グリブル小説「愛の感じ方」
 

 

「おまえらが別れるとしたら、絶対ブルーからだよな」
「なっ!?」
何を言い出すかぁあああああ!!!!!

愛の感じ方

「…おまえはまたなんで唐突な話題を…」
グリーンの家に遊びに来ていたあたしとレッド。
そこで出されたおいしいおいしい−ほんとに高いからこそおいしいんだって思うような−緑茶を啜りながら、グリーンが驚いた。
「…不吉なこと言わないでよ!!別れないんだからね!!!」
死んだって別れるものか!!
「いや、例えばの話だよ」
彼が、出されたおいしいおいしい−これも老舗ゆえに出せるコクと味わいのある−しょうゆ味のおせんべえをかじりながら言った。
「例えばでもノーサンキュー!!ありえないから!!」
「落ち着けブルー」

彼の唐突発言ゆえに、若干おかしくなるあたしを、引き戻せるのはあなただけよ。

「大好きだもんっ」
あたしはあたしを諌めた彼に、ぎゅっと抱きついた。
「はいはい」

慣れてしまった彼がつまらないような、安心するような。

「なんかふと思ったんだから仕方ないだろう」
そう言いながら、彼はさっきのしょうゆ味とは違う、ゴマ味のおせんべえをかじった。
これもゴマの風味がたまらなくおいしかったやつだ。
ばりんっといい音をたてて割る食べっぷりが、こっちの食欲を駆りたてるが、今そんなことよりも、彼の発言をはっきりさせることの方が先決である。
「だからってなんであたしからなのよ!?」

聞きづてならないのよ!
あたしから別れるってどういうこと!?
ありえないわよ!
絶対ないわよ!
死んでもないの!!

「だって、グリーンからおまえを捨てるっていうのが創造できないし」

 

 


なんだそれ。
しかも想像じゃなくて、創造って言ったわね…。
それって仮想でも空想でも妄想でも考えられないって断言してるわけよね。

「そ、そんなのいくらでも創造できるでしょう!!あたしのこの性格や今までの行いや、それこそ周りの噂とかでもいくらでもっ……っ…」

なんか、自分で言ってて悲しくなるじゃないっ!
何言わすのよ!!!!

「だから、それでこの先嫌いになるんだとしたら、今の時点でそうなってるだろう?」
彼は、あたし達を指さした後、おせんべえでついた塩気を舐める。

確かにその通りだ。
性格にしても、過去にしても、噂にしても、今現在だってそれは変わらないし、積もり積もってにしても、彼といる期間はなんやかんやで長い。
その中でもすでに付き合ってしまってる以上、その理由であたしを捨てるのは、この先というより、今に迫ってる危機に近い。

でも今あたしはこうして彼の家に遊びに来て、彼の部屋に勝手に入り、彼に抱きついてる。
そのことに、彼は一切抵抗を見せず、むしろそれを容易に受け入れてしまっている。

「ほらな…」
あたしが黙りこんで考えていたのを肯定と受け取った彼が、もう1枚のおせんべえに手を伸ばした。
「でも…」

人の気持ちがどこで変化するかなんてわからない…。

そう思いながら、あたしは不安げにレッドを見上げた。
「…まぁ…100%とは、本人じゃないから言い切れないけど、俺は少なからず、99%グリーンはおまえを捨てるとは思えないよ」
俺はね。
と彼は付け加えた。

そんなはっきり言い切っちゃうのね…。
なんか、疑いまくってるあたしが、馬鹿みたいじゃない…。

あたしはそう思いながら、グリーンをそっと見上げた。

それでも不安なことはやっぱり変わらないから。

いくら他人から絶対なんて言われたって、本人がどう思ってるかの証明にはなりえない。

確かに良い方に考えれば考えるだけ、良い答えは出てくる。
でもそれはあたしの憶測であって、グリーンの本音ではない。
実際グリーンがどう思ってるかは、グリーンの“言葉”を聞かない限り、この不安は消えないのだ…。

 

 

だから…

「…グリーン…」
あたしは不安げに、彼を見上げるの。

グリーン…。

グリーン……。

 

 

 

グリーン………。

 

 

 

 


「……」

 

 

 


彼は、ただ苦笑した。

 

 

 

 

 

言葉の代わりにくれた苦笑。

 

 

それに、どんな意味があるのかは、はっきりとはわからないけれど、ただ、なんとなく感じたんだ…。

呆れたような苦笑じゃなくて…困ったようでもあったけれど…でも、それでいてなんだか、肯定の意味をしっかりと感じさせるような…。

なんて説明していいかわからない。

っていうか、あたしのちっぽけな言葉ごときじゃ、とても、とてもじゃないけど説明できない、そんな感情。
言葉にできない想いのような、言葉にしたら駄目なんだと、そう警告されてるような。

なんて言えばいいんだろう。
とりあえず、表現したいのに表現できないもどかしさが、怒りを駆り立てるほどの感覚。

思わず眉間にしわがよりそうだけど、感じたんだから仕方がない。

 

 


彼の……愛を…。

 

 

そう言うと笑っちゃうから、それにも似た感覚って方向で。
なんか、感じちゃったんだもん、仕方ないじゃない。

それで何もかもどうでもいいやって思えちゃったんだから、ほんとにしょうがない。

それだけ大好きなのよね、あたし。

彼がどうしようもなく、大好きなんだわ…。

好きで…
好きで…

 


あぁ、大好き…。

 


「ブルー?」
あたしは、うなだれるように彼の首に腕を回して抱きつく。
彼は少し疑問に思いながらも、あたしの髪を優しく撫でるように抱きしめ返してくれる。

あぁもう…ほんとにそれでいいと思っちゃうじゃないか。

あぁもう…。

「…大好きよ…」

大好きなのよ…。

 

 

遠くで、レッドの生温かい目線を感じた気がしたけど、気がついてなんかやらないわ。

彼からの愛だけを、ただ感じていたいから…。

 

だから、もう少しだけ…あなたの愛を、感じさせて…。


2009年1月12日 Fin


あとがき
実は探すに苦労した作品です。どこやったかと思ったよ(笑)これはなんかバイト行きにふとレッドさんがいきなりしゃべりだしたことが始まり。「なんてことを言い出すのよ!!」と物語は帰り際にPHSに書き込まれていったわけです(笑)いやぁやっと今年の作品においつきましたね。ずっと絵ばっか更新してましたが、久々の小説更新です。
これは本当になんかふと降ってきて、そのまま形になってるのですが、なんか言葉にできない感覚を文で言葉のようにしようとするっていうのは非常に難しいです。ただでもそうやって言葉にできないからこそみなさんの創造の中でこんな表情だったのかなぁって思ってもらえればいいと思いました。言葉で表現してしまうと一つの表情になりますが(感じ方によっては違いますけど)言葉に表現できない表情というのはほんとにその人の数だけの表現を受け取ってもらえるのではないかなぁって気分になりまして。丸投げしてるわぇじゃなくてですね、言葉で表現しちゃいけないそういう固まったイメージとは少し違う、ふわふわしてるような感じを感じていただくための手法といたしました。まぁうまく伝えられてない感は100%ありますが、曖昧なことに意味があるんだと思ってもらえれば幸いです。こういうのは漫画で描いてしまったほうがよかったりもするのですが、そうともまた違うそんな感じ方を感じていただければ幸いです。あくまでこの小説のテーマは感じ方なので。レッドが感じたそんな疑問、グリーンが感じてるブルーからの愛、ブルーが感じてるグリーンからの愛、この物語から感じるみなさんのこの話の内容。そんな感じたことっていう曖昧な感覚の物語。
少しだけ文章表現も変えております。珍しい表現方法をしましたのですよ(笑)そんなことも感じてくれるとうれしいです。