「エルナ…?どうしたんだよ、いったい…。」
エルナは走ってきたようで、息を切らしていた。
「師匠…どこ…行くの…?」
「どこ…って…。…わかるだろ?…今たいへんなんだ。」
「…。」
エルナは黙って下を向いた。
「とにかくあぶないから…っ、部屋に戻れよ。」
「…っあぶないのは師匠も同じだよ!!」
顔をあげたエルナを見てトアはドキッとした。エルナの目には涙がたまっていた。
「あ…(汗)」
トアは困った。
「し…心配すんなよ…(汗)」
「心配すんなって言われても心配だよ…ッ!」
「大丈夫だよ…。大丈夫だから…っ。」
再び攻撃の音がしてきた。トアはハッと急がなきゃと思った。
「お…俺もう行かなきゃ…。本当に大丈夫だからっ部屋戻ってろっ。」
トアは走り出した。エルナは急いで呼び止めた。
「し…っ師匠!!」
トアは振り向いた。
「あ…あたしっ『師匠』はトアじゃなきゃ嫌だからねっ。トア以外の師匠なんて、絶対ヤだから…っ!!」
泣きながら言うエルナに、トアは微笑んだ。
「バーカッ、俺は死なねーよっ!…死んでたまるかっ!」
−−−−−−だって、君にあえたから…−−−−−−
☆ ☆ ☆
トアは外に出た。”fort”はもすごく近くにいた。
「うっわ、こんなに近いのかよ(汗)」
トアは”fort”からも自分と同様に中から出てきた人を見つけた。
「あれは…?」
ティトだ、と彼は気付いた。ティトもトアに気付いた。
☆ ☆ ☆
−”fort”
「ようティト、向こうなかなかしぶといぜ。」
一人の男がティトに話しかけた。ティトはその男を横目でちらっと見て言った。
「おまえら、ちょっとひっこんでろ…。」
「え?」
「ひっこめよ。」
口を出したのは”fort”の頭だ。
「頭?」
「ひっこめっつってんだ。…おもしろくなってきたぜ。」
ティトはゆっくり前に出て行った。
☆ ☆ ☆
「お、おいトア…攻撃がやんだぞ?」
「…見ろよ…。ティトだ。」
「え…っ?」
「ティトッ!!」
トアは大声でティトを呼んだ。
「どーする気だ?」
「…トア、話さねーか?」
「…は?(汗)」
「”fort”は”castle”を墜としたいんだってよ。おまえはどーする気なんだ?」
「…決まってんだろ。墜とされる前に墜とす!」
「頭…(汗)ティトは何をのほのほしゃべってんでしょう。」
「まぁちょっと黙っとけ。」
ティトはトアの言葉を聞いて少し笑い
「じゃあしょーがねぇな…。」
と言って手を構えた。
「!」
ティトは火を放った。トアは慌てて風を起こした。
☆ ☆ ☆
「し…師匠ぉ〜(汗)」
エルナは部屋の中から、窓にへばりついて外の様子を見ていた。
「…っていうか、ティトって落第寸前じゃなかったの?なんであんな強い火放てるのよ(汗)」
ルーラが不思議がった。
「あ!!火が消える!!」
ティトの火はトアが起こした風で吹き消された。
「すっごぉーい師匠!火消しちゃったぁ…!」
「ちょ…ちょっとちょっと(汗)何で風であおられて強くなったりしないの?それよりどっかに燃え移ったらどーするのよ。やっぱ火消すには私の水が…。」
「もしかしてさ…あのティトさんって、風に…と言うより師匠にコンプレックス持ってるのかも…。だから火消えちゃったんじゃない…?」
☆ ☆ ☆
「ティトおまえ…、やっぱり魔法の腕上がってたんだな。」
「…まーな。魔術なんて覚えるの簡単で授業なんかやってられねーんだよ。天才は俺の方だったみてーだな。」
「だから俺は天才じゃないって言ったろ?」
「…おいティト。」
”fort”の頭が口を開いた。
「いつまでくっちゃべってんだ、そろそろいーだろ?」
「…ティトッ!」
トアが言った。
「おまえ本当に”castle”裏切ったのかよ。…”fort”の仲間になって…、もう俺も敵なのか…?」
「…。」
「おい…、ティトおまえが攻撃しねぇんだったら、俺がするぜ?はやくしろよ、おまえが”castle”墜とすんじゃなかったのか?」
頭が言うと、ティトは口を開いた。
「…ヘンな勘違いすんなよ。」
「何?」
「俺は”fort”(おまえら)の仲間になったなんて一言も言ってねぇし、”castle”を裏切った訳でもねぇんだよ。」
「何それ!?」
トアが叫んだ。ティトは続けた。
「俺はただ、”castle”はつまんねぇし、”fort”に来てみただけだ。戦争なんか俺には関係ねーよ。どっちの味方につく気もないんだよ。」
「だっ!だったら”castle”(こっち)帰ってこいよ!!」
トアが必死に言った。
「おまえが望むならそーしてやってもいいぜ。」
「ま…まじでえ!?そんなアッサリ?(汗)じゃあ早くこっち来いよっ!!」
「バカ俺は飛べねーよ!」
「頭、どーすんですか、ティトの奴俺らを裏切って…(汗)」
「あのやろー…。」
頭はキレた。
「ティトッ後ろ!!」
「!」
頭が放った魔法弾をティトはすかさず止めた。
「ティト…俺たちを裏切るとどーなるか…わかってんのか?」
「…裏切る?バカじゃねーの?さっきも言ったろ、俺は”fort”(おまえら)の仲間になんてなっちゃいねーんだよ。裏切りもクソもあるか。」
「ティト!」
トアの声と同時に風が起こった。…トアが起こした風だった。
「ティト風に乗って!」
「おう!」
ティトがその風に身を任せると、あっという間に”castle”の戻った。
「あんのやろー(激怒)」
頭が再び魔法を使おうとした瞬間、トアが風を起こした。その風は竜巻となって”fort”を飲み込んだ。
「うわあああ!!」
”fort”はそのまま遠くへ吹き飛んだ。・・・その後どうなったかは誰も知らない…。
「やったなトア!!」
”castle”では歓声が上がり、トアは胴上げされた。少し騒ぎがおさまってから、トアはティトと目が合った。
「ティト…よかった。裏切ったんじゃなくて…。」
「礼は言わねーけど…おまえって本当熱血だな。」
「なんで?」
「…なんでも。」
ティトはそう言うと行ってしまった。
「そーいうあんたも、本当素直じゃないよねぇ…。」
トアはティトの後ろ姿につぶやいた。トアにはわかっていた。ティトはトアが”fort”ごとティトも飛ばさなかったことを、ひそかに感謝して・・・照れているのだろう。
「師匠!!」
「エルナ…。」
エルナは、また走ってきたようだった。
「よかった…師匠が無事で…。」
「言っただろ、俺は死なない…って。」
2人は笑いあった。
☆ ☆ ☆
トアとエルナは誰もいない静かな所で腰をおろした。
「…ねぇエルナ…、さっき言ってたこと…。」
「へ?」
「師匠はトアじゃなきゃ嫌…ってやつ…、あれってさあ…。」
「あっあれはねっ、あの…あれはその…なんつーか…(汗)」
エルナは顔を真っ赤にしてうろたえた。それを見てトアは笑った。
「俺は、エルナのこと好きみたい。」
「うえッ!?」
エルナは心臓が飛び出しそうになるほど驚いた。その後ちょっと考えてから言った。
「…みたい?」
「いやっ!?(汗)…好き…ですッ。」
トアがそう言うとエルナはにっこり笑った。それでも何も言わなかったが、トアにはなんとなく伝わってきた。
「信じていいの?」
トアが言うとエルナはうなずいた。
「…いいよ。」
☆ ☆ ☆
2人はしばらく黙って、青く澄んだ空を眺めた。
「あたしね…わかってたんだ。」
エルナがふと口を開いた。
「…何を?」
「一ヶ月くらい前…燃料切れの気球を助けた人…。」
エルナは笑った。
「あたしの…あこがれの人。師匠でしょ?」
トアはドキッとした。
「あ…えっと(汗)」
「最初は知らなかったけどさ。考えてみると師匠しかいないもん。”castle”で一番の風の使い手で…15歳で…優しい心を持ってる人…。」
トアは赤くなった。
「…まぁルーラに教えてもらったんだけどね。ホントは。」
しばらくまた沈黙になった。空は穏やかで、優しい風が吹いていた。
「ねぇ師匠ってさ、やっぱ人の役に立ちたかったんじゃない?」
「え。」
「ここに入学した理由。あたしと同じで、魔法で人助けしたかったんだよ、きっと。」
「うん…そーかも。」
☆ ☆ ☆
数日後…。今日もまた、トアとエルナ…その他の生徒もみんな修業を続けていた。
「ルーラは今どんな?」
エルナがルーラにたずねた。
「んっとね、私は今、水の量の調節(上級編)って感じかな。」
「へー。あたしはね、今んーと風で物を動かすこと。これがむずかしくって…(汗)」
「でもエルナって人一倍やる気あるから、上達早いでしょ。大丈夫よ。」
「へへっありがと。」
「それよりさ、トアとはどーなってんの?」
ルーラが興味深々で聞いた。
「えッ(汗)どーなってんの?って、別にどーも…(汗)」
「…うそつけ(汗)」
「あっ時間だっ師匠のとこ行かなきゃっじゃあねっ!!」
エルナは慌てて走って行った。
「…バレバレだよ君…。」
ルーラはエルナの背中を見ながら笑った。
☆ ☆ ☆
「ティト、ちゃんと授業出てるか?」
「出てるよ、よけーなお世話だっ(怒)」
トアは笑った。
「まぁがんばれよー。」
「おう、こーなったらトアより優等生になってやる。」
「おっ言ったなー?聞いたぞー。楽しみにしてるよ問題児君。」
「まぁ俺が退学になったら、誰かさんが追っかけてきそーだしな。」
ティトは笑った。トアはむっとした。
(なんだよそれ(怒))
「そーいやあトアー、あのかわいいお弟子さんとはどんな感じなの?」
「なっ(汗)どんなもなにもねーよ!俺もう行かなきゃ、じゃーな!!」
トアは走り去った。ティトはクスクス笑っていた。
☆ ☆ ☆
「師匠おそーい。」
エルナがふくれた。
「ご…ごめんなさい(汗)」
「もー先生が遅れてどーすんのー。」
「はい…ごめんなさい(汗)って言う俺もナゼ弟子に怒られているのだ(汗)」
「あはは、じゃ、はじめましょー。」
「なんでおまえがしきってんだよっ(汗)」
「なんかどっちが師匠かわかんないね。」
「何言ってんだよ、ロクに魔法使えねーくせにー!!」
「風起こせるもん失礼ねっ!!(怒)」
(…って何で俺ら(あたしたち)ケンカしてんだよ(汗))
トアとエルナは目を合わせて、笑った。
「んじゃ、はじめよっか。」
「うん。」
☆ ☆ ☆
しばらく練習してから2人は休憩することにした。(なんかしょっちゅう休憩してる人たち)
「なーんか結局さぁ…あたし全然師匠の力になってないよねー。」
「え?」
「前に言ったでしょ?あたし師匠の力になりたいの。でもあたし…師匠に何をしてあげられるのかわかんないんだよ…。」
「別にそんなこと考えないでいーのに…(汗)」
「でも…。」
エルナはうつむいた。トアはちょっと困った。
「んーーーーーとさぁ…。なんて言うか…エルナはフツーにしてりゃいいんだよ。俺は…エルナがいるだけでうれしいから。」
トアは微笑んだ。エルナは真っ赤になった…。
☆ ☆ ☆
------見渡すかぎりの青い空。今もこの空のどこかで、笑っている2人がいる…。
最終章 おわり
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