「おーい、ウィル!こっちだよ。」 「ただいま。」 「ん…あー。食った、食った。」 「さて、今日も行きますかー。」 「いってきまーす。」 「ただいま。」 第七話 おしまい
グレイスは、手を振ってウィルに言う。
「今日からお世話になります。」
とりあえずあいさつ。
「今日は、この研究所の説明と、いろんな人へのあいさつだから。気楽に行こうぜ!」
ニッと笑って言う。
「はぁー。」
そしてまず最初に、グレイスの研究室に案内された。
「ここがおれの研究室…つっても、もとはカーシス教授のもんだけどね。」
のわりには、結構新しい…。
「明日から真っ先にここへ来てくれ。」
「あ!はい…。」
「さー、次へ行こう。」
そう言われ、次々にいろんな所を案内された。資料室、大会議室。ここを作った人たちの所など、さまざまな所へと…。
「本当に広いっすね。」
感心するウィル。
「迷うなよ。」
からかい半分でグレイスが言った。
「あー、それは大丈夫です。」
にっこり笑って言った。
「そいじゃ、俺帰りますね。今日はありがとうございました。」
そう言って、ウィルはさっさと帰っていった。
「…どーいうことだろう…。」
ウィルの言った、あの「大丈夫」っという言葉に、グレイスは疑問を持った。
「おっかえりなさ〜い・」
いきなりのリシアのお出迎え。
「こんなに早いんだ。」
っと不思議そうに言う。
「今日は、案内だけだったんだよ。」
「あっそ…。」
「あれ?アルスは?」
ウィルは、アルスが居ないことに気付いた。
「気になる?」
不適な笑みを浮かべるリシア。
「んなこと、どーでもいいだろ。」
「ちぇー。」
反応がいまいちだったため、リシアはつまらなそう。
「で、どっか行ったの?」
「外だよ。」
「外?」
そう言って、ウィルはベランダへ出た。
「あ!本当だ。」
そこには、空を見上げているアルスがいた。
「なんか見える?」
ウィルはアルスに話しかけた。
「あ!おかえり…。…ここは…何も見えないよ。」
空を見つめながら言う。
「え?あ…ただいま…。何も見えないって…。」
そう言いながらウィルも空を見上げた。
「…本当…だ…。」
本当に、空には一つも星らしきものは見つからなかった。
「…曇り、なのかな
?でも…なんでこんなに明るいんだ…。」
まるで、月のようなものが出ているかのような、明るさだった…。
「たぶん、あれのせい。」
そう言って、空に浮かぶ小さな惑星のようなものを指さした。
「うお…ちっちぇー。」
本当に小さくて、ウィルは気付かなかった。だいだい、米粒ぐらいにしか見えないのに、異様な光を放ち、周りを明るくしていた。
「あれは、何?」
「あれは、TディライアUっていうの。」
「ディライア?」
聞いたことがないって顔をした。
「あの星を最初に見つけた人が、ディライアさんっていうんだって。」
「ふーん…なんか、名前の付け方がうちの星と似てる。」
「ウィルの星もそーなんだ。」
「うん…。」
なんだか、どこの星でも同じなんだなー。(そーしたの)
「さて、ごはんにしますか。」
そう言って、ベランダの柵から離れた。
「いいね。お腹空いた。」
そう言って、二人は家の中へと入っていった。
「食べ過ぎだよ。」
リシアがぼそっと言った。
「はっは。まぁーそー言わずに、おまえも食え。」
っと言って、コードにぶっ差した。
「あ〜なんか力がわいてくる。」
リシアは気持ち〜って感じの顔して言った。やっぱ機械やねー。
「さて、そろそろ来てるかなー?」
そう言って、パソコンのマウスを動かした。
「あ、来てる、来てる。」
「何が来たの?」
リシアが不思議そうに聞く。
「ん?メールだよ。グレイスさんからの。」
「ふーん。」
二人はメールを見た。
「げっ!明日、七時に集合!?うー。」
何気にウィルは、早起きが苦手…。
「私が起こしてあげましょう。」
「えー?」
「なによ、そのえー?って…。」
リシアが突っかかった。
「べつに…。」
「あー!もうなによ!!」
リシアは怒る。それとは裏腹に、ウィルはパソコンをやるのを続けた。
「あ!!これか…。」
ウィルがいきなり言った。
「なにさ!」
まだ怒ってる様子のリシア。
「ん?これ?研究所の中の地図。」
「うっそー。広い。」
リシアは感心した。
「覚えたからイイって言ったのに 。」
「え!?もう覚えたの!?こんな広いとこ。」
びくるリシア。
「うん。」
さらりと答えるウィル。
「なっ!?今日と昨日行っただけなのに…え!?」
リシアはパニくった。
「あはは。」
笑いながらパソコンをいじる。
「…天才って嫌い…。ふんだ。」
リシアはふてくされた。
「なんだよ。」
次の日の朝、珍しく早起きしたウィルが言った。
「おはよう。朝ごはんできてるよー。」
「おう!」
そう言って、ウィルはごはんを食べた。
そう言って、ウィルは研究所へと向かった。
「さて、今日は何するんだろー。」
ウィルは本当にうれしそーに言った。まぁー昔じゃ、こーはいかなかったから。なぜかと言うと、ウィルの生まれた星というのは、見てわかるとおり、この星なんかと比べものにならないくらいに、なにもかも発達している。そこに何も知らないウィルが行けば、天才も何も関係ない。だから、どれも新鮮で、とてもおもしろいのである。
「しつれいしまーす。」
ウィルは迷わずに、一発でグレイスの研究室に着いた。
「おう!早かったな。」
「えー、覚えましたし…。」
「まじかい。」
「はい。」
にっこり笑ってウィルが言う。
「まぁーいーや。あ!えー、音声プログラムちゃん…なんてったっけ?」
ド忘れするグレイス。
「あ!リシアのことですか?」
「あー、そうそう!リシアちゃん。今日連れてる?」
グレイスはポンッと手を叩いて言う。
「あ…いつも置いてきちゃってますけど 。」
「あー、そうか…。」
ちょっと残念がっている様子。
「あ!でもパソコンがあれば、呼び出せるかもしれない。」
思い出したように言う。
「本当!?」
うれしそう。
「はい!試してみます。」
そう言って、パソコンの前に座った。
『カタカタ』
いろんなソフトを起動させ、キーボードーをばしばし押す。
「へー。」
グレイスは感心していた。
「よし!」
そう言って、リターンキーを押した。
「おーいリシア!」
ウィルはパソコンに向かって叫ぶ。
『ザーザッザーウィ…ザール?ザー』
ノイズが激しくて、よく音を聞き取れない。
「 …えーと。」
ウィルは考えだした。
「こっちの音声調整すると、ノイズ消えるよ。」(クリアーボイス)
グレイスはパソコンの画面に手を当て言う。
「あ!ありがとうございます。」
そう言って、調整した。
『ビー、ウィル?』
やっと聞こえるようになった。
「おい!リシア!聞こえるか?」
『うん…聞こえるよ…どーしたの?』
不思議そうに聞く。
「リシア!通信機能だけをONにしてくれ。」
「はぁー。」
もうリシアには何が何だかわからない。
「ちょっと待って。」
そう言った10秒後、パソコンにリシアの映像が映った。
「おう!」
グレイスは驚いた。
「やっぱり。ありがとうリシア。」
『いったいなんだったのよ 』
「え?あ!グレイスさんが呼んでって…。」
そう言って、ウィルはグレイスの方を向いた。
「あ!えーと、やぁ!リシア。」
まずはあいさつ。
『はーい、ども!こんちは。」
リシアも笑ってあいさつする。
「ところで、今日は何用で?」
「あーえーとね、」
本題に入る。
「俺たちがアンドロイドを作ろうとしてるのは、知ってるよね。」
グレイスはいきなり真面目な顔になった。
「え…うん。」
ちょっと圧倒される。
「それで、リシアに頼みたいことがあるんだ。」
「私に?」
自分を指差してリシアが言う。
「あー。」
「その頼みって?」
「アンドロイドの意識体になってほしいんだ。」
「え!?×2?」
今まで黙って聞いていたウィルも、リシアと同時に反応した。
「そんな もし失敗したら、リシアのプログラムが !?」
ウィルは席を立つ。
「まぁー落ち着いてくれ。」
グレイスはウィルの肩をポンッと叩き、椅子に座らせた。
「うっ。」
「まぁーウィルの言う通りだけど、心配はいらない。」
「え!?」
得意げに言ったグレイスに、水を射すような言い方をするリシア。
「君は、元はプログラムだから、アンドロイドにインストールする前に、記憶というか、今まで覚えたことをパソコンに保存する。もし、失敗したとしても、デリートされることはまずない。」
「でも、失敗すればデリートされちゃうんでしょう? 」
不安げな顔のリシア。
「それは、失敗したらの話さ!もしデリートされても、その前の記憶、データーをロードするから、デリートした時の記憶はないよ!」
っと説明する。
「あ!そっか…。」
納得するリシア。
「で、どーかな?」
「うん…いいよ。」
OKする。
「…。」
あんまり乗り気でないウィル。
「よろしく。リシアちゃん。」
「はい!」
にっこり笑って言う。その後、リシアとの通信を切った。
「どーして、リシアなんですか。」
ウィルは少し恐い顔して聞く。
「え?やっぱ、最初から記憶があった方がいいかなーと思ったから。」
「べつに、これから記憶なんていくらでも作ってやればいいじゃないですか!?」
大きな声を張りあげてウィルが言う。
「そーすると、研究成果が学会に発表するのが遅くなる。」
「なっ!? 」
その言葉にウィルは突っかかった。
「このアンドロイドの研究は、制限期限があるんだ。ずっと研究してられるわけじゃないんだ。わかってくれ。」
「…。」
ウィルは、その後一言も喋らなかった。
「おかえりー。」
リシアが出てきた。(でたって)
「あー…どーしてOKしたんだよ。」
「え…なんか…べつにいーかなーって…。」
なんか単純な理由…。(理由か?)
「まぁー、いーけど。」
そう言って家の中へ入っていった。
「え!?なんかいけなかった?」
リシアはウィルの後を追い掛ける。(装置から3Mは、移動可能)
「だから、べつにいいって 」
あきれ顔で言う。
「ねー?いけなかったの? 」
ウィルの顔をのぞき込む。
「心配なのよね。リシアのこと…おかえりなさい。」
アルスが出てきて言う。
「…べつにそーいうわけでは…あ…!ただいま。」
「それなら大丈ー夫!!心配には及びませんよー。」
にっこり笑って言う。お気楽さんですね
そういえば、ウィルが気にしてることは、アルスのことだったりする。こないだ、一人でいるのは寂しい気がする…なんて話を聞いて以来、結構気にしているのである。たまに寂しそーにしてるのを、ウィルは見かけていた。でも今は、リシアがいるから安心していたウィルだが、今回協力するとなれば、アルスの側に居られなくなる。そーなると、この家にアルスを一人残すことになる。それを、ウィルは心配しているのである。だから、グレイスに反発したり、リシアにあんなことを言ったりしたのだ。
「ねーウィル。本当は違うんでしょう。気にしてること…。」
部屋に行くなり、リシアが言い出した。結構するどいリシア。
「…べつに…おまえが気にすることはないよ。」
パソコンを付けながら言う。
「…。」
ウィルはパソコンに今日のことをうちだした。