―遥か…遥か遠い、宇宙の彼方。一人の少年は、そこを彷徨っていた。その少年の名は、ウィル。年齢は16歳。機械専門で勉強し ていて、何気に勉強家である。そのうえ、IQ280の天才少年。え?なぜそんな人がこの宇宙を彷徨っているのかって?それは、ウィルが住んでいた星、シーイブル星は、宇宙戦争の真っ只中。そのシーイブル星が、負けてしまうという情報を得た人々が、大型宇宙船に乗り込み、その星を脱出しようと試みた。しかし敵はそれを見逃さなかった。攻撃機能をほとんど取り付けていないこの大型宇宙船は、無惨にもやられてしまったのである。だけど、ウィルは奇跡的にその宇宙船から逃げ出すことが出来たのである。他の数名も…。しかし、ウィルだけはどこかの星に引っ張られるように軌道を変え、みんなと離れていった。それから2セル(セルとは、日本語でいう時間のこと)、ウィルはただ、宇宙を彷徨っていた。 「なんの…音?」 『リン、リリーンリーン』 第一話 おしまい
「あ… ここは…。」
ウィルは目を覚ました。今まで気絶していたのである。
『ビー、ビー、ビー』
いきなり前にある機械が鳴り出した。
『軌道が違っています。すぐ軌道をノーザ40、ウェーザスト170に設定し直して下さい』(ノーザは北)(ウェーザストは西)
「はっ!?ノーザ40、ウェーザスト170って
…て、敵の星じゃねーかよ!」
ウィルは一気に目が覚めた。それはそーであろう…。敵の本拠地に行けと言うのだから。
『設定し直して下さい』
「ふざけんなよ!!敵の星に行けって言うのかよ!」
っと機械に叫んだ。
『あなたが設定し直さないなら、私が設定します。オートモード発動』
機械は勝手に設定し始めた。
「あ!!ちょっ、待てよ!マジかよー。」
ウィルはおもいっきり慌てた。
『ビー、ビー…制御不能、制御不能』
「へ?」
『サーズ110、イーザスト80に墜落します』(サーズは南)(イーザストは東)
「サーズ110のイーザスト80ってどこだ?なんて、うんなのんきなこと言ってる暇なんかねーよ!?うわっ!落ちるーーーーーーー。」
そう言っている間に救命ポットは傾き、その星へと落ちていった…。そういえば、サーズ110、イーザスト80という所にある星は、シーイブル星では知られていない星なのである。ウィルはそこへと引っ張られていたのだ。
『ドッカーン!!』
っとすっごい音をたてて、地面に落っこちた。そのショックでウィルは気絶した。あ!ちゃんと生きてます…。(主役が死んだら終わっちゃう…)
一人の少女が目を覚ました。落っこちた時、夜中のうえその星のひとけのほとんどない所に落ちたので、気付いた人はほとんどいなかった。
『ザー…、ザー』
どうやら、落ちた所は海のような所だったらしい…。波の音が聞こえていた。
『ザッ』
砂を蹴る音がした。さっきの少女である。
「何…?この機械…。」
少女は恐る恐る、ウィルの乗っている救命ポットに近付いていった。
『プシュー』
何かに反応したのか、壊れかけたドアが開いた。
「…人?」
少女はウィルに気付き、そぉーっと近付いた。そして少女はウィルを機械から出し、自分の家へと連れていった。(引きずって…)
風鈴の音が鳴り響く。
「ん…あ…。」
ウィルは風鈴の音で目を覚ました。
「ここは…どこだ 。」
いつもと天井が違っていたので、不思議に思った。
「あ!目を覚ましましたか?」
さっきの少女が、部屋に入ってくるなり言った。
「き…君は?」
少し警戒しながら聞く。
「そんなに警戒しないで。べつに、怪しい者じゃないから。」
にっこり笑って言う。
「私の名前はアルス。15歳で、この家に住んでる女の子。あなたは?」
っと唐突に質問した。
「え、あ…俺は、ウィル。16歳…。」
少しびっくりしながら答えた。
「ふーん。じゃあ、私より一つ年上なんだね。」
アルスは少し笑って言った。
「あ…あー。」
驚きを隠せないウィル。だってそーだろう。普通は恐がるか、警戒するか…。それ以前に、どこかの星から来た、全然知らない奴を助けてくれたこと事態が、驚きである。
「ウィルさん…って、呼んでもいいですか?」
訴えるような目をして言った。
「え…ウィルでいいよ。」
ウィルは、その目を避けるように別の方向を向いて言った。
「え…でも、あなた年上さんだし…、」
「誕生日いつ?」
言いかけている時に、ウィルが言った。
「へ?あ…ドギの11日生まれですけど…。」(ドギとは3月のこと)
っと、目をパチクリさせて答えた。
「やっぱりな。俺は、シラクの29日生まれ。だから、俺とお前は同じ年生まれだよ。」(シラクとは10月のこと)
ウィルもそこで始めて笑った。
「あ!そーなんだ…。えーと…じゃー、よ…よろしくね。ウィル。」
少しぎこちない言い方をしながら、手を差し伸べた。
「あーよろしく。」
ウィルも手を差し伸べて、アルスと握手した。