深いものだった。
「ま…まじかよ…。」
ウィルは息をのむ。
「リシア!!リシア!」
休んでいたリシアを叩き起こすウィル。
「なによ。いきなり…。」
ちょっと寝ぼけて言う。
「学会が実験を認めてくれたんだ!!これで明日にでもすぐに、お前のプログラムをセリアちゃんに、インストールすることができる!」
興奮気味のウィルに、リシアはびっくり。
「ほ…本当なの?」
「あー。あ〜 明日が待ちきれない。」
落ち着かないウィル。まぁーそーだろう。アンドロイド研究は、あんまり学会から認められていなかったのである。だけど今回、学会も認め、はれてどうどうと実験することができるというわけだ。
「わーい!!明日が楽しみだぜ!!」
まるで、次の日の遠足を楽しみにしている子供のような…。
「がんばってね!」
たまたま通りかかって、聞いていたアルスが言った。
「あー。」
☆ ☆ ☆
「おはよーございます!!」
おもいっきりドアを開けて入ってきた。
「おー。予想通り早かったな!!」
「え?」
行動パターンをよまれているウィル。
『ザワザワ』
いーっぱいの人がいる。
「それじゃー、そろそろ始めるから、用意してくれ。」
「はい!!」
☆ ☆ ☆
「電力スタンバイOK!」
「配置完了。」
「リシアちゃんもOKでーす!!」
あいかわらずハイ…。
「本当に大丈夫なんだな…。」
心配そうな顔でリシアを見つめる。
「そんなに見つめないでよー・減っちゃうでしょー。」
『ガタ』
数人の人がこけそうになった。
「減るか!?」
「あはは 大丈夫よん。」
余裕満々。
「それじゃーいきます。スイッチON!!」
☆ ☆ ☆
『ガチャ』
「おかえりなさい。ウィル。」
にっこり笑ってむかえるアルス。
「ただいま…。」
ウィルは、なぜか安心したような顔をして、アルスに笑いかけたのだった。
最終話 おしまい
|